ポチって男の子だよね？
「……そ、だけど」
じゃあこれ。通販で買ったんだ、まだ開けてないからあげるよ。
「な、なに」
ぽいっと投げ渡した箱を見て、器用にお腹で受け止めたポチは、かっと真っ赤になった。この前毛布を用意してあげた時に、またお漏らしでもして汚したら替えがないことに気づいて、もう一枚くらい寝床用に買っておこうと通販で探している、その間に思い出したのだ。ポチは男の子だし、しかも猫や犬みたいに去勢手術をしているわけでもない。もし外に出た時、女の子にマウンティングでもされたら飼い主として恥だ。欲は発散させる必要がある。睡眠欲も食欲も安心して発散できるようになったところで、後残るはこれだろう、と。自慰に使う筒状のホールが入っていることが明確に印刷されている箱を、ぴゃっと手から取り落としたポチは、ちがう、ちがう、と喚き始めた。何が違うの。
「ちが、べっ、つに、俺、違う、そういう、困ってない、困ってないから！」
いらないなら使わなければいいじゃない。使いたくなったら使いなよ。そう当たり前のことを当たり前に告げれば、ポチは真っ赤になったまましゅんと俯いてしまった。もしかして「使いたくなった」に心当たりがあったんだろうか。まあ、深く突っ込んで聞いたりしないけど。
「……で、でも、この部屋、全部、カメラ、いろんなとこにある……」
そうだよ。だってポチの成長記録を撮らないといけないから。ぽそぽそと小声で訴えながら一番目立つ位置にあるカメラの方を横目で見たポチにそう告げれば、ふるふると首を横に振って箱に背を向けてしまった。なんだ、残念。