‐Getter‐ 能登沢憐太郎のある一日
「・・・そうなんだ、白虎も朱雀も見つけるのは大変そうね・・・うん、特におかしいところはないわ。爾落のエキスがなくても日常生活に支障はないみたい・・・ふふっ、レンの力が代わりになってるからかな。じゃあ、そろそろ切るね・・・おやすみなさい。」
それからすぐ時間は経って、もう寝る時間。
ちょうど今、紀子と験司兄ちゃんとの電話が終わった。
験司兄ちゃん、これからは怪しまれない程度にここに来てくれるって言ってた。
昔みたいにいつも一緒じゃないけど、験司兄ちゃんとの日々も戻って来てくれただけでもうれしい。
明日行けば休みだし、明日も頑張ろう!
そうだ、紀子にバイラスシリーズを教えてみようかな・・・いいよね。僕も紀子の影響でアニメに詳しくなってきてるし・・・
「おまたせ。電話終わったよ。それから・・・レ、レン。」
「んっ?どうしたの、紀子。」
何故か顔を赤くして、もじもじしながら紀子が僕に何か言おうとしてる。
可愛い・・・じゃなくて!何だろう?
「・・・今朝、拓斗君と透太君に言われて、思ったの。いつまでも・・・返事をしないわけにはいかない、って。」
「っ!?そ、それって・・・」
「私が巫子じゃ無かったら、今すぐ『はい』って言えるのに。私が普通の女の子なら、何の迷いも無くレンの胸に飛び込めるのに・・・でも、それはもう変えられない。だから、いつまでも一緒にいれるって約束が出来ないの。もし今日約束して、明日私が死んでしまったら・・・」
「紀子・・・」
「・・・それでも、もし私のわがままがあと一つだけ叶うなら・・・!私はレンと、死ぬ時も一緒にいたい。
私の人生が終わるその時まで、貴方の恋人でいたい・・・!」
「・・・じゃあ、僕もわがままだよ。だって、君が嫌だと言っても僕は死ぬまでずっと君と離れたくない。君のそばにいられないなら世界のどこへだって行って、地球が駄目なら月に行ってやるって思ってるもん。」
「レン・・・」
「大丈夫。言葉にしなくても、僕と君が同じ思いなのは分かるよ。それに、君が巫子になってくれてきっとガメラも嬉しいはずさ。まっ、君と別れたあの日からいくらでも待つつもりだったしね。」
ただ、思ってる事を言っただけ。
嘘なんて、一つも無い。
でも君は、そうして幸せそうな笑顔をしながら泣いてくれる。
君はありがとうって言うかもしれないけど、それが言いたいのは僕の方なんだ。
君が、紀子がそこにいる。
それが僕の、一番の幸せなんだから。
「・・・ごめんね。でも、ありがとう、レン。そうね。きっと、私が巫子になった事には必ず意味がある。それが分かる日まで、結論は出せない。
けどいつか、結論が出せて本当にレンと一つになれる日が来て欲しいから・・・今は、これを受け取って・・・」
・・・その瞬間、僕の時間が止まって・・・
気が付いたら、朝になってた。
「・・・えっ、レン?ちょっと、レン!どうし・・・は、鼻血!?」
急に紀子の顔が近くなって・・・僕のほっぺたに、すっごく柔らかい感じがあったのは確かに覚えてる。
それから・・・風邪じゃないのに体の火照りが止まらない。
下のベッドで寝る紀子の顔すらまともに見れなくて、今朝の朝食タイムは何でか気まずかった。
「本命は二十歳になってからかなぁ・・・」って父さんが言ってたけど、本命ってなんだろ?
とりあえず、昔の僕に伝えたいのは・・・
「いってらっしゃい、レン。」
「いってきます。紀子。」
今の僕は、超しあわせです。って事。
第一章特別編・終