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おはなし




「……………」
「めし!めし!」
「しっしっ、ふしっ」
増えた。嘘だろ。てめえになんか分けてやるわけねえだろカスとでも言いたいのか、マシュマロ抱えてもたもたと逃げるように移動してるふしみんの周りをちょこまかしてるちっちゃいのを摘み上げれば、何が楽しいのかけたけたと楽しそうだった。こいつは泣かないんだな、増えなさそうでなによりだ。
「……有馬は喋れるのか……」
「しゃべる!げんき!おれげんき!」
「語彙力ねえなあ」
「おっ、おっおっ」
落っことされると思ったのか変な声を上げ始めた有馬、ていうかこれ有馬でいいのかな、ありまみん?はるみん?後者は怒りそうだからとりあえず前者で、ありまみんをそっと机に下ろす。こいつの頭から生えてるのはつぼみだ、ふしみんはまだ葉っぱだから、花になったらぺらぺら喋れるのかもしれない。
ふしみんが手どころか顔まで粉まみれになりながら頬張ってるマシュマロをしばらくじいっと見て、めし!めし!とまた騒ぎ始めたので、飴の袋を開けてやる。こいつはなんでも食うからな、ふしみんは嫌いな物を渡すと噛み付いてくる上に食わないんだ。
「ふしみんは喋らなくていいの?お前ほんとは喋れるんじゃないの」
「……………」
「おい、そっぽ向くなよ」
「ふぎー」
ぐりぐりと頭を押さえれば、可愛くもなんともない声で唸っていた。粉まみれの顔を指で拭えば、もったいないとばかりに俺の指からぺろぺろと粉を舐めて、苦い顔をしていた。マシュマロの外側についてる粉は特に甘くもなんともないんだよ、残念だったな。
喋れる、といっても単語ばかりだけど、とにかくふしみんよりは意思疎通が簡単そうなありまみんに声をかけてみる。頭から飴に突っ込んで舐めてたせいでぺたぺたと引っ付いてる髪の毛を不思議そうな顔で引っ張っては手に張り付かせて愕然としているので、ちっちゃく千切ったティッシュを濡らして渡してやった。こいつ馬鹿だな、こんなとこまで似なくていいのに、可哀想に。まあ俺の夢だから仕方ないんだけどさ。
「ふしみんとお喋りしないの?」
「こわい!おこる!」
「そっか……怒られてんのか……」
「ほしい、おれたべる」
「ふしっ」
「あーこら、喧嘩するなよ」
「うわーん!いたい!けが!」
マシュマロがどうしても気になるのか、ふらふらと近寄ってふしみんに突き飛ばされているありまみんを持ち上げた。びゅんびゅん腕を振り回しながらお腹を見せられて、押されたから痛かったんだろうか。ふしみんに、痛かったんだってよ、と見せれば知らんぷりをされた。
「ふしみん、早く花咲くといいなあ」
「……ふしー」
「お菓子ばっか食べてるから葉っぱのままなんじゃねえの」
「はないる!しってる!」
「やっぱり花もいるんだ、どんなやつ?」
「はな、おれなかよし」
「仲良しなんだ。ねえ、今度連れてきてよ」
ふしみんもお友達が増えるなあ、と笑って指を差し出せば、むごむごと噛みつかれた。嬉しいんだな、良かったじゃないか。

「うわ、小野寺笑いながら寝てるんだけど」
「なに、怖」
「夢でも見てんじゃないの」
「そっか……疲れてんだな……」
「なんで俺の方見んだよ、文句あんのか」

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