第一章 寄生思念
「わざわざ汐見さんを追い出してする話って何です?」
「昨日の世莉の仕事について話す事がある。世莉がいた方がやりやすい。」
「あいにくですけど、世莉はどこかへ行ってしまいましたよ?」
「ハァ、なるほど。世莉は彼女を探しているのか。」
「彼女?」
「一ノ瀬美弥音。一ノ瀬家の令嬢だ。お前と同じ学校に通っていたと聞いたが?」
「いえ……知りません。」
桐哉は、確かに男友達は多かった。しかし、だからといって女子に友達が多いかと言うとそうでもない。話をする事はするが、交流を持っているのは世莉だけだった。
「やはり、お前は自分とは別の世界の人間には興味を持たないんだな。」
「彼女が、どうかしたんですか。」
「いいか、円藤。何者かがデストロイアを使って彼らを殺害した。これは明らかだ。とすれば、快楽殺人者や強盗でない限り、彼らを殺害したのは彼らの顔見知りだ。汐見刑事の話では、金が抜き取られた痕跡は無しだ。」
「つまり、先輩の通っている学校である、僕らの学校の関係者である可能性が高い、と?」
「ああ。そして、その可能性が一番高いのが、一ノ瀬美弥音だと言う事だ。」
「もっと……わかるように説明してくれますか?」
夜になるまで、世莉は翔子の呼び出しに応じなかった。今日は諦めようと桐哉が帰ろうとした矢先に世莉は事務所に顔を出した。
「なるほどな。確かに、この前の事と話が繋がってるな。」
「つまりこういう事かい?昨日の晩の依頼人は一ノ瀬美弥音さんの父親で……」
「連続殺傷事件の犯人が自分の娘では無い事を確かめるのが目的でしてきた依頼だったんだ。実際はレギオンが犯人だったが、それでも先週の事件とのつじつまは合わない。結果、先週の事件についての一ノ瀬美弥音の無実はまだ証明されていない。」
「しかし、「G」を操る「G」なんて……」
「そこなんだ円藤。私が一番気にしているのは。私もそんな話、聞いた事が無い。存在としての「G」は平等なはずだからな。私の知る限りでは。」
「そんな事はどうだっていい。私は感じるんだ。とてつもなく生臭い。上手く言えないが、その一ノ瀬美弥音とか言う女、生臭い臭いに包まれているに違いない。」
何か、苛立っている様子の世莉。自分の感覚を持ってしても、見つけられなかった事に対する苛立ち。そう桐哉は感じた。
「世莉、もしかしてさっきまでずっと探していたのか?一ノ瀬さんを。」
「ああ。」