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台詞


お酒を飲んで酔っ払ったみゅんたが、頬を机につけたままぼそぼそと喋り出した。
「おれえ……好きな人がいるんですけど……」
「うん」
「……年上ってどう思いますか……?」
「いくつ上かによらない?」
「だいぶです」
「だいぶかあ……」
「でも好きなんです……だいぶ上ってやっぱ他の人から見たらあんまなんですかあ……?」
「うーん。人によるよね」
「ひとに」
「自分が良いなら良いと思うけど……あんまり年離れてると、なんだっけ、ジェネレーションギャップ?があるんじゃない?」
「そうゆうのは関係ないんですけど」
「関係ないんだ……」
じゃあいいじゃん。突然何を言い出したんだろうか。でもお、あのお、とむにゃむにゃ言ってたみゅんたに、じゃあもちたさんは年下ってどう思いますか?と聞かれたので、好きですね…と素直に答えておいた。弱々しい泣き声しか返ってこなかった。
「ひんん……」
「いやなの?」
「……もちたさんが年下好きってことは、もちたさんが歳を取れば取るほどストライクゾーンが広がって行ってしまうってことじゃないですかあ……」
「あっ!?違うよ!?年下の範囲が広がっていくわけじゃなくて、あたしから見て幾つ下かの範囲が移動していくだけだからね!?」
「……?」
「ごめんね難しかったね〜〜」
勢いづいて立ち上がったあたしを、ぽや…と見上げられたので、でれでれしてしまった。かわいいんだから。言いたかったのはこう、昔は下のボーダーラインが17とかだったかもしれないけど自分も歳を重ねるにつれてそっちも比例して上がって行くのだということだったのだけれど、今のみゅんたには難しかったらしい。多分知性が小学生くらいしかない。くてんとまた机に伏したみゅんたが、ぽそぽそ話し出した。
「おれが好きな人はあ……家庭的で……こうゆうおつまみとかをぱっと作れて……あと優しいし……見た目はアレだけど……」
「みゅんたあたしの見た目のことアレだって思ってるんだ?」
「良い意味ですよお?こういうー、派手な見た目なのに中身が真面目だと、ギャップがあるじゃないですか」
「真面目かなあ……」
「は!?真面目じゃないですか!一生懸命だし!一途だし!目の上がきらきらしてて可愛いし」
「ありがと」
「おれも髪伸ばそっかなって思ってるんです。おそろい」
「やめて」
「はい」
おれの見た目はもちたさんのものなので…と言ったのを最後に目を閉じてしまった。眠いのかな。そろそろ片付けるか。

「なに一人でおしまいにしてるんですか!」
「うわびっくりした!」
「ちょっと眠たかっただけでしょ!」
「だってみゅんたすぐ寝ちゃうんだもん……赤ちゃんなの?」
「人よりちょっと眠たくなってから寝ちゃうまでが早いだけです!」
すーすー寝息立ててるみゅんたにブランケットかけてあげて、いろいろ洗い物したりゴミまとめたりして、全部終わった頃に飛び起きた。まだ飲むんだからあ!と冷蔵庫から取り出した缶を勝手に開けているので、あたしはもう飲まないからね、と釘を刺しておいた。聞いてるかどうかは分からん。
「おれの好きな人の話もう少し聞いてくださいよ」
「まだそれ続いてたんだ。いいよ」
「最近新しい靴買ったんですよ。でも買うまでに超時間かかったんですよ。あれがいいこれがいいっつって」
「そう。自分でもびっくりするぐらいかかったよね。結局前の靴の裏剥がれちゃったから買ったけど」
「最終的に二択になってからがまあ長かったんですよ。かわいいですよね」
「みゅんたは両方買えば良いとか言うけどさ。そういう問題じゃないからね」
「両方買えばよかったんですよ。日によって変えればいいじゃないですか」
「あたしの足は2本しかないのお」
「カラコンはいろんな色買うくせに……」
「それはそれ」
「でもおれがかわいいって言った上着お気に入りになってデートの時毎回来てくるんですよ。それに合わせて中の服も買ったんですよ。かわいくないですか」
「……なんでバレてんの……」
「だから靴ももう一押しだったなって。だってどっちも似合うと思ったから」
「ねえなんで知ってんの」
「いくら嬉しくてもSNSで呟いちゃだめですよ。筒抜けですよ」
「ネトストやめてよ!」
「ストーカーじゃありません。見守り活動です」
「もお〜やだ〜みゅんたのそういうとこ嫌〜」
「嬉しいくせにい」

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