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おはなし





暗いと絶対ぎたちゃん眠くなるから暗くしないでって言ったのに俺がシャワー浴びてる間に結局勝手におっきい電気消してダウンライトだけにされてたので、ぼんやり明るい部屋の中。でっかいソファーの方にぎたちゃんがいて、俺はベッドに寝っ転がってる。だってぎたちゃんなんか食べるんだもん。そういう人はベッド乗れないよね。ごろごろしながらつまもうとしてたぎたちゃんは、「ボーカルくんて変なとこ良い子だよね……」と微妙な顔をしていた。全部良い子だろうが!
「こないださあ。ぎたちゃんがどらちゃんにいたずらしてたじゃん」
「どの?」
「うん……どの?って言えるぐらい仕掛けてるの、ぎたちゃんぐらいだかんね?」
「えー。だって、りっちゃんあんま気づかなくてうけんだもん」
「それはそう。気づいてて無視してんのかな?って俺も最初思ってたんだけどマジでそもそも気づいてないことも多いよね」
「抜けてっから。しっかりしてないから」
「そお」
「俺のがしっかりしてっから」
「それは違う」
「ええ……?」
「でも俺が後つけたりすると気づくの。なんで?」
「りっちゃんボーカルくんのこと好きだかんなあ」
「チェンジで」
「うはははは」
「怖いんで……」
「で、どれえ?」
「あのー、ペットボトル入れ替えてたやつ」
「あ!だから!あれはねえ!俺やってないよ!りっちゃんは俺のせいにしてたけどねえ!」
「うそお」
「ほんとだって!触ってない!楽屋のカメラ見て!」
「あん時はカメラ隠されてなかったから……」
「いつも隠しといてほしい。無実なのに頭ごりごりされたんだかんね俺」
「いつも仕掛けられてっとべーやんの胃に穴開いちゃうからさ」
「そっか……」
「じゃああのペットボトルはなんだったの?どらちゃんのコーヒーはどこ行ったの」
「知らん。俺ではない」
「それかもうどらちゃんがそもそも買い間違えたとか名前書く段階で間違えたとかは全然あるけどな」
「それだって絶対……俺やってないもん……」
ぶつぶつ言ってら。まあぎたちゃんがそう言うならそうなんだろう。どらちゃんペットボトルいたずら事件、というのもそのまんまで、どらちゃんが買ってきたコーヒーを楽屋の備え付けのちっちゃい冷蔵庫に入れて、でもそれじゃ誰のか分かんなくなるって話になって、実際べーやんもおんなじようなの入れてたし、だから本人曰く「名前を書いた」らしいのだけれど、ちょっとした後にまた冷蔵庫を開けたら、そのコーヒーが消えてペットボトルのコーラが一つ残るという謎の事件が先日起きたのだ。けれど、結局犯人は分からずじまいで、どらちゃんが言うには、いつもみたいにぎたちゃんがくだんないいたずらをしたんだ、と。ぎたちゃん側は、眠たかったしそもそもそんなのがあるのも知らないので無実である、と主張したのだけれど、有無を言わさず両こめかみをゲンコツでぐりんぐりんやられてた。解放された後、よぼよぼしてたのから回復したぎたちゃんがどらちゃんのこと思いっきり蹴っ飛ばしてたから、まあ当然のように超痛かったんだと思う。そもそもどらちゃんが名前書いたっつってるのも誰も見てないし、なんならどらちゃんが買ってきたコーヒーも俺は見てない。だから謎なのである。ぎたちゃんが珍しく根に持ってるのがおもしろい。こめかみぐりぐり、相当痛かったんだな。
だらだら喋りながら、ぎたちゃんは袋のお菓子をずっとつまんでて、あとでもらおーって思ってた、んだけど。
「あ。なくなっちゃった」
「えー、俺まだ食べてないのに……」
「ごめんね」
「取っといてってゆったのに……」
「ごめんってば。今度買ってくるから」
「地域限定って書いてた……」
「しつこっ。モテない」
「はあー!?」
「わはははは」
「なんだってえ!?」
ぎたちゃんがソファーから落ちそうなほど笑っているが、全くもって笑い事ではない。もう一度はっきり言ってほしい。もっと言うならそうなるに至った理由を教えてほしい。切実に。マジで。
「モテないはひどくない!?」
「あはっ、あはははっ、む、むり、はははは」
「ねえ!あのさあ!俺は別に女の子にちやほやされまくりたいって言ってるわけじゃないの!ファンの人たちの反応とかすごい嬉しいしさあ!?キャーキャー言われんのはもうそこで満たされてるとこもあるわけ!わかる!?」
「わっ、ひひっ、わかんない、お、お腹痛い」
「モテたいわけじゃないけどモテないのは違くない!?俺のことを受け止めてくれる彼女が!欲しいって言ってんの!俺は!」
「いひっ、も、っ黙って、ふ、ふふはっ」
「しばらくいないよ!?彼女らしい彼女!俺なんかした!?」
「なんっ、ふふ、なんもしてないからじゃない、んはは」
「ギャー!」
死んだ。その通りなので。
ぎたちゃんの波が落ち着いたあたりで、でも本当に俺は彼女が欲しいし彼女ができたら大切にするしちゃんとサプライズオッケーかどうかをリサーチしてからサプライズする、みたいな話を訥々としたのだけれど、まだ半笑いが抜けてないぎたちゃんから「そりゃそう」としか言われなかった。くそお。俺にできる努力なんかみんなしているというのか。だったら尚更なんで俺には彼女ができないんだ。
「えー。有名人税?みたいなもん」
「どらちゃんは?」
「あれは病気」
「べーやんは?」
「ベースくん目当ての人はベースくん目当てでしかないじゃん」
「ぎたちゃんは?」
「俺も彼女いないもん」
「仲間……」
「うん」
「……俺最近気づいたんだけどさ?」
「ん?」
「結局は顔だよね?」
「……んんふ……」
「じわじわ来ないで。今俺すごく真剣だから」
「……すごく真剣な顔で言うことじゃ……」
「女の子が惹かれるのってやっぱ顔がかっこいいからだよね?俺の顔は普通だから彼女ができないとかそういうことだと思うんよ。だって俺の方が優しいし性格いいし明るいしとっつきやすいじゃん」
「え?待って?そうなると俺も普通ってこと?」
「えっ?だってぎたちゃん自分のことイケメンだと思ってたの?」
「思ってないけど……」
「かっこよくないから友達枠になっちゃうんだよ。顔だよ。顔。顔がかっこよかったら全ての話が変わってくるんだよ」
「顔かあ……」
「ね?」
「そお言われると……まあ……」
でも友達は多いじゃん?と言われて、まあそれはそうなんだよな、って頷く。とりあえず暫定であの二人よりは多いよ。こないだどらちゃん「友達ってどこからどこまで?」とか言ってたもん。しかも恐ろしいことに別にウケを狙ってるとかじゃなくてマジの素だった。友達いなすぎだろ。
俺が食べたかったご当地限定のお菓子をぎたちゃんが全部食べてしまったので、新しい袋を開けた。俺はしょっぱいやつの気持ちなのに、ぎたちゃんがチョコのやつが食べたいとかゆうから、二つ開けた。どうせ後でぎたちゃんが全部食べる。
「クッション一個ちょうだい」
「ん」
「あんさあ、ぎたちゃんの走り方っておかしいじゃん」
「おかしくないけど」
「おかしいじゃん」
「おかしくない」
「おかしいよ」
「おかしくない!」
「おかしい!おっそいし!」
「ベースくんよりは早い!」
「べーやんだってぎたちゃんと同い年だったらぎたちゃんより早かったよ!」
「なんで突然そんなひどいこと言うのお!?」
「別にぎたちゃんの走るのが遅いって話じゃないから!走り方が変って話!」
「なにが違うのそれ!」
「全部違うだろうが!」
言い争ったから、結局なにを言いたかったか忘れてしまった。なぜこんなくだらないことで声を荒げてしまったんだ。疲れた。
ベッドの上でぐったりしてたら眠くなってきたので、若干うとうとしていたら、ぎたちゃんが「寝ちゃったの?」と聞いてきたので、身体を起こした。寝ちゃってはいない。まだギリセーフ。あと30分ぐらいしたら眠くなるかも。1時間したら寝る。
「こないださあ、ベースくんに怒られてたじゃん。あれどしたの?」
「怒られたっけ」
「ベースくんかわいそう……」
「……なんだっけ」
「俺は知らないんだって。遠くから見えただけだから、ボーカルくんが椅子に座ってるとこの前にベースくんが立っててなんか言ってたから、あー怒られてんなって思ったの」
「怒られ……たっけ……?」
「だってベースくんだけ立っててボーカルくん座ってたんだもん。逆ならあるの見たことあるけど、そっちってことは怒られてんのかなーって」
「……あ!」
「ほらあ。忘れてたじゃん、ベースくんかわいそお」
「怒られてたわけじゃなくて、心配されてた」
「……なんで?」
何故か俺がよく車にぶつかられるのは最早周知の事実と言ってもいいぐらいのことだと思うのだけれど、先日べーやんと二人で空いた時間ができたから、コンビニでこないだ言ってたおいしかったやつ教えたげるーっつって事務所を出て、徒歩3分で到着する場所に辿り着く前に俺が轢かれかけたので、顔を真っ青にしたべーやんの受けたダメージを考えてコンビニに行くのを諦めたことがあったのだ。青だったから渡ったのに車側から突っ込んできたし、あっこれベーやんがまずいなと思って無理に引っ張って自分も転げたせいで足は軽く捻ったし、だから遠目から見たぎたちゃんの、俺が座っててべーやんだけ立ってて怒ってる風だった、ってのは正解に近い。怒られてたっていうか、あんなことがよくあるのはおかしい、車が悪い、ボーカルくんは歩道以外を歩かない方がいい、ってこんこんと言い聞かせられていただけだ。俺からしたら足に関しては名誉の負傷だったのだが、べーやん的には許せなかったらしい。しばらく引きずってたし。それにべーやん、前に俺が骨やった時もめちゃくちゃ心配してたしな。
「そういうわけ」
「あー。なんか足包帯してる時あった」
「それ。べーやん守った俺えらすぎと思う」
「えらい」
「でしょお。でもそれからべーやんが絶対車道側歩くようになった。かっこいい」
「彼氏がやるやつだよ。それ」
「俺……えっ……?俺がべーやんの……彼女だった……?」
「だから彼女できないんじゃん?」
「なるほどだわ」
「解決です」
いやなんも解決してないんですけど。ぎたちゃんのドヤが腹立つ。でももう全然治ったしべーやんも心配しすぎだよ、って足をぷらぷらさせながら言ったら、そういうところでは?とぎたちゃんに指をさされた。そうですね。
「だって俺車運ないんだもん」
「車運はあるでしょ。あるからボーカルくんに引き寄せられんだよ」
「それもそうだわ」
「健康運がないんじゃない」
「えーでも風邪とかは引かないよ」
「うそお。引いてたよ」
「あんま引かない」
「えー……」
「なにその目。てゆかさあ、運がない方を言うから悲しいんだよ。マイナス感強くね?」
「わかんなくもないかも」
「それどっち?」
「……わかる、わけではない?」
「ふわふわしてんなあ……」
「ポジティブにいこってことでしょ」
「そう。俺で言うと、事故運があるってこと」
「そんな運あんの?」
「あってたまるかよ……」
「ふはは」
「あってたまるかよぉ!」
ベッドを叩いたらお菓子が飛び散ってしまったので掃除した。ぎたちゃんも手伝ってくれた。優しい。そんなことしてる間にほっぽってたスマホに、マネージャーさんから明日の連絡が来てた。喋ってて全然気づかなかったや。ぎたちゃんもきっと気づいてないと思うので、こんなんあったよ、とスマホを見せれば、30分近く前だからもう返事したけど…と言われた。現代っ子め!スマホ中毒!何の気なしにスマホをいじってたら、マネージャーさんに電話しちゃうところだった。危ない。
「今電話したら誰来てくれるか賭けよ」
「えー。やる」
「やるんかい……」
「おもしろそうだから」
「ぎたちゃんあんまだめとか言わんもんね」
「ゆうよー。痛い時とか」
「それはみんなそうだから」
「ベースくんはゆわないよ」
「それはまた別だから……」
「えーじゃあ、んー。だれがいっかなー」
「じゃあ俺べーやんもーらい!」
「あっずる!ずるいじゃんそれは!」
「カレピだから……」
「はー!?それ絶対来るの目に見えてるから!ボーカルくんの賭け金めっちゃ下げるよ!」
「いーや、これでいきます。俺は負けたくないから安牌を取るんです。べーやんは来ます。なにがあっても」
「ずるい!」
「絶対まだ寝てないし。じゃあぎたちゃんはどらちゃん呼べばいいじゃん」
「嫌」
「嫌とかある!?」
「だってそれもう負け確定ってことでしょ」
「まだ分かんないよ!」
「賭け金いくら?100円?ならいいよ」
「まだ分かんないってば!」
「来るかどうか以前に連絡しても反応するかどうかが微妙だかんね」
「まあ……それもそうなんだけど……」
「絶対無視される。絶対。外にいたら100%」
「でももう部屋に戻ってるかもよ」
「それはそれで来なそう」
「……信頼なさすぎ……どらちゃんかわいそ……」
「ボーカルくんが呼んだらワンチャン?」
「えー、大差ないでしょ」
「今女に振られて泣いてるっつったら来るよ」
「大笑いしながら来る。それは来るわ」
「でしょお?」
「んー、でも、うーん……なんかいろいろ言われて結局断られる未来は見える」
「ほらね」
「呼ぶかあ」
「別にいいけど」
「……でも今べーやん呼ぶのかわいそうだな」
「あー……呼んだら来そうなだけにね」
「変に揺さぶるのかわいそう。やめよ」
「じゃあ俺はフチタさんにする」
「絶対来てくれるよねそんなん!ずる!」
「お菓子とかも持ってきてくれそうだから」
「ずっる!」
「ボーカルくんだってベースくんにしたんだからいいでしょ!」
何も言えなかった。その通りである。まあ結局呼ばないんだけど。こんな時間だし、明日もあるし、迷惑かけたいわけじゃないし。流石に多少の理性は残っている。ソファーにぐてんと伸びたぎたちゃんが、だったらさあ?と声を上げた。
「じゃあ逆に電話されて誰だったら行くかって話?」
「いやもうそんなん誰からでも行くよ」
「好感度調整……」
「そういうんじゃないんすよ。やっぱね。相手を大切に思うなら行動が変わってくっかんね」
「顔が嘘ついてる!」
指をさされたが、俺としてはもうそれは当たり前のことなので絶対折れてやらなかった。そりゃそうですよ。人を選ぶとかそういうことはしちゃいけないんでね。みんな友達ですから。ぶーぶー言っていたぎたちゃんが、溜息を吐いた。
「はーあ。でもさあ、男女で差つけるとかそゆのはだめじゃん。それぐらいなら分かんのよ」
「女の子から呼ばれると100で行って、男からだと0とかは流石にねえ」
「え?りっちゃんの話した?」
「ぶははははは」
「でもそおゆうことだよ。誰から呼ばれても全部行くのは嘘」
「嘘ではないけどさあ?行きたい気持ちはある」
「えー、めんどいなーみたいな時ないの?」
「あるけど。会っちゃうと楽しいことのが多いくない?」
「それはあ……んあー、ボーカルくん友達多いかんなあ……」
「ぎたちゃんもでしょ」
「そおやって考えたら、俺のは友達じゃなくて知り合いかも。別に呼ばれても行かない時あるし」
「でも、今からお好み焼き粉7袋使ってハチャメチャにでかい一枚のお好み焼き作るから来てって言われたら行くでしょ?」
「そんなおもしろそうなのは行くよ」
「こないだやったんだけどね。失敗した」
「当たり前じゃない?んはは」
大きすぎてひっくり返せなかった、とかいう問題じゃなくて、7袋も使ってしまったので水の分量の計算を普通に間違えてしゃばっしゃばのやつになってしまった。ちゃんと全部食べましたけど。
そういえばぎたちゃん料理しないんだよな。別に俺も積極的にするわけじゃないけど、やるかやらないかって言われたらやる。さすがに、卵を電子レンジにそのままぶちこんだら爆発して掃除が面倒になるってことぐらいは知ってるくらいには、やる。作った方が安上がりとかも言うけど、それよりもなんか、料理したい気分って時あるじゃん。別に上手いわけでも凝ったものが作れるわけでもないけど。レシピ見て、あーこれおいしそうだなー、作れそうだなー、みたいな。そう聞けば、理解不能の顔のまま首を横に振られた。どこからどう見ても「ない」の表現だな。
「まあ、卵かけご飯作れない人にはな……」
「人聞き悪いな!卵かけご飯は作れる!」
「だってぎたちゃんこないだホテルの朝ごはんで卵かけご飯しようとして穴開けないで卵かけたから卵全部外に出ちゃってたもん」
「その時だけでしょ!」
「普通分かるもん。へっこまさないで卵乗せたら滑り落ちるなんてこと」
「だっ、い、今ならできるし」
「そりゃそうでしょ。あれやってまだ同じことしてたらさすがにフォローできないよ」
「……そんで普通に自分でもショックだったし……」
「やっぱそうなんだ……」
まあ次があるからさ…と慰めておいた。次があるのかは知らんけど。なんかその土地のブランド卵?とかだったぽいもんな。まあ卵かけご飯が作れるかどうかはおいといても。
「料理できた方がいいよ。人として」
「……………」
「絶対やらない顔してる……」
「……めんどくさい」
「自分で作った方が安かったりとか」
「だから?」
「お、おう……」
「まずうち鍋とかないもん」
「鍋ないの!?」
「嘘ついた。鍋はある。一応」
「……でもぎたちゃんがキッチンに立ってるとこが想像できるかっつったらできないんだよなあ……」
「立つことぐらいはできる!」
「そりゃ誰でもできるから……」
「ベースくんもやらないってゆってたじゃんかさ」
「べーやんのやらないはさあ、でもまあ想像できるじゃん。料理しようとしてるところが」
「……………」
「あ!都合悪くなると寝る!」
「眠くなってきちゃった」
「バーベキューの時も網触んなかったもんね」
「だってみんながやってくれんもん」
「そうね……なんならどらちゃんに火から遠ざけられてたよね……」
「あ!焼肉はする!」
「焼肉が料理に入るかどうかは審議だけどね!?」
「てゆかりっちゃんが俺にやらせないのもそもそもおかしくない?自分だってやんないじゃん」
「でもどらちゃんが料理してんのは想像できなくもないよ」
「……そんなことはない」
「なんかおしゃれなもん食べてそうじゃない?適当にぱぱっと作りましたけどみたいなツラして」
「いーや。まずスーパーに行かない」
「それもあるんだよなあ。分かる」
「俺りっちゃんの洗濯とか掃除はしてるっていうのも信じてないかんね」
「あはははっ、それは信じてよ!」
「洗濯機の使い方とか知らないと思ってる」
「いい年した大人が!?やっば」
「そんぐらい生活力ない。絶対」
「でもぎたちゃんも洗濯と掃除ぐらいしかしないしょ」
「俺はね。一人暮らしをしているから」
「語弊ある……みんな一人暮らしだよ……?」
「一人暮らしだと別に料理なんかしなくてもコンビニで買ってきたり冷食で済ませたりできる」
「あっ!こないだ言ってたカップ麺食べたあ?超美味いやつ」
「あーね、それねえ、どこも売り切れてて買えないの」
「そう言うと思いましてね」
「え?えっ?え!だははっ、なんで持ち歩いてんの!?」
「ぎたちゃんにあげようと思って一個余分に買ったのをずっと忘れてリュックに入ってた」
「あはははは!ありがとー」
「はい。今食べる?」
「今はちょっとな……」
「でも俺なんか微妙に腹減ってきた」
「んー……肉食べたあい……」
「俺は料理の話になったあたりからご飯食べたい口になってたよ」
「えー……」
「なんか頼む?ルームサービス的な」
「うーん……」
「焼き鳥食べたくなってきちゃった」
「……でももうじきボーカルくん眠くなるでしょお?」
「そうね」
「じゃあやめとくー」
「でも飲み物も無くなっちゃったから買いに行きたいのよ」
「ふは。なんでお姉さん口調?」
「コンビニ行こ」
「自販機でいいじゃん」
「やだ!」
「声でっか。ふはっ」
「やだあ!」
「わかったわかった」
「あああああ!」
「迷惑迷惑」





「あ。切ってくるの忘れちゃった」
「なにが?」
「録画してるやつ」
「カットしてくれるよ」
「そっかあ」
「使えないとこは全部カットしてくれるよ」
「いっかあ」
「いいよお」
「じゃあエレベーターに早くついた方の勝ちで負けの人が奢りねはい今からスタート!」
「奢りでいいや」
「えええ!?えっなんで乗ってくれな、ええええっ!?」
「だははははは」



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