みじかいまとめ
「どらちゃん。ぎたちゃんは危ないよ」
「……はあ」
「見張っといて」
「なんで俺が」
心底嫌そうな顔をされた。だって俺見失っちゃうもん。もう今現在進行形で置いて行かれて見つけられなかったから先にみんなのとこに戻って来たところだし。べーやんがきょとんとした顔で見てくるから、説明しよう。
ぎたちゃんが自販機行くって言うから一緒に行ったら、きしくんがいた。今日は、なんだっけ、なんかの打ち合わせ。だから多分、きしくんも打ち合わせに来たんだろう。それでばったり会ったから喋ってたんだけど、何かの話の流れでぎたちゃんが余計なこと言って、きしくんが怒っちゃったのだ。きしくん割といつも怒ってどっか行っちゃうけど、今日のあれは流石に俺もぎたちゃんが口を滑らせたなって思った。しかし本人は全くその気もないし、分かってない。だから危ないよって言ったんだけど、どらちゃんの顔に「いつものことだろうが」って書いてある。
「なに言ったんだよ」
「真似しやすいって。良い曲だねって言ってた」
「無自覚煽り。最低」
「俺もあれは良くないって思ったよ」
「ボーカルくんでも分かるぐらいの悪口は駄目だろ。ガキでも怒るレベル」
「俺のこと子どもだと思ってるってこと?」
「レベルは同じだろ」
「可愛い子どもだといいな……」
「クソガキだよ」
つーかあいつらいるのかよ俺らのこと大好きか?とどらちゃんが椅子に反っくり返ってしまったので、べーやんの方に向き直る。そしたら何故かべーやんがうんうんしてるので、どらちゃんに同意してるのかと思ってちょっとショックだったんだけど、そうじゃないらしい。首を横に振られた。
「ぁ、や、ちがくて、ごめん……」
「ぎたちゃんへの同意?」
「えっ、あ、そうじゃない!」
「んん?」
「……ギターくんはすごいなあって……」
「どこがだよ。眼科行け」
「が、」
「もしくは耳鼻科」
「じ……」
「それか精神科。脳が壊れてるのは何科なんだろうな」
「……………」
「べーやんをいじめるなー」
「いじめてない。可愛がってる」
「そっか。よかった!ねっべーやん!」
「よ、よかったかな……」
「つーかどこをどうとったらすごくなるんだよ。理由どころか相手が怒ってる事実にすら気づけない図太さのことか?」
「ぁ、や、い、言い方は、その、よくなかったかもしれないけど、自分の思ってることちゃんと、あの、はっきり言えるのが、すごいなあって」
「なんにも考えてないだけだろ」
「なんにも考えてないだけだよ」
「……そ、そうかな……」