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この物語はフィクションです



「にゃーっはっはっは!俺様こそが障り猫にゃあ!御主人様の心の平穏を取り戻すため俺様は戦うのにゃ、」
「猫耳だあーっ!」
「ぎにゃああああ」

興奮した。
「もういやにゃ!人間ってやつは!にゃんにゃのにゃあ!」
「……もっかい……」
「お前死にたいのか!?」
がくがくする足を無理やり動かして這い寄る俺から逃げるように、猫耳尻尾付きの伏見が下がった。なんかさっき勢いで抱き潰しちゃったらすげえ体力持ってかれたけど、熱中症かなにかかもしれない。俺体調悪いみたいだから看病して、と擦り寄れば足蹴にされた。けど、伏見が自分でコスプレまがいのことして、しかもにゃんにゃん言ってくれるなんて、倒れてるわけにはいかない。なんか変な設定をごちゃごちゃつけてたけど、きっと恥ずかしいからだな。
「ちげーよばーか!てめーのそういうところに御主人様はストレスを感じているんだにゃあ!よーく分かった!」
「ごっ、ごしゅじんさま!?」
「ぴぎゃっ、目が血走ってて怖えんだよ!日和見主義~みてーな顔してとんでもねえ男だにゃあ!」
好きな人が深夜、自室の窓からパジャマ姿で侵入してきて、しかも頭には猫耳、後ろには尻尾で、にゃごにゃご言いながら妙にテンションが高かったら、それはもう夜這いと呼んでもよいのでは!?据え膳食わぬは男の恥とはよく言ったもので!?と詰め寄れば、ぎにゃあ、と悲鳴を上げた伏見にビンタされた。普段からよく殴られるけど、今回のビンタはいつもの5倍くらい痛い。吹っ飛んで壁に激突した俺を見て、ぶっ殺されたくなければ耳かっぽじって聞くにゃあ!と怯えたように叫んだ伏見が、気を取り直したように仁王立ちする。
「俺様は障り猫!御主人様の体に取り憑いた怪異だにゃ!」
「……かいい……」
「そうにゃ!御主人様はてめーに、そりゃもうとんでもにゃくストレスを感じている!どこがむかつくとか挙げ連ね始めたら夜が明けるレベルでにゃあ!」
「え……でも俺その度きっちり殴られてんですけど……」
「そんにゃのでは御主人様のストレスは解消されにゃかったにゃあ!」
伏見のストレスどんだけでかいの。俺かなり報復されてると思うんだけど。横たわったまま、仁王立ちで尻尾を逆立てている伏見を見ていたら、なんかまたどきどきしてきた。怒った顔もかわいい。抱きしめても差し支えないでしょうか。もそもそと姿勢を正して向き直ると、ばっと手でばってんを作られた。
「やめろ!」
「なんで」
「抱き締められてお前が弱れば御主人様もすっきりするんだろうけどにゃあ!お前、弱る代わりに幸せそうにゃ顔すんじゃねーよ!複雑だろうが!」
「え?伏見のこと抱き締めると俺弱るの?」
「そうにゃ!だからやめろ!死ぬぞ!」
「死んでもいい!」
「に″ゃあああ!やだああああ!」
ぎゅっとした途端、ばりばりばり、と凄い音がして、本気で死ぬかと思った。力の抜けた体ががくんと横たわって、ひーひー涙目になってる伏見が後ずさるのが見える。耳が垂れててかわいい。
「馬鹿にゃんじゃにゃいのか!?」
「やわらかい……」
「……恐ろしいのはこのやり取りで御主人様のストレスが薄くなってることにゃ……」
「えっ」
「朗報なことにゃ、てめーが幸せそうに弱り死にゆくのが御主人様は嬉しいらしいぞ……」
「……もっかいぎゅっとしていい?」
「……俺様の本懐は御主人様のストレスが消えることだからにゃあ、オッケーしたいところにゃんだがにゃあ……」
笑い方が気色悪いからダメにゃ、と再びばってんを作られたけれど、見なかったことにした。


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