☆入園前
「海ちゃん、きっと君はとてもはしゃぐ」
「はしゃぐ！」
「すぐに走り出してどこかへ行く」
「いく！」
「さくちゃんとこーちゃんはそれを追っかけられない」
「おっかけられない！」
「君は迷子になる」
「まいご！……えっ！？まいご！？うみまいごになる！？」
「きっとなる」
「やだああああ」
「迷子が嫌なら、絶対にさくちゃんかこーちゃんの手を離さないこと」
「うええええこーちゃああああ」
「……まあこの人混みじゃ、迷子になったら終わりだな」
「夢の国初心者の俺たちには土地勘もないから迷子センターも分からない、よって海ちゃんとは永遠のさよならだ」
「ぎゃああああああ」
「……ここまで泣かさなくても……」
「だから、手を離しちゃいけないよ」
「ゔん、っひぐ、ぅんっ、こーちゃっ、ぉ、おでで、はなざないで」
「……………」
「なにその顔」
「俺と手を繋いでる海より、お前を見失う未来が見えた気がして……」
「俺？あっはっは、そんなわけないじゃん！大人だよ？迷子になんかならないよお」
「あんまりフラグ立てないほうがいいぞ……」

☆ワールドバザール
「あー、ふーせん」
「ほんとだ」
「あー！おみみ！うみ、おみみほしい！」
「……良い目印にはなるかもな」
「このでかい帽子なんかどう？」
「かっこいー！」
「でかすぎないか？」
「海ちびだから。ほら、ミッキーとお揃い、かっこいいねー、海」
「うん！あう」
「ずり下がってる……」
「うみ、かっこいい？」
「かっこいいかっこいい」
「ひゅーう！こーちゃんも、おみみつけよ！はい！」
「ええ……」
「かわいいよ、ぷぷーっ」
「うみしってる、りぼんついてるの、みにーちゃんってゆーんだよ」
「……海、こーちゃんは男の子だから、ミニーちゃんは嫌だ」
「そっかー！じゃー、こっちにしよ！」
「……………」
「ぷっぷー！ぷーさっ、ぶふぅっ、こっ、航介がプーさんっ、ぷ、ひーっひっひっ」
「さくちゃんたのしそお」
「……海、これ、似合ってるか」
「うん！こーちゃん、きいろぴったり！」
「そっか……」
「さくちゃんにはー、これがいいかな！」
「ふひーっ、あ？なに、うみ」
「まいくわぞうすき！さくちゃんにてる！」
「……似てる？」
「……目の丸さは似てるな……」
「……海ちゃん、さくちゃんもおみみがいい。さくちゃんだけモンスターを頭に乗せてる人になっちゃう」
「やだの！さくちゃんはまいくわぞうすきなのっ、うみきめたの！」
「……………」
「いいんじゃないか、似た者っ、ふ、同士で」
「航介笑ってない？」
「笑ってない」

☆スティッチ
「うみ、すちっち、まねできる」
「すてぃっち」
「すてっち」
「すてぃっち」
「すちっち」
「……なんかずっと惜しいな……」
「みて。ぎー」
「そっくりだ」
「あとね、あろーはー、ってする」
「そういえば運動会で踊ったっけ」
「うみおどれるよ！いーらいら！ともだち！みんなーでおっはーな！」
「海、歌いながら踊るのは家でだけにしよう」
「あろーはえおこーまい！うん！」
「全然うんじゃない……」

☆もうすぐパレード
「人がすごいいっぱい待ってる」
「パレードだって。海、ミッキー見るか」
「みるー」
「どの辺なら入れそうかな……」
「うみー、みっきと、みにーと、あとぷるーとと、どなうどと、おともだちなる」
「後で写真撮りに行こうか」
「うん！あとねー、まいくわぞーすきと、うーっていうみどりのやつ」
「うーって言う緑のやつ……？」
「こうやって、うーって、おめめがたくさんあるんだよ」
「ああ、なんだっけ……朔太郎、あの、トイストーリーの……あ？」
「さくちゃんは？」
「……どこ行った？」
「いなーい」
「海、お手手繋いでなかったのか」
「こーちゃんとつないでた」
「反対は？」
「はんたいおてて、からっぽしてたー」
「……ほら見ろ……」

☆場所取り
「置いてかないでよ！迷子になったわ！」
「あー、さくちゃんきた」
「……勝手にいなくなったんだろ」
「あそこが空いてるよ！って振り向いたら二人がいなかったんだよ！全身冷や汗だらけになった！」
「あと１５分で始まるって」
「さくちゃーん、ぎゅー」
「海ちゃん！もう二度と会えないかと！」
「だからちゃんと連絡しただろ、ここにいるって」
「それは本当にありがとう……」
「さくちゃん、ここ、びしょぬれぞーんだって」
「びしょ……なに？」
「ここはすごく濡れるらしい」
「濡れる？なんで？」
「みずでっぽーだって！」
「バズーカで撃たれるって」
「は？え、なに？全然ついてけないんだけど」

☆パレード
「本当にびしょびしょになった……」
「雨みたいだったな」
「わっしょいわっしょい！」
「カッパ着てる人もいたね」
「この暑さならすぐ乾くだろうけど」
「わっしょいわっしょい！」
「着替える？海風邪引かないかな」
「平気だろ」
「わっしょいわっしょい！」
「……こんなに元気だし」
「ずっとわっしょいしてる……」

☆ジェットコースター
「海、ジェットコースター乗れる？」
「じぇっことーすたー」
「乗ったことないよね」
「こーちゃ、ぜっとそーすたーってなに」
「ジェットコースター。すごい早くて、上に行ったり下に行ったり、落ちたり回ったりする」
「さくちゃんのたかいたかいを百倍早くした感じ」
「……うみないちゃう」
「泣くだろうな」
「それはそうだと思う」
「くびがとれちゃうもんね」
「首は取れないけど……」
「泣いちゃうけど乗る？やめとく？」
「のるー」
「乗るんかい」
「さくちゃんもないちゃうよ」
「さくちゃんは泣かないよ！平気だよ！」
「こーちゃんはつよいからへいき」
「うん」
「なにその扱いの差！さくちゃんだって平気だよ！」

「子ども用のやつだから、海と同じぐらいの子がたくさん乗ってるよ」
「ないてる？」
「泣いてないね」
「ほんとだー」
「乗ってみようか」
「うん！うみとこーちゃん、つよい！」
「さくちゃんは？」

「ひっ……ひっ……ぅぐ、……っひ……」
「まさか降りる時に転んで泣くとは思わなかった」
「ジェットコースター自体は完璧に楽しんでたのにな……」
「おひざがとれた……」
「ついてるついてる」

☆小さな世界
「うみ、このうたしってるー」
「そうか」
「せーかいーは、し、ぶ、いー」
「……嫌な世界だね」
「海、広いだ」
「せーかいーは、か、る、いー」
「上っ面だけの世界だったんだね」
「……丸いだ、海」
「えー？ひろい？まるい？」
「そう」
「面白いからそのままでもいいのに」
「面白すぎるからこのままじゃダメだろ……」
「ただふー、たー、つー」
「二つある。パラレルワールドかな」

☆チュロス
「あぐ」
「おいしいね」
「うん」
「ふおー」
「あー、あーあー、海、トッピング的なもの全部服に溢れてるよ」
「ふぁぇおろろぁう」
「なんて？」
「口の周りもすごいな……」
「ほっはひ」
「ごっくんしてから喋って」
「んむ」
「……………」
「……………」
「……………」
「……海ちゃんが静かだとつまんないな」
「海はお前のおもちゃじゃないぞ……」

「ぷふー、おなかいっぱい」
「海には長かったかな」
「うみ、おなかちいさいから」
「そうか？」
「そう。ちゅりょ、ちゅ、ちゅろしゅ、す、おおきかった」
「口にたくさんお砂糖ついてるよ」
「んんー、ん！」
「なんだ」
「ぽっぷこーん！ねえっ、ぽっぷこーん！おいしいですってかいてある！たべる！」
「お腹いっぱいなんじゃなかったの？」
「ぺこぺこ！」
「お腹小さいんじゃなかったの？」
「ぺっこぺこなの！さくちゃん！ぽっぷこーんたべたいよね！ねっ！」
「そりゃあれば食べるけどさ……」
「みっきーがくっついてる！かーっこいー！」
「だってさ、航介」
「……絶対食べきらないだろ……」
「入れ物に入ってるから、あとで続き食べればいいんじゃない？」
「何味？」
「えーと、ハニーだって。甘い匂いするし」
「……しょっぱい系がよかった」
「俺も」
「うみはあれがいーの！あ″ー！」
「泣き真似するな」

「おなかいっぱい」
「五粒しか食べなかった……」
「甘いポップコーンかあ……」

☆並んでる間
「ぐう」
「海寝ちゃったし」
「代わるか？」
「ううん。まだ平気、抱っこしとく」
「後で代わる」
「起きちゃいそうじゃない？」
「起きたら起きたでいいんじゃないか」
「そ、おっと」
「あぶね」
「帽子落ちちゃった。ありがと」
「おー」
「なかなか進まないねえ」
「そんなもんだろ。一時間待ちって書いてあったし」
「進み出すと早いのに、止まってる間が長く感じるのはなんでだろうね？」
「知らん」
「釣れてる時は楽しいみたいなもん？」
「そうじゃないか」
「航介めんどくさくなってる」
「……あ、前進んだ」
「ほんとだ。あ、そうだ。おみやげいつ買おっか？」
「帰る前……は、混むのか」
「みんな同じこと考えそうじゃない？」
「早く買ったら邪魔だろ？」
「そうだけど。だから、どうしようかなーって思ってて」
「うーん……」
「まあいっか。適当で」
「……Ｔシャツは買わないからな」
「え？ちょっと……ちょっと何言ってるか分かんなかった」
「Ｔシャツは買わない」
「……分かんなかった」
「耳壊れてんのか」
「壊れてない。お揃いをする」
「しねーよ！」
「買う。もうこれがいいってやつを調べてあるから」
「買わないっつってんだろ！」
「三人でお揃いをする」
「嫌だ」
「大丈夫。ゴリラでもミッキーパワーでやさゴリラになれる」
「やさゴリラってなんだ。おい、顔を背けるな」
「優しいゴリラの略だよ」
「あ！？」
「やさゴリラ……ふふ……」
「何笑ってんだ」

☆ハニーハント
「あー！やめてー！うみのっ、うみ、うみすわれてる！ずおーとひーたちに！」
「意地悪されてるよ、海」
「も、っもう、おこったからね！そういう、いじわるむしにはっ、おにがくるんだからね！」
「ガチおこじゃん」
「おにがおしりをたたきにっ、ぶわー！」
「うわ」
「……すげえ甘い匂い……」
「蜂蜜大砲だ」
「くそー！やりやがったなー！ゆるさない！」
「海めっちゃ怒ってる」
「おにをよぶからね！ほいくえんで！ぷーさんとうみにわるいことしたっ、ずおーとひーたちのとこには、おにがいくからね！」
「うける」
「このポットだけ異様にうるさくないか？」
「あそこのポットも子どもめっちゃキレてるから大丈夫だよ」
「おぼえとけよー！」
「あ、海。あそこにプーさん」
「え？あー、ほんとだー、プーさんかわいー」
「……秒で落ち着くなよ……」
「逆に不安になるよね」

☆フィルハーマジック
「……………」
「……………」
「……………」

「海すごい静かだったじゃん。えらいね」
「……こわかった……」
「え！？あ！涙の跡がある！」
「そういうことは言っていいんだぞ」
「……あかちゃんないてた、うみあかちゃんよりつよいから……」
「どこが怖かったんだ」
「……ほうきおばけ……」
「ああ……」
「楽しかったとこは？」
「……どなうどがとんでったとこ……」
「最後の最後じゃん」
「気づかなくてごめんな……」

☆エレクトリカルパレード
「なんかみんな並んでる」
「夜のパレードじゃない？ぴかぴかのやつ」
「待たないと見れないのかな」
「人がたくさんだからねえ」
「海。どうする」
「うみ、みたーい」
「じゃあ待とう」
「おなかすいた」
「いい匂いするしねえ。食べられるもの探してこようか」
「どっちが行く？」
「俺待ってるよ。さっき迷ったし」
「うみ、こーちゃんといくー」
「しっかり戻ってくるんだぞー」

「もおすぐ？」
「もうすぐだって」
「はやくー」
「ポップコーン食べて待ってな」
「もーいらなーい」
「あ、ほら、音楽変わった」
「みえなーい！」
「抱っこしてやるから」
「あー！ぴかぴかのやつきたー！」
「ほんとだ」
「……おー……絶妙に見えない……」
「は」
「今３センチの差を笑ったでしょ！」

☆バス
「ぐう」
「……は」
「あ。起きた」
「……ついた……？」
「ついてない」
「……………」
「あ、寝た……海と同じ顔で寝ている……」
「ふがっ」
「あっ」
「ぅ、ぅぐぅ……」
「うみー。うみちゃーん、ねぼけてるぞー」
「はぶ……さくにゃ……」
「はい」
「……………」
「……え、えっ、寝た……？」
「……………」
「その体勢で寝る……！？」