みじかいまとめ
「こないだ歯医者さん行ってえ」
「虫歯」
「違いますー。定期検診ですー」
普通にえらかった。俺、前回歯医者行ったのいつだろ。歯が痛いなーって時々思っても、別に生活に支障がなければ忘れてしまうので、随分昔な気がする。人を指さして虫歯菌扱いしたりっちゃんに、いーって歯を見せてるボーカルくんが、そんでさあ、と話を再開した。
「歯に空気当てられるんだけどそれがめっちゃくすぐったくて」
「歯に空気当てられんの?なんで?」
「そう。どらちゃん歯医者さん行ったことないの?」
「あんまりない」
「べーやんはすぐ虫歯なるから行くでしょ」
「いっ、す、すぐではないけど……」
「でもわかるしょ」
「……わ、わかる……」
「お前も歯医者とか行かないだろ」
「うん。あんま」
「病院にいるイメージない」
「りっちゃんにゆわれたくないけどね?」
「ねーえー、お互い様だよお」
つか俺の歯の話聞いてる?ってボーカルくんに言われた。うーん、ごめん。
ベースくんは、歯が痛いのは我慢できないから、ちゃんと歯医者さんに行くらしい。えらい。ボーカルくんは痛くなる前に定期検診に行くから、虫歯にあんまりならない、と。そんでりっちゃんは歯強そうだもんなあ。歯っていうか体が強い。俺あんまし、昔から病院とか行ったことないんだよな。大きい怪我も、まあ数回はあるけどそこまでしたことないし。したとしても覚えてないし。りっちゃんに噛まれたとこがやばくなって全然治んなかった時は連れていかれたけど、風邪引いても市販薬でどうにかなる。さっきも思い返した通り歯が痛くても時間が経って慣れるか痛くなくなるかしたら忘れちゃう。
「歯医者さんってなにするの」
「なにて。虫歯治したり」
「他には?」
「えー、定期検診行くと歯のクリーニングしてくれるよ。歯磨きだけじゃ綺麗にならないとこ」
「口の中にドリル入れるんだろ」
「えっ怖……」
「それは治療する時だけだから!常にじゃない!絶対どらちゃん歯医者さん行ったことないよ!」
「そもそも歯が痛くなったことない」
「……それはそれで羨ましいけど……」
「どらちゃんタバコ吸うのにね」
「タバコ吸うと虫歯になるの?」
「率上がるんじゃないの?」
「知らん」
「つーか俺ついに親知らず抜こうって言われて」
「ギターくん、親知らず分かるか」
「わかるよ!ばかにしないで!」
「知らなそうだから」
一番奥の歯でしょ。それぐらい知ってる。最後に生えてくるって聞いたことある。自分が生えてるのかどうかは知らんけど。話を振られたベースくんが、俺も抜いたよ、ってほっぺを押さえながら言ってる。思い出し痛いのかも。てことはやっぱ歯医者さんて痛いんだよね。
「俺は歯医者さんには行かない。痛そうだから」
「えー、行った方がいいよ。歯は一生物だって親父に言われたよ」
「歯磨きちゃんとしないから虫歯になるんだろ。不潔」
「だから俺は虫歯じゃないの!虫歯にならないために定期検診に行って歯に空気当ててもらったらくすぐったくて笑っちゃったんだけど咽せたら気管に水が入って死ぬかと思った」
「そっちじゃん本題」
「かわいそう」