・辻幸恵
つじさちえ。畑瀬幸恵でも可。さくちゃん母。真面目で一生懸命な頑張りやさん。長いこと、一人じゃないと泣けなかった。今はもう、そんなこともない。
幸太郎さんを若くして喪い、さくちゃんと二人遺された。自分一人でなんとかしなくちゃ、なんとかできる、と必死になるあまり、幼いさくちゃんを一人でお留守番させていた過去を、ずっと悔いている。今更だろうと、と何度でも謝っているけれど、さくちゃんはそんなに気にしてない。とても真面目なので、その時期はずっと、仕事も家のことも両方きちんとしようとして、いっぱいいっぱいになってた感じ。さくちゃんが中学生になると同時にお引越しをして、やっちゃんみーちゃんと知り合う。二人にとってさちえは、可愛い後輩、もしくは妹、って感じなので、過剰なまでに世話を焼かれた。その結果、甘えてもいい相手を知り、休める時間も作り、自分にかなり余裕ができた。再婚を考えることができたのも、そのおかげもあるかも。周りに助けられて生きてきた、と本人は思いがちだけれど、その基盤は全て自分の頑張りが築き上げたものだということを、もっと誇ってもいい。全部見てたさくちゃんは、ちゃんと知ってる。
どちらかというと、おろおろあわわ系なのだけれど、「やっちゃん」「みーちゃん」とあの二人を呼べるので、旦那組からは強者だと思われてる。実際、結構肝は座ってるし、思い切りはいい。言い分にも筋が通っていて、芯は強いタイプ。さくちゃんに対しても何かあった時、怒るとか叱るとかいうより、きちんと話をする。その間にさくちゃんが言い返しても、ちゃんとその言い分を聞いてくれる。だから、さくちゃんにはあんまり怒られた記憶がない。
年上女好きのこーちゃんがめろめろしている。無意識に優しくして、罪作りなさちえ。さくちゃんの支えがこーちゃんだということをさちえは知ってるので、そこも踏まえて自分も多少弱みを見せてしまっている節はあるかもしれないけど。でもまあ、決して誰にも頼らず、甘えず、っていうのを自分に徹していた頃を振り返ると、楽になれて本当に良かったとは思う。

・畑瀬幸太郎
はたせこうたろう。今は亡き、さくちゃん父。この人が退場してくれないと、さくちゃんはさくちゃんになれない。
工事現場で働いてた。不運な事故で、それなりに高いところから落っこちて、そのまま身体を捨ててしまった。この世に未練たらたら、というより、成仏のやり方を知らないまま人生を終わらされてしまったので、それからずっとその辺をふわふわしている。さくちゃんにもさちえにも見えないけど、うんうん！元気なようで何より！って思いながら、ふわふわしている。生きてる時と変わらず、適当である。
ひょんなことから、弁当のことがちょっとだけ特別に好きな神様に拾われ、白猫の身体を貸してもらえることになった。仲は良好。ギブアンドテイクという感じで、使われたり使ったり、お互いのためになるように動いている。幸太郎さんのせいで神様が人間臭くなったり、幸太郎さんが神様パワーを使えちゃったり、境目が曖昧になってきている節はある。
さくちゃんの様子見をしたくて東京組に取り憑こうとしたり、さくちゃんの友達の周りを猫の姿で結構うろついたり、やることが案外過激。とりあえずやってみっか！っていうタイプ。さちえのことを落とす時も、小学生男子のような絡み方で取り敢えず兎に角ちょっかいをかけ、結婚まで漕ぎ着けた。考えるより行動派。とりあえず見切り発車してみる辺りの加減は、さくちゃんに受け継がれている。
さちえちゃんが泣いてたら嫌だなあ、とはずっと思っている。だから、さちえが前向きになれたことを誰より喜んでいたのは、多分幸太郎さん。幼少期の海ちゃんには、ふわふわしてる幸太郎さんが見えてるっぽい。

・辻友梨音
つじゆりね。さくちゃん妹。さくちゃんが中二の時に、妹になった。
７歳差。ぐらいだったはず。大人しくて、おっとりしてて、どこかやわらかくて、不幸寄り。さくちゃんがお兄ちゃんになって、弁当やこーちゃんとも仲良くなって、前向きになって、いつも背負っていた不幸の影を取っ払った。高校生になった友梨音ちゃんの笑い方がさくちゃんに似てるとか、そんな感じ。そもそものさくちゃんはこーちゃんに引っ張られたわけで、こーちゃんにも懐いている。弁当には割と甘えている。お勉強教えてもらったりしたしね。
新しいお兄ちゃんとお母さん、って話に抵抗や嫌悪は示さなかったけれど、さくちゃんが一歩も心を開こうとしなかった間は友梨音ちゃんも全く歩み寄ろうとしなかった。そもそも無口だし、多分口もきかなかった。さくちゃんがこーちゃんにぶん殴られて、ちゃんと友梨音ちゃんに向き合うようになってからは、お兄ちゃんとして尊敬している。それと時を同じくして、さちえのことも「お母さん」と呼べるようになった。この辺りの話もちゃんとやりたい気持ちはあるんだけど、書かないでぼやかしてる内にかなり大事なイベントになってしまったので、手を出しづらい。いつかやる。
海ちゃんの面倒もしっかり見てくれている。いいお姉ちゃん。さくちゃんつながりで、青森高校組のお姉さんとも関わりがある。憧れを抱いている模様。割と大人に囲まれて育ってきた子なので、大人しくにこにこしていることがほとんどだけれど、人並みにはしゃいだり大口開けて笑ったり、怒ったり拗ねたり、そういうことも普通にできるようになってほしい。
さくちゃんに、何事も楽しんで笑えるように生きてほしいと思われている。こーちゃんに、有り体でも幸せになってほしいと思われている。弁当に、この先困ることのないように過ごしてほしいと思われている。友梨音ちゃん自身も、三人のお兄ちゃんのことが大好き。さくちゃんはともかく、一人っ子二人にとっては、友梨音ちゃんがいてくれて良かった。