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おはなし



「あ、買い物」
「なに?」
「ゴム」
久しぶりに会って飯食って、さあ帰るべってなったところで西前が足を止めた。コンビニにあるかな、と方向転換するので、マツキヨのが種類あるんじゃねえの、と声をかければその場で一周回ってついてきた。悪かったよ、声かけるタイミング読めなくて。実習かなんかで使うんだろうか、うちにも腐る程あるしな、と思う。ヘアゴムとピンがなかったらどう足掻いても髪の毛弄れないし、必要経費にしたって細々と雑費で金かかるんだな。
ぶらぶらとしばらく歩けば、見慣れた黄色い看板を発見した。マツキヨとかドンキとかは何であんなに派手で目立つ看板をつけようと思ったんだろうか、分かりやすいからいいけど。ぼけーっとしてる西前が少し前を歩いて行くので、そっちは髪の毛関係のものが置いてあるところじゃないんじゃないかと思って止めた。
「どこまで行くんだよ」
「どこって」
「黒いのだろ?あっちじゃねえのかよ」
「黒いのなんてあんの?」
「は?」
「あ?」
「ゴム買いに来たんだよな?」
「……ああ」
どうも話が噛み合わねえな、と相手を見れば、同じく不審そうな顔で固まっていた西前がぐるりと棚を回って戻ってきた。こっちですけど、と見せられた手の上に乗ってたのは小さな箱で。あ、そっち。ゴムって、ヘアゴムじゃなくて、コンドーム。
「……これ俺がいる時にわざわざ買う必要あるか?」
「だって忘れるし」
「なんだって俺はお前がそんなん持ってるとこ見なきゃなんねんだよ」
「持ってないより持ってる方が誠実に見える」
「そういう話じゃない」
「六島も買う?」
「使う予定もねえのにかよ、ご立派だな」
「ははは」
「てめえ!何笑ってんだ殴るぞ!」

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