第一章 寄生思念
……私は……本当はこんな事望んでいない……
……私の日常を……返して……
……今の私は私じゃない……
……でも……
……あいつらに死んで欲しいと願ったのは私……
……それは曲げられない事実……
……助けて……助けて……助けて……
……助けて……
一ノ瀬美弥音-2
「………………」
街郊外のショッピングモールのエントランス。そこのベンチに座って眠っていた美弥音。もう、真夜中になっていた。
「…………」
頭が痛い。お腹も痛い。全身が痛い。こんな時、美弥音は食事を採る事によって痛みを抑えてきた。しかし、美弥音が痛みを抑える為に行ってきた事はもう一つある。
「また……殺さなきゃいけないみたいね……」
美弥音は外に出ようと出口を見る。すると、自分ではない、誰かが立っていた。美弥音は、その人影を見た瞬間、何かを感じた。自分と同じ、普通じゃない感じ。
「やはりここか。一ノ瀬美弥音。」
「あなたは……誰?」
「お前と同じ種類の人間……いや、お前は普通の人間だよ。お前に「G」の力は無い。」
「それは違います……私は……」
「記憶がめちゃくちゃになっているようだな。じゃあ教えてやる。お前の力の正体を。」
世莉は指先に複数の小さな結界を作った。そして、その結界を束ね、1つの結界を美弥音に向かって放った。
「はっ!?」
その場でかがみ、回避した美弥音。しかし、結界は確かに何かに命中した。
「そら……もう姿を隠せないだろ?出て来い!寄生虫!!」
キキキキキ……
「そう、私の力の正体ハコレデスヨ……」
美弥音の背中に、何かの姿が浮かび上がってきた。大きな虫のような生物だ。フナムシのようにも見える。それが、翔子の言っていた黒幕だ。
「寄生虫ショッキラス。珍しい寄生タイプとしての「G」だ。これまでの事は全て、お前が一ノ瀬美弥音に力を与えていた結果に過ぎないんだ。そうだろ?」
「私は、確かに幼少の頃からオカシナ力ヲ得テイタ……」
「チッ……一ノ瀬美弥音の体をもう自分のモノにしているな……」
両腕と両足に結界を張った世莉。もとより、寄生虫だからと言って容赦するつもりは無かった。美弥音に向かって走り出す。
「無駄です……」
美弥音は手の先から波動を放った。それは、世莉の力では抑えきれないほどのパワーだった。それを察知した世莉は横に飛んで回避した。
「チッ……ショッキラスの奴、何人食ったんだ?」
「人だけじゃない。私はデストロイアやレギオンも手にかけました。」
「何だと!?」
「寄生シテシマエバ後ハ容易イ。全テエネルギートナッテイル。」
「なるほど……寄生虫だからと言って甘く見ていたらしいな。」