第一章 寄生思念


 世莉は再び美弥音に向かう。それに合わせ、美弥音は自分の回りの地面に陣を張った。

「!?」

 陣から触手が伸びてきた。触手は世莉を捕らえた。

「強い、力をお持ちですね。」
「寄生させると思ったか!馬鹿め!」

 世莉は陣の上に結界を張った。それにより、触手は切断される事となる。世莉は触手から解放された。

「粛!」

 着地した世莉は、すかさず衝撃波を放った。美弥音も、防壁を張る事はできるようだ。世莉の衝撃波は防壁に阻まれた。
 美弥音は防壁を解くと、再び波動を放った。世莉は回避ができなかった。かろうじて両腕の結界で耐える事はできたが、世莉の体にかかった負荷とダメージは想定外の規模だった。

「くっ……」
「もう、おしまいですか?」
「!」

 世莉は美弥音の目の前に黒い結界を張った。美弥音は何事も無かったかのように結界を破壊する。

「!?」

 やられた。世莉はどこかに姿をくらましてしまったようだ。感覚で相手の居場所を察知できない美弥音は、完全に世莉にしてやられた。

「……やるわね。流石、爾落ノ能力者ダ……」



桐哉と翔子

「わかりましたよ!翔子さん!」
「早っ!もう見つかったのか!?」

 にしても早すぎる。翔子の予想を遥かに上回る早さだ。

「美弥音さん、郊外のショッピングモールによく行っていたそうです。真夜中ではありますが、行き慣れている場所にいると考えるのが妥当かと……」
「チッ……むちゃくちゃな推理だが、全く持ってその通りだよ。」
「え?」

 桐哉は状況を察した。世莉も翔子も同じ考えだったんだ。つまり、今世莉は……

「翔子さん!世莉、一ノ瀬美弥音の所にいるんですね!?」
「桐哉、結論から言えばだ、殺人自体は美弥音の意思だったかもしれないが、実行したのは別の存在だったんだ。」
「え?それはもう……」
「だから、命じたのもまた別の存在だったんだ。美弥音の意思を感じ取り、それをそのままデストロイアに送った存在。ショッキラスだ。」
「ショッキラス?」
「「G」の力を与える寄生虫だ。」
「彼女は、その寄生虫に寄生されていて……待てよ……」
「え?」
「しまった……やはり1人で行かせるのはまずかったか……」
「翔子さん!行きましょう!世莉の所に!」
「……仕方ない。来い、桐哉。」

 翔子の車に乗り、ショッピングモールに向かう2人。真夜中で車もほとんど無い。翔子は車を思いっきり飛ばしている。

「ショッキラスは、相手に寄生し、その生体エネルギーを吸収する事で力を増す厄介者なんだ。」
「しかし、一ノ瀬美弥音を生かしているじゃないですか?それは一体……」
「一ノ瀬美弥音を肉体として活動しているんだ。その間に美弥音の生体エネルギーは少しずつではあるが吸収していた。だから、衰弱していたんだ。食事を取っているにもかかわらずな。」
「あっ!」
「恐らく、先週の事件で手駒に使ったデストロイアはもうショッキラスにやられているだろう。そして、美弥音を犯した連中も片っ端から殺して行って……」
「ショッキラスはかなり強力な力を得ていると?」
「間違いないよ。それは。そして恐らく、お前の先輩を殺したら、用済みと化した美弥音も……」
「寄生虫ショッキラス、世莉1人だと……」
「そう、私が心配したのはそこさ。いくら結界の力を有している世莉でも、未知の力を持つショッキラス相手にかなり苦戦するだろうよ。」
「翔子さん、もっと飛ばせませんか?」
「……仕方ない。円藤。少し目、閉じていろ。」
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