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「よこみねえ?」
諒太のゆかいな仲間たちと、今日は理人と奥さんも来るって言うから、庭でバーベキューしてる。お父さんが奮発してくれて、いいお肉とかあったりして、これなら毎日来てくれてもいいな、と思う。飲み物のペットボトルを理人とよこみねが取りに行って、でも理人だけしか飲み物持って帰ってこなかったから、呼びに来た。家の中で迷子になってるわけじゃあるまいし。よこみねがとっといてたでっかい肉が焦げちゃうし。
トイレかなーとか手ぇ洗ってんのかなーとか見ながら歩いたけど、いなかった。リビングと庭は繋がってるから、もういいやと諦めて戻ろうと思ったら、ソファーに座ってる背中を発見した。静かすぎて気づかなかったし、なんなら見つけた瞬間ちょっとびくってなった。ここにいたのかと合点がいって、テラスに座って靴を突っ掛けながら顔だけそっちに向ける。
「よこみねなにしてんの?行こうよー」
「……………」
「ねえー。なにしてんの!」
「……………」
「お肉焦げるよ!ねえってば!」
「……………」
「はァー!?無視ですかー!?」
「うあ」
「あぁ!?」
突然上がった別の人の声に、キレながら顔を向けると、みやもとが引き攣った顔で両手のひらをこっちに向けていた。落ち着け、という意味だろうか。なに、とつっけんどんに聞けば、大きい声がしたから気になって覗いた、と。まあそりゃそう。庭の方に向き直れば、理人とお父さんとお母さんは和気藹々話してるし、理人の奥さんとドラムの人もなんか日陰でご飯食べてた。え。あたしだけ無視されてんの意味分かんないんですけど。いないから心配して探しに来てあげたんですけど?
「よこみねが無視する」
「……な、なんで?」
なので、正直にみやもとに言いつけておいた。なんでと聞かれても、あたしに理由がわかったらこんなことにはなっていないし、どうしたらいいのかもわからない。なにかあったとか、と聞き方を変えられたが、心当たりがないのでそっぽを向いた。
「ぎ、ギターくん、無視とかそういうこと、しなそうだけど……」
「は?ガン無視だから。見てて。おーい、よこみね。よーこみねー」
「……………」
「ね」
「……寝てるとか?」
「無くない?」
「なくはない……」
靴を脱いで上がっていったみやもとが、そおっとよこみねの顔を覗き込む。途端にぱっと顔を上げたよこみねに、ほら寝てないじゃんあたしだけガン無視じゃんなんなの?と瞬間的にイラっときて、直後にみやもとに肩を叩かれてこっちを指さされたよこみねが振り返った。
「あ。ごめん」
「はあ!?」
「聞こえなかった」
「んなわけなくない!?」
「ノイキャンがえぐくて」
「のいっ……」
耳元に手をやったよこみねが、ほれ、と軽く差し出したのは、ワイヤレスのイヤホンだった。もう片方は、使用用途通りに、もう片耳に入っているのだろう。半笑いのような困り顔でこっちをちらちら見ているみやもとは置いといて、いやあリヒトさんに借りたんだけどやっぱいいやつはすげえわいくらすんだろこのレベルまでいくと、と、片イヤホンをあたしの方に突き出したまま独り言のようにこぼすよこみねがスマホにずっと目を落としているのをいいことに、靴を脱いで上がった。
「りかこ知ってる?家にでっかいオーディオあんだって、なんで買ったか今度聞こっかな」
「わっ、かりにくいんだよ!」
「いったあ!?なんっ、で俺、今叩かれたの!?」
「……りかこちゃんは怒ってるわけじゃないから……なんとも……」
「怒ってんじゃんどう見ても!平手打ちだったんだけど!?」
「……安心のビンタだよ」
「ベースくんなにゆってんの!?」

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