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おしゃべりまとめ



*ありま・さくちゃん・おべんと
「幸せなら手を叩こうってあるじゃん」
「うん」
「なんで手なの?」
「……二番は足でしょ」
「そうかもしんないけど、まず手叩くじゃん。なんで?」
「知らないけど」
「弁当でも知らないのか……」
「他の人に聞いてみたら」
「うーん、あっ、朔太郎」
「なあに」
「幸せなら手を叩くのはなんで?」
「んー、元々手を二回叩くことは神社へのお参りで使われていたんだけど」
「おお」
「二礼二拍手一礼ってあるでしょ?あの拍手の数から、二つ手を叩くことは神様へのお願い事をする時に使う特別な手の打ち方として古くから伝わってきたんだ」
「なるほど」
「幸せになるために神社で二つ手を叩いてお願い事をする、はずだったのがいつの間にか幸せなら手を二つ叩くことになったんだね。ちなみに元々あの歌は外国の歌だったんだ、歌詞を直接訳すことが難しくて出来ずに意味が転じた部分もたくさんあると言われているよ」
「へえー!」
「……………」
「なに当也、その顔」
「……朔太郎が無駄に饒舌な時は大概怪しいから……」
「えっ」
「いやだなあ、心外だなあ」
「どこまで本当の話なの」
「どこまでもなにも、全部今考えた話だけど」
「お前!」
「いたい!有馬くん痛いよ!頭を押さえつけないで!俺、君たちより背が小さいんだから!」
「……元々は外国の歌ってとこは合ってたと思うよ」
「よし……ならちょっとだけ許す……」
「あいたた、頭へこんじゃったよ」
「いい加減に適当ぶっこいて生きるのやめなよ」
「それは難しい話だね」



*てつた(23)・みり(20)
「お兄ちゃんはどうして彼女と長続きしないのか朝まで大討論大会ー!」
「たいかあい」
「かんぱーい!」
「かんぱあい」
「美里ちゃん」
「なあに?」
「……お兄ちゃんってかっこ悪い?」
「かっこ悪くなんかないよお!てつくん、お勉強できるし、真面目だし、かっこいいよお!」
「そうかな……なんか最近誰かとお付き合いする度にカップルでいられる期間が短くなっていく気がするんだ……」
「そーいう子はあ、んーと、見る目がないんだよ、女の子って移り気だからねっ」
「若くてかわいい美里ちゃんにそう言われるとそんな気がしてきた……」
「てつくん、自信持って!美里はてつくんのこと、かっこよくて大好きなお兄ちゃんだと思ってるんだからあ!」
「うっう、美里ちゃん」
「よしよしぃ」
「巧くんとか律貴くんは、女運がないせいだって言うんだけど」
「だめっ、りっちゃんは嘘つきだよお!お勉強がんばってる美里のことお馬鹿の落ちこぼれって言うんだからあ!」
「ひどい!律貴くんそんなこと言うの!?」
「だからりっちゃんの言うことなんか信じちゃだめぇ」
「律貴くんにはお兄ちゃんがきちんとお話ししてあげるからね」
「怒って!いっぱい!」
「かわいい妹にお馬鹿の落ちこぼれなんて言っちゃだめだ」
「そーだそーだ!」
「……こないだ振られた彼女に、ブラコンが過ぎるって怒られたんだけど、こういうところかな?」
「ぶらこんってなあに?」
「兄弟大好きみたいな……」
「ぶらじゃー?」
「ブラザー」
「それそれえ」
「これがだめなのかな?もしかしたら」
「だめじゃないよお、てつくんが美里のこと大事みたいに、美里もまもちゃんのこと大事だもん」
「美里ちゃんだけが大事なわけじゃないよ、真守くんのことも律貴くんのこともみんな大事なんだけど」
「んー、でもお、美里は、家族のこと大好きな人のお嫁さんになりたあい」
「だよね!そうだよね!普通そうだよね!」
「うんー」
「お兄ちゃん自信湧いてきた!」
「がんばれえ、次こそきっとちゅーさせてくれるよお」
「ちゅーまでならしたこと全然あるけどありがとー!」



*きょうや(22)・かずなり(21)
「先輩って」
「なんだ」
「……先輩って映画好きなんですよね?」
「……好きだ」
「ホラーは駄目なんですね」
「駄目じゃない。現に今見てる」
「やっちゃんが見たがってたから二人で見ようと思ったけど初見一人ぼっちは無理だから一緒に見てくれって泣きついてきたじゃないすか」
「そんなことは言ってない」
「言ってました」
「……お前がこういうの好きだろうと思って持ってきてやったんだ、俺の趣味じゃない」
「……今日の夕方、もうすぐ、美和子ちゃん来るんすけど……」
「それまでには終わる」
「最後までここで観るつもりなんですか」
「最後まで観なかったら作り手側に失礼だ」
「俺ホラー割と好きです」
「……どこが面白いんだ?」
「えー……なんか……あっ、今みたいな、ぎゃって脅かしにくるとことか」
「……………」
「先輩?」
「……………」
「先輩、やっちゃんきっと今の所喜びますよ」
「……知っている……」
「がんばってください」
「なにをがんばるんだ、俺は別に、苦手なんかじゃないし、映画と名のつくもので食わず嫌いは絶対にしたくない」
「……膝が震えてなかったらかっこいいです」
「うるさい」
「先輩のこと俺すごく尊敬してるんですけど、今はちょっと勝ってるなって思います」
「人間は勝ち負けじゃない、自己が感じる幸福度の高い方が」
「あっ死んだ」
「……………」
「先輩、目を隠さないでください、やっちゃんだったら歓喜でスタンディングオベーションしてるシーンですよ」
「……分かってる……分かってる……」


*ふしみ・ありま
「こないだ映画見たんだけど」
「どうせハッピーエンドのヒーローものだろ」
「違う!ヒーロー出てこなかった!」
「変身は何回したんだ?」
「してない!あ、いや、したかな……」
「今さら聞いて申し訳ないんだけど、戦隊ヒーローと仮面ライダーだったらどっちの方が好きなの?」
「それじゃない!そっちじゃない!」
「アベンジャーズの中の誰かしらが出てくる感じのやつでしょ」
「違う!アニメ!」
「プリキュアかな」
「伏見俺のことなんだと思ってんの!?」
「有馬はるか、5歳」
「ごさい……」
「俺子ども嫌いなんだよ」
「なんで今そういうこと言うの」
「映画のオススメなら俺聞かないけど。航介以外」
「オススメしたいわけじゃなくって」
「じゃあなんで映画の話なんかするの。あらすじの紹介なら小野寺にやって」
「ちょっと話したいだけですぐそういうこと言う!お前やなやつだぞ!」
「……………」
「に、睨みつけんなよ……怖えな……」
「……あれでしょ。入れ替わるやつでしょ。隕石がどうたらとかいうやつでしょ」
「お、なんだ、知ってんじゃん。うん、そう」
「弁当から聞いた」
「俺泣いちゃったよー」
「ちょっと入れ替わったぐらいで赤の他人の運命を変えようとする程の熱意が俺には共感しかねるから見たところで全く面白くもなんともないんだろうなって思うし、どちらかというと今アメリカでやってる盲目の殺人鬼が若者を殺しまくるやつを見たい」
「えっ、え?早くていっぱいでちょっとわかんなかった」
「だからお前と話すの嫌なの」
「ええ!?なんで!?」
「九九全部言えたら話聞いてやるよ」
「そんくらい言えるわ!馬鹿にしてんのか!」
「おやすみ」
「聞いてろよ!今から言うからな!」



*やちよ・みわこ・さちえ
「息子が一人暮らしを始めてから日々が灰色になりました」
「これ美味いな」
「まだあるんでもっと食べてくださいね」
「さちえが作ったの?器用だね」
「そんなことないです」
「聞いてよお!」
「……もうその話5回目なんだよ」
「当也くん元気にしてますか?」
「……元気だと思う……電話とかかかってこないけど……」
「電話なんかする子じゃないだろ」
「うるさーい!みーちゃんの馬鹿!こーちゃんが家にいるからって!」
「声がでかい」
「さびしい……」
「ぬるくなるだろ、さちえが持ってきてくれたゼリー早く食べなよ」
「……さちえちゃんありがとう……」
「あっ、まだあるので、食べてくださいね!」
「聞いて」
「はい」
「とーちゃんが東京に行っちゃってからね、さびしいの」
「こないだっからそればっか」
「こーちゃんだっていつかは家を出て行くんだからね!みーちゃんもきっとさびしくなるんだからね!」
「どっちかと言うと早く出てってほしいわ」
「そうなんですか」
「和也が一人暮らし始めてからいろいろあったから、手放しに出て行けとは言わないけどさ」
「朔太郎も最近よく家を出て行く話をします、当也くんのことがきっかけで考えてるみたいなんですけど」
「そ、そうなの?とーちゃんそんなに影響力あるの?」
「気になるでしょうよ」
「朔太郎はお手紙書いてるみたいです」
「航介はなんにもしてない」
「なんでさくちゃんとだけやり取りしてお母さんには電話もくれないのかしら……」
「お前がうるさいからじゃないの」
「ぎぎぎ」
「朔太郎と航介くんも、きっといろいろ考えてるんでしょうね」
「とーちゃんに会いたい……ご飯ちゃんと食べてるのかしら……」
「でもこうはなりたくない」
「みーちゃんはならないと思います……」



*おべんと・ふしみ
「階段に最近貼ってある、ここまで登ったら消費カロリーいくつ、とかいうやつ」
「うん」
「あれってほんとなのかな」
「……ほんとなんじゃない?」
「消費したカロリーと同数のカロリーを摂取してもいいってこと?」
「それは……まあ、そうだけど、消費するためにああいうこと書いてあるんじゃないの」
「こちら、フローズンカフェラテ、Mサイズ」
「はい」
「258カロリー」
「はい」
「今日伏見くんはエスカレーターではなく階段を使いました」
「はい」
「計算上は、250カロリーを消費したことになります」
「はい」
「カフェラテ消費された?」
「多分されていない」
「ッチ」
「いたっ、しょうがないじゃん」
「弁当のばか」
「階段に書いてあるからってほんとに飲んだ分が消えて無くなるわけじゃないんだよ」
「ふん」
「それドトール?」
「うん」
「スタバの飲み物がカロリーすごいんでしょ」
「……弁当スタバ好きじゃん」
「うん。おいしい」
「なんでそんな骨みたいなの?死ぬよ」
「し……死なないよ」
「フローズンカフェラテ飲む?」
「いらない」
「じゃあドーナツ食べな」
「なんで。毒?」
「いいから」
「伏見この上に乗ってるやつが嫌いなだけなんじゃ」
「ドーナツあげるから。そして弁当は今日階段を一切使わないでね」
「使うよ」
「これ以上カロリー消費したら骸骨になっちゃうでしょ!」
「伏見なんか今日うるさいんだけど」
「うるさくないですー」
「熱ある?」
「ないですー」



*こーちゃん・おのでら・ありま
「なにそれ」
「クラスTシャツ!パジャマ!」
「三年二組だったの?」
「なんでわかんの?」
「えっ、32って書いてあるから……」
「あとねえ、背中になんか書いてあるでしょ」
「……天は二物を与えず……?」
「俺どういう意味かわかんないんだよ、航介分かる?」
「そのまんまだろ、神様は一人に二つも長所を与えませんよ、っていう……」
「なんで俺そんなん名付けられてんの?」
「……馬鹿だからじゃないか?」
「……航介に改めて馬鹿扱いされんのすごい心に来る……」
「ごめん」
「神様はきっと有馬のこと、運動が出来るようにする代わりに、頭を悪くしたんだよ」
「そっかあ」
「……………」
「航介どうしたの」
「……顔……」
「ん?」
「……なんでもない……」
「俺は?」
「小野寺は、背が高くて筋肉があるから、馬鹿なんじゃないか?」
「そっかあ」
「……顔だと思うんだけどな……」
「なに?」
「なんでもない」



*さくちゃん・たきがわ
「こないだ都築と二人で飲んだのよ」
「瀧川が?なんで?」
「なんでって……友達だからだよ……」
「ともだち?」
「やめろ!そこから疑問を感じるのは!」
「はい」
「そしたら、あいつ、すげー酔っ払って」
「珍しいじゃん。都築ザルなのに」
「なんかあったっぽくてさあ。愚痴愚痴言ってんの、泣きそうになりながら」
「……尚更珍しい」
「俺可哀想で、聞いてやったんだけど」
「うん」
「そしたらなんかヒートアップしちゃって、いつの間にかすげー切れながら愚痴り始めたの」
「開催場所は?」
「都築家一階カウンター」
「ほう」
「深夜三時よ。落ち着けっつっても落ち着かないから、俺も焦ったよね」
「どんな愚痴?」
「よく分かんない。でも、なんか、なんていうか、都築にしてはものすごく汚い言葉を吐き散らかしていた」
「汚い言葉」
「相当やなことあったんだろうなーって思ったんだけどさ、あんまりにギャップがあるから、俺途中から、あれ?ヒステリックなメンヘラ女の幽霊が取り憑いているのでは?って思ったよね」
「例えば?」
「んー、あの■■■■が!とか」
「お、おう」
「腐れ■■■!とか、死ね■■■■!とか」
「やめてえ!もうやめて!」
「あと」
「やめろ!」
「ぶべっ」
「……都築だって疲れてたんだよ」
「そうだよなあ、あいつ休みあんまないしな」
「温泉とか連れてってやりたいね」
「ゆっくりしたら■■■とか言わなくなるだろうか」
「だからその■■■っていうのやめて」
「なんで?」
「なんか……都築の口からそういうこと出たって……リアルでやだ……」
「ご、ごめん……」



*さくちゃん・たきがわ
「都築酔っ払ってくるとチューしてくるよね」「あっ!?なんだよ!あれ癖なの!?俺にだけかと思った!」
「なんでそこまで思い上がったのか不思議」
「俺こないだめっちゃチューしちゃったよ」
「俺もされたことあるし」
「なんだよー、くそー、舞い上がっちゃったじゃんかよー」
「航介は死に物狂いで避けてたけど」
「ああ……」
「でも都築嫌がられると燃えるタイプじゃん」
「そん時航介捕まったの?」
「うん。炬燵の下に連れ込まれてた」
「助けてやれよ」
「一つの経験かなと思って」
「航介は酔っ払うと踊るよな」
「踊って歌って脱いで寝るねえ」
「お前の酔っ払ったとこ俺見たことないんだけど」
「だってさくちゃんまともに酔っ払ったことないもの」
「今度都築ん家の酒全部飲み干してみてよ」
「死ねと?」
「こないだ先輩のおっさんと都築んとこ飲みに行った時にさ、キープのボトルがあったのさ」
「うん」
「……大人だな……って思ったよね……」
「すればいいじゃん。キープ」
「やだよ!かっこつけだと思われる!」
「俺と航介は都築の御好意で好きな酒のボトルキープしてもらってるよ」
「はあ!?なんでお前らだけ!?」
「瀧川はカクテルが好きだからボトルはいらないよねって言ってた」
「好きじゃねえんだわー!あいつほんと俺のこと全く理解しようとしない!甘ったるい酒は!嫌い!」
「都築にそうやって教えなよ」
「教えてんだよ!散々!」
「お酒飲みたくなってきた」
「まだ昼だけど」
「都築ん家行こうよ、そんでカクテル作ってもらいなよ」
「だから!」



*ありま・おべんと
「もしも願い事がひとつ叶うとしたら、どうしますか」
「……ん?」
「ここに書いてある」
「キャッチコピーだよ」
「そういうことじゃなくて」
「うん」
「願い事。弁当だったらどうする?」
「……うーん……」
「俺は、伏見に借りたシャーペンを直す。壊れていなかったことにする」
「壊したの」
「違う、弁当、あのな、壊そうとして壊したわけじゃなくて、芯を入れ替えようとしたら壊れたんだよ」
「壊したんでしょ」
「壊しました」
「俺は、そうだなあ」
「卵を安く買うとかは駄目」
「なんで」
「そういうんじゃない」
「有馬は伏見のシャーペンだったのに」
「いや……もっとなんか、切ない系がいい」
「はあ」
「生き別れの兄に会うとか」
「兄いないし……」
「そういうやつだよ!ほら!」
「……うちの家の裏に、神社があるんだけど」
「うん」
「小さい神社で、ぼろぼろなんだ。でも、俺と航介の小さい頃の遊び場って言ったら、そこだった」
「うん」
「そこで、一回、小学生くらいの時かな。女の子に会ったんだ。その辺じゃ見ない顔だったから、きっと親戚の家に遊びに来てたとかだと思うんだけど」
「うん。わくわくしてきた」
「その子とはその日だけしか遊べなくて、しかもその日、航介もいなくてさ。女の子がいたんだって言っても誰も信じてくれなかった。親なんか、神様に会ったのかもねとか言って、ほんとに女の子がいたのに」
「うん、それで」
「その女の子ともう一回会いたいとは思うかもしれない、っていう根も葉もない作り話を有馬に心から信じてもらいたい」
「願い叶ったな!?良かったな!?」
「うん。良かった」
「俺ちょっと泣きそうになったのに!」
「女の子と会ったことはあるよ。でも、遊んでくれたお礼にってその辺一帯の家みんなに聞いても、その日に遊びに来た女の子なんかいなかったんだ」
「……えっ?どういうこと?」
「あと、俺が女の子と遊んでる間に航介もお父さんと神社に来たけど、俺はいなかったって」
「待って弁当、雲行き怪しいよ」
「神隠しってこういうことなんだなって思ってるんだけど」
「嘘だろ!?ねえ!それも作り話だよな!?こっち向け眼鏡!不安を残したまま話を終わりにすんなよ!」



*おのでら・ふしみ
「今日くらい素直になったらどうなの」
「いつも素直ですー」
「意地っ張り……」
「ふん。有名店だから、捨てらんないのが、腹立つよな、クソ」
「もっと綺麗に食べなよ」
「あーうまいうまい」
「ケーキがあったってことは、伏見の誕生日をお祝いしようってお父さんとお母さんも思ってくれてたってことでしょ」
「はん。今更、ちっちゃいホールケーキでご機嫌取りしようって魂胆が、気に入らねんだよ」
「ありがとうってちゃんと言うんだよ」
「どうせ会わないし。言えないし」
「伏見」
「小野寺のお母さんが作ってくれたケーキの方が美味しかったもん」
「こら」
「あいた」
「どうしてそうへそ曲がりなの」
「……お前がいなかったら、俺、一人でこのケーキ食ってたんだぞ。誕生日に、寒いリビングで、一人ぼっちで。そんなんならいっそケーキもお祝いもない方がいいだろ」
「でも、」
「高校入ってお前が家に呼んでくれるようになるまで、九年間、そういう誕生日だったんだから、ケーキに八つ当たりするくらい、いいじゃん」
「……うん……」
「もうお腹いっぱい。いらない」
「……来年は、家族でお祝いできたらいいね」
「来年はお前とディズニー行くから無理」
「はあ!?」
「今決めた。お泊まりしてランドもシーも行くから無理」
「ちょっと!」
「だから誕生日って嫌いなんだよなー」



*さくちゃん・こーちゃん
「……なにか……」
「あ?」
「いや、なんかおかしい気がして……」
「なにが」
「航介の、なんか……なんだろう、違和感があるんだよ……」
「なんだよ」
「なにがおかしいのか分かんない。なんか変えた?爪切った?」
「爪くらいで違和感覚えんのかよ……」
「なんかちょっとだけ変なんだよ、なんだろうなー、もやもやする」
「髪も切ってねえぞ」
「染め直した?」
「ううん」
「睫毛伸びた?」
「それは自分じゃ分かんねえけど」
「うーん、んー、うん、分からん」
「そうか」
「ちょっと考えさせて」
「どうぞ」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……シャンプー変えた?」
「は、えっ?いや、さあ……?」
「ちょっと失礼」
「なに、ぎゃっ、嗅ぐな!」
「げぶっ、おええ……お腹はだめ……」
「悪い」
「でも花みたいな匂いがする。シャンプーかリンスが変わった」
「……お前よく気づいたな……自分じゃ分かんねえよ」
「鼻はいいんだ」
「変な匂い?」
「ううん。よく似合ってる」
「……複雑なんだけど」
「花水木の匂いがする」
「嗅ぐなっつってんだろ!」



*ただよしくん・こーちゃん
「秋刀魚を焼いて食べる時にさ」
「うん」
「頭から骨を引っこ抜くの、気持ちいいだろ」
「うん。全部抜けると嬉しいよね」
「伏見に言ったら、なにそれ、気持ち悪い、って……」
「……伏見くんやったことないんじゃない?」
「下手したら頭付きの秋刀魚食ったことすらないかもしれない」
「うわあ……めっちゃあり得る……」
「当也ですらやったことあるんだぞ」
「元々ここの人だからだよ」
「……そうだった」
「忘れないであげて」
「伏見あいつ、貝の食べ方もまともに知らなかったんだぞ」
「殻とって、って言ったらしいね」
「……不安だ……」
「親か」
「……あれが社会に出て一人で生きていけると思うか?俺には思えない、無理だと思う」
「お姫様だもんねえ」
「……ヒモになりそう」
「そんなに心配なら航介が面倒見てやんなよ」
「無理」
「なんでさ」
「あれにこき使われて毎日過ごしてたら干からびて死ぬ」
「……伏見くん聞いたら怒りそー」
「俺は小野寺にはなれない、無理だ」
「魚の捌き方くらい教えてやってもバチは当たらないんじゃない?」
「……んー」



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