「腹減った」
「そうだね……」
「べーやん料理しない人だっけ」
「うん」
「俺ねえ、時々するんだけど。なんか急にしたくなる時あって、自分で作ったもの食べたいなーって時」
「うん……」
「こないだチャーハン作ったの。超うまく出来た」
「すごい。あの、難しいって聞いたことある、パラパラにするのとか」
「あんねえ、卵とマヨネーズとご飯最初に混ぜるんだよ。卵かけご飯ぐらい混ぜる。そんでからフライパンに入れるとパラパラすんだよ。そうやって書いてあったからやったらパラパラになった」
「へえ……」
「興味ないじゃん」
「あ、あるよ、ある、ごめん……」
「でもべーやんやらないからなあ。こうすると上手くいくっつっても分かんないっしょ。ぎたちゃんも料理一切しないし」
「し、したことはある。一応」
「簡単でおいしいレシピ！って呼びかけたら集まったりしないかな」
「……そういうのはクックパッドとかで調べた方が……」
「俺の明日の夜ご飯を決めます！簡単で美味しくてすぐ出来て失敗しないレシピ！はい！スタート！」
「……すごいハードルだね」
「失敗するとどらちゃんがめちゃ喜ぶかんね」
「あ。あっ、一番。えっと、『たまごかけごはんが一番』」
「わかる。でも卵買う勇気出ない時ある。食べきるかなって。大体食べ切るけど」
「えと、『スーパーで売ってるカット野菜に適当な肉入れて醤油とバターでいためる。パックご飯に乗せて食べよう！』」
「絶対うまい。天才かよ。しかも買ってきたものが全部余らないところが完璧」
「『卵かけご飯より、深皿に生卵割って水ひたひたに入れて黄身一回刺しといて、電子レンジで１分ちょいやってめんつゆかけて食べる』……えっ、生卵ってレンジダメなんじゃ……」
「ね。これどゆこと？爆発すんじゃん」
「……あっ、『水かぶるぐらいちゃんと入れれば平気』って、あと『黄身に穴あけろ』だって」
「へえー。ゆで卵にするってこと？茹でんの手間だしな。やってみよ」
「『鶏肉を片栗粉とオイスターソースと醤油の袋に入れて揉んで電子レンジで３分半』……生……？」
「いやべーやん、意外と肉は電子レンジでなんとかなるんよ。やってみるわ」
「お、お腹壊さない？」
「生だったらやめるから！平気平気！まだある？」
「えっ、あ、『キャベツを千切って豆腐を握りつぶして鶏がらスープで沸騰するまで煮る』」
「野蛮！でも包丁使わないのポイント高い！洗い物は減らしたいからな」
「えっと、あー、ど、どれがいい？」
「みんなめちゃくちゃ協力してくれんじゃん。後でちゃんとゆっくり見るから……ん！これうまそう」
「……ハンバーグ？」
「そだね。『袋の中にひき肉とパン粉と牛乳と卵に塩ちょっと入れて揉んでフライパンに入れて焼き色ついたらひっくり返して蓋して７分』。チーズ乗せたいな」
「……ハンバーグが作れるって相当すごいことだと……」
「時間あればできんじゃない？作ったことないけど」
「そっか……」
「べーやんもやってみたらいいよ。案外楽しいよ」
「え、っい、いいよ、あの、失敗したら勿体無いし、申し訳ないし……」
「あと洗い物がめんどくさいんだよな。そこが一番だわ、俺」
「……キッチン狭いし……」
「そー！俺んちも狭い！でもなんとかなる！おい飯テロ回とか言うな！見えたぞ！」
「お腹空いてきたね」
「そおー。終わったらなんか食べようぜ」
「どこのお店も開いてないよ、多分……」
「じゃあ俺が作ったげるよ」
「えっ！？」
「えっ？」
「どっ、え？どこで？」
「俺んち」
「……………」
「え？なに、んはは。何で固まんの？あ、別に腐ったものとか毒とか入れないけど？」
「……………」
「なにぃ？あはっ、なんかべーやんが泣きそうな顔で見てくる！なに！どしたの！他人の手料理食べるの初めてか〜？人の温もりがありがたいですかあ？」
「……はいぃ……」
「うはははは！何食べたい！？なんでも作ったげるよ！」
「……チャーハン……」
「いいよお〜！」

『なんであと十分でラジオ終わるんですか？』
『作って食ってるとこを見せろや』
『よーしチャーハン作るぞ〜！(深夜３時)』