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ラジオ



「『企画内で結局好きなとこ誰にも言ってもらえてなかったけど嫌われてんの?』。はい。俺を傷つけたいだけのコメントが来ました」
「うはは。でも突然電話で「どこが好き?」って聞かれたら普通頭イかれたと思うじゃん」
「優しく答えてくれても良いだろ」
「うん……」
「微妙そうな顔するな。カメラないから」
「別に嫌いとはゆってないでしょ」
「じゃあボーカルくんの好きなとこ言えよ」
「え?元気なとこ」
「すぐ言う!」
「うわ、びっくりした、おっきい声」
「分かるか?あの動画上がってからすげえメールもコメントも来てんだぞ。他のメンバーでやれとか、やっぱあいつ嫌われてんだなとか、そしたら現実でも擦られるようになった俺の気持ちはどう、誰に文句言えばいいんだよ」
「社長?」
「言ったわ」
「ゆったの!?」
「会ったから」
「うわ、わー、ははっ、なんっ、んふ、なんて?」
「可哀想にって」
「だはははは」
「見たよー、おもしろかったねー、新曲も聞いたよー、可哀想にね。って」
「ひっ、ひい、さいっこ、最高……」
「なんで雇用主にも憐れまれなきゃならないんだよ。俺は俺のどこが好きなのかメンバーに聞いただけなのに。しかも自分の意思じゃないのに」
「んん、ふ、まあ、っそ、それはそお」
「声裏返ってんじゃねえぞ」
「見たけど、マジで全員、頭平気?みたいな返事しかしなくて、ふは、ベースくんも答えてくれてなかったの超ウケたから……」
「一人ぐらいはなんか言って欲しかった。例え自分の意思で聞いてなくても」
「そう。りっちゃんが聞きたくて聞いてるわけじゃなくてもね」
「人としてな」
「ひとっ、んふ、ごめっ、人として、ぐっ……」
「机叩くな。音が響くだろ」
「つ、つらい」
「一人で笑って過呼吸になってなにが辛いだよ。誰にも好きなとこ言ってもらえなかった俺の方が辛いよ」
「ふはっ、だ、黙って、マジで」
「好きなとこ言って」
「めっちゃくちゃしつこいじゃん……」
「俺はちゃんと考えてきた。ベースくんは殴れば言うこと聞くところが好きで、ギターくんは物で釣れば言うこと聞くところが好きで、ボーカルくんは全部好き」
「ボーカルくんだけ違くない!?」
「面白いから。あの人は」
「ずる!」
「お前らとは格が違う」
「まあ異論はないけどさ……」
「色々あるだろ。俺の好きなところ。よりどりみどりだろうが」
「何で今日そんなしつこいの?また罰ゲーム?」
「自由意志」
「そっか……」
「顔とか。足が長いとか。手がでかいとか」
「全部見た目なのはいいの?」
「見た目がまず好きだろ?」
「すんげえ自信。ほんっと、マジで尊敬する。嫌味とかじゃなくて」
「ギターくんの脳みそで俺に対して嫌味が言えると思ったことないから平気」
「うん。うーん、言い返してえー!」
「なんか考えろよ」
「なんも思いつかん」
「バカめ」
「指さしちゃいけないんだぞ!」
「事実を言って何が悪いんだ。俺だって目上の人に対しては指なんかささない」
「社長は?」
「さす」
「目上の人にもさすじゃん!」
「うるさい。お前、俺より年下なんだから敬語使えよ」
「久しぶりに聞いたそれ」
「久しぶりに言った」
「りっちゃんに敬語使ったことなんかないよ」
「使われたことない。お前が正しい敬語を使えてるところも見たことがないし」
「でも俺よりボーカルくんの方がやばいと思うんだよなあ」
「武士になっちゃうから。ボーカルくんは」
「ボーカルくんの敬語の真似して。一番偉い人にやったやつ」
「いいよ。よろしくお願いいたすでございます!です!」
「わははは」
「どんだけテンパったらこうなるんだよ」
「焦るとダメだよね」
「ボーカルくんもそもそも敬語使えねえやつに言われたくないと思うと思う」
「でも俺は武士にはならない」
「どっこいどっこいのバカ同士でそれ言ってても何も得るものないだろ」
「俺のがねえ、まだマシだから」
「同じことボーカルくんも言ってた」

『好きなとこは?』
『好きなとこ言われてない』
『多分気づいてない』
『今回は「さようならー」で終われてよかったですね』






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