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うみ




「わあー」
「わあー……」
「海だー!いえーい!」
「……ねえ?当也?当也、ねえ、とうや」
「朔太郎うるさい……暑い……焦げ死ぬ……」
「あんまり揺すってやるなよ」
「ねえ、聞いて。航介も聞いて。さくちゃん発見したの」
「なに」
「ていうか多分航介も同じこと考えてる」
「……んー……」
「なに?」
「有馬くんがあんなはしゃいでる手前すごく言いづらいんだけど、でもきっと当也もそう感じたはず」
「なんなの。前置きが長い」
「じゃあ簡潔に言うからね!なんでこんなことに気づかせたんだってがっかりしないでね!」「はいはい」
「ほら!航介!言ってやれ!」
「え?ほんとに同じことかどうか分かんねえじゃん、言っていいの」
「一回こっち通して!」
「えー……、……………」
「うん、そう、それ。言って」
「……海の色が茶色い……」
「……そ、れは、言っちゃダメなことでしょ」
「あの海にみんなイエーイしていくのに俺びっくりしてるんだよ……さっきまではちょっと距離があったから、水の色まで分かんなかったけど……」
「でもさっきまで朔太郎すごい楽しげだったじゃん」
「それは人混み大好きだから……」
「ああ……」
「当也びっくりしなかったの?」
「初めて来た時は、そりゃまあ」
「今はそうでもないってか!このシティーボーイが!」
「ちょ、うるさ、近くで大声出さないで」
「ごめん」
「でも別に、たくさん飲んだら腹壊すかもしれないけど、最後シャワー浴びるし、平気だろ」
「ちょっと!やめて!慰めて欲しいとは言ってないよ!海にはとても入りたいけど水の色が茶色いから驚いた旨を田舎出身たちと共有したかっただけ!」
「田舎出身って言ってて辛くならない?」
「つらい」
「そうだ、当也、早く浮き輪ふくらましてこいよ」
「いらないよ」
「いるでしょ!浮き輪が無かったら水の中で力尽きちゃうでしょ!」
「……泳げるのに……」
「朔太郎!海に入るぞ!」
「うえ、えっ、あの海……」
「弁当浮き輪ふくらかしに行くの?俺も行く」
「いってらっしゃい」
「航介も行こ」
「ええ……伏見と当也で足りるだろ……」
「やだ来て、迷子になっちゃうから来て」
「来なくてもいいよ」
「来るの!でないと田舎出身共が海が汚いって愚痴ってたって馬鹿二人にばらすよ!」
「行くよ!分かったよ!」
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