‐Getter‐ 能登沢憐太郎のある一日











家に帰って、もうすぐ紀子との約束の時間。
紀子は僕と一緒にテレビの前に座って、真剣に「その時」を待ってる。




「・・・」




それにしても、紀子と再会して一番驚いたのって、紀子が超が付くアニメオタクになってた事かな。
別に嫌ってわけじゃないし、プリキュアとか見てたし、僕だってけっこうな特撮オタクだし、他人には打ち明けにくい紀子のそういう所を知れて、むしろ良かったって思ってる。
でも、まさか・・・




『いつか、アイドルの1番星になる!虹野ゆめ、アイカツ!はじめます!』




・・・僕が紀子と一緒に、女の子向けアニメを見る事になるなんて。
特撮作品は「ダイゴロウの大冒険」みたいに子供向けもあるけど、大人も見れるドラマ作りをしてるし、案外中学生とか高校生とかも見てたりするし、この「アイカツスターズ!」ってのもそうなんだろうけど・・・やっぱり、ちょっと恥ずかしい。
・・・もしかして、今朝拓斗と透太が言ってた「どきどき」って、こういう感じの事なのかな?




「がんばれ、ゆめちゃん・・・!
貴方は出来る。貴方ならステージへの恐怖を乗り越えられるわ・・・!」




まっ、みんなのイメージが変わっちゃうくらいテレビにのめり込んでる紀子は可愛いけど。






「ぽわ、ぽわ、ぷりりん、てをたたこう・・・」





晩ご飯とポケモンが終わって、夜8時。
紀子は今度はスマホゲーに夢中だ。
大事なイベントの追い込み日って言ってたけど、これは見るからに話しかけちゃ駄目そう・・・
それにしても、まさか紀子がポケモンも詳しかったなんて・・・只者じゃないオタク度だ。
僕は拓斗・透太にサッカーと特撮を教わって、師匠と仰ぐコンドウさんのサイトで特撮に詳しくなったけど、紀子もそんな感じでくわしくなったのかな?




「・・・よし、これで500位は確実・・・!あっ、ごめんね。レン。私の勝手で待たせちゃって。」
「ううん、僕は全然気にしてないよ。そうだ、紀子の知り合いにアニメが詳しい人はいたの?」
「うん。実は角歩さん・・・Gnosisの兄弟の青いバンダナ付けた方の人。あの人はかなりのアニメオタクよ。私も色々教えてもらったし・・・そうだ、兄の丈さんはレンと同じ特撮オタクなの。機会があったら話してみたら?」
「そうなの!?なんか、人は見かけによらないね。」
「あれ?それって、私にも当てはまると思うけど?」
「い、いや、アイドルやモデルさんにもオタクな人だっているし、紀子がオタクでもおかしくなんてないよっ!」
「ふふっ、レンったら冗談よ。気にしてたら一緒にアイスタ見てなんて言わないし、レンが分かってくれてはしゃぎたいくらいなんだから。」
「そ、それはよかったぁ・・・」
「でも、私にとって師匠と言えるのは『G』専門情報サイト『GALLERIA(ガレリア)』管理人のコンドウさんかな。」
「へえっ!?の、紀子ってコンドウさんも知ってるの!?」
「えっ、もしかしてレンも?それは驚き・・・」
「僕は特撮系のサイトを調べててたどり着いたんだけど・・・まさか紀子もあのサイトに行ってたなんてびっくりだよ。」
「・・・Gnosis機密事項だけど、レンにならいいか。一応口外しないで欲しいんだけど・・・実はね、このサイトはGnosisが「G」関係の情報の収集・交換所に使ってて、コンドウさんは非公式の協力者なの。情報の真偽が分からなかったり、もっと多くの情報が知りたい時にGnosisが情報を流してみて、参考にしたりするのよ。玄武が亀ヶ岡遺跡に眠ってるのが分かったのも、ここの情報がきっかけ。」
「そうなの!?特撮のページ以外のところはあんまり行ってなかったけど、行ってみようか・・・」
「それはもったいないわ!お願い、行ってみて。ちなみに私は『ユーレカ』のハンドルネームを使ってるから。」
「う、うん。」




・・・今の紀子、凄い剣幕だったなぁ。
紀子と師匠が一緒だったり、師匠がさりげなく凄い人だったり・・・驚いてばっかりだけど、こんな形で紀子と今までも繋がってたのかも、って思うとうれしい。




とりあえず、アニメのページに行ってみて・・・あっ、いたいた。紀子だ。
「小春ちゃんがいなくて寂しい!」とか「ゆずこしょう可愛かったゾ☆」とか書いてるから間違いなく今日見た話だ・・・紀子が書いたにしては結構テンション高い文だけど。
それと・・・




『俺も寂しいわぁ、小春ちゃんがおらんなって・・・アイカツ!の時に俺のだいっ好きなみくるちゃんが一時期おらんかった時も思ったけど、いなくなって分かる大切さ、やなぁ・・・
まぁ、ゆめちゃんが元気になったんは一安心やな~。でも俺としてはSKY-GIRLが・・・』




この関西弁、間違いなく師匠だ。一応。
・・・あっ、じゃあ今もし特撮ページの掲示板に書き込みしてみたら・・・




名前:アイキャンフライ
件名:こんばんわ。
すみません、突然気になったので質問します。
コンドウさんがバイラスシリーズの矢口監督を知ったのはいつでしたっけ?




これでよし。
返事が来るまで、「G」のページに行ってみて・・・うわっ、すごい!
特撮とかアニメのページより人も規模もあるよ、これ・・・!
流石はGnosisが頼りにしてるところ・・・えっ、「seki」さんと「怪獣F」さんじゃん!
ここにも来てたのか・・・しかも、かなり積極的に情報交換してる。


・【至急情報求む!】特報!四神・玄武現る!
・某大学清水キャンパスに出現!超古代より目覚めし「G」!
・某大学湘南校舎に現れた巨大な植物と、 ゼブラな電送人間!
・ストーンヘンジ地下に眠る、機械「G」の欠片!
・モーセの正体はヒト「G」だった?


ガメラの事まで書いてある・・・!
それにしても、師匠とsekiさんと怪獣Fさん、ここでも仲良しだなぁ。いっつもオフ会とかしてるのかな。
気になる記事はいっぱいあるけど、師匠のレスの早さならそろそろ返事が・・・やっぱり来てる。



名前:コンドウ
件名:こんばんわー!
おっ、フライ君やん!俺は気にしてへんからええで。
ってか、矢口監督との馴れ初めなんて、ええとこ聞いてくれるやん!
なんせ、俺はあの自主制作映画「短髪大怪獣凸ラ」の時から応援してたからなぁ~。やから「バイラスの名は」が社会現象になってくれて、ほんま嬉しいで・・・!
そや、7年前に監督が京都の大学来てた時に一緒に写真撮ったから、それ見せるわ!
今他のとこのレスと写真のモザイク加工してるから、ちょっと待っててや・・・




・・・これも間違いない、師匠だ。
なんか、色々圧倒されちゃったけど・・・師匠はとにかくすごい!って事なんだね。
流石は僕と紀子の師匠!
・・・あっ、「seki」さんと「怪獣F」さんも入ってきた。




seki:それにしても「バイラスの名は」、あれは確実に「G」絡みの事件の影響を受けて作られているっ!そうじゃなきゃデータ化した女バイラスの尖兵とのロマンス要素なんて入れないよ!

怪獣F:「電子の妖精」の都市伝説とかなり一緒ですよね。これが実在してるって信じてる俺としてはちょっとなぁ・・・

コンドウ:まぁ、そうかもしれませんけど逆にオマージュされるくらいにいい話なんは事実ですし、気にせず楽しんだらええんとちゃいます?やから今回はシリーズ最高傑作になったんですやん!

怪獣F:確かに今回観客動員数がやばい事になって、まさかの社会現象になってるからなぁ。今年の映画ランキング1位は確実みたいだし、初期ファンとしては驚きだけど嬉しいのは確かだね。

seki:あぁ、清水くんのリアルフィギュアが欲しい!あのゆるさとキモさが見事に一体化したあいつを家に置きたい・・・!

コンドウ:そういや、女バイラスの人間体の「皆住いろは」ってあの蒲生村の萌えゆるキャラの『キシンちゃん』がモデルって矢口監督に聞いたんですけど、知ってました?

seki・怪獣F:な、なんだって!?




・・・やっぱり、まだ僕は師匠達にかないそうにないや。
4/5ページ
スキ