‐Getter‐ 能登沢憐太郎のある一日











『おかあさああああああああん!!
なんで、なんでぼくをおいてくのっ・・・!!おいてかないでよおおおおおお!!』
『憐太郎・・・!大丈夫、お母さんの分まで、これからはお前を守るから・・・』
『おとうさんなんていらない!!おかあさんが、おかあさんがいてほしいのに!!なんで・・・なんでえええええええっ!!』
『・・・いらない、か・・・ごめんな、いらないお父さんで・・・いらない方が残ってしまって、本当にごめんな・・・!
けどな、憐太郎・・・それでも、私はお前を絶対守るからな・・・!』









『能登沢くん!あそぼ!』
『っ・・・い、いいよ・・・』






『能登沢くん、またひとりだね。』
『だってあいつ、さいきんあそびさそってもこねぇんだもん!つまんねぇ!』
『なんか、のとざわくんっていきなり話しにくくなったよね・・・』
『いいから、わたしたちであそびましょー!』






――・・・僕は、のりことあそびたいだけなのに・・・
おねぇちゃんは家をでて、おかあさんは天国に行っちゃって・・・
おとうさんなんかじゃなくて、のりこに、おねぇちゃんに、おかあさんにいてほしいのに・・・!
のりこ、いつになったら帰ってくるの?
いつになったら、僕のへんじにこたえてくれるの?
・・・さみしいよぉ・・・もうこんなのいやだよおっ・・・!










・・・夢、か。
いつ以来だろ、昔の僕の夢を見たの・・・
紀子がいなくなってからの僕って、それはもう暗くて話さない感じ悪いやつだったからなぁ・・・紀子との別れの辛さに、母さんの死が重なって・・・
もう心が耐えられなくて、ただただ紀子に会いたい気持ちだけだったし・・・でも。




「・・・すぅ・・・」




今はもう、絶対大丈夫。
こうして紀子が帰って来てくれたし・・・それに、紀子がいない間にも拓斗、透太、光先生がいてくれたから。
あと・・・ガメラもだね。
きっとガメラが、僕と君をもう一度会わせてくれたんだ・・・









「「いただきます。」」
「はい、どうぞ。」




あの事件から少し経って、紀子は今僕の家に居候の形で住んでる。
験司兄ちゃんがもう紀子を酷い目にあわせたくないから、偉い人にはあの事件からガメラと一緒に行方不明って形にして、一番安心出来るここにいさせたいって。
紀子のお父さんとお母さんは、Gnosisからお金を貰ったらあっさり行方知らずになったらしい。
紀子が言うには、「G」を宿す自分が不気味だから自分を捨てたらしいんだけど・・・それがほんとだったら、あんなにいい人だったのに・・・信じられないよ・・・
信じられないって言えば、何故か不思議と今までと変わらない感じだけど、もしちょっと前の僕なら毎日スキップしてたかも。
だって苦手だった父さんが苦手じゃなくなって、目の前で紀子が僕と朝ご飯を食べてるんだから。
落ち着けてるのは・・・あの事件があったからかな?
それともまだ、実感が無いからかなぁ?




「・・・レン?どうしたの?私、何かおかしい?」
「はっ!う、ううん!なんでもないよ。」
「きっと、昔紀子ちゃんと朝ご飯を食べてた時の事を思い出したんだろう?」
「も、もう!父さんったら・・・」
「ごめんごめん。だけど、憐太郎が昔以上に幸せそうに見えたのは、気のせいじゃないかな。」
「言われてみればそうね。だったらレン、あんまり顔に出てないかもしれないけど・・・私も今すっごく幸せよ。」
「うん!分かるよ、僕には!」




そういえば、これって「同棲」になるって透太が言ってたけど・・・同棲って恋人同士がする事だよね?
でも、たぶんまだ紀子とは恋人同士じゃないよなぁ・・・返事、まだ聞いてないし・・・いつになったら返事してくれるんだろう・・・
まぁ、いいや。言葉にしなくても、きっと僕の想いは紀子に届いてるって信じてる。
それに紀子が家無しなのは確かだし、験司兄ちゃんがそう言ってるんだから大丈夫・・・だよね?










「いや!意義ありっ!」
「そうだっ!問題大ありに決まってんだろ!」




登校までの道、紀子との「同棲」について拓斗と透太に聞いたら、一瞬でこう返された。
早すぎ・・・




「えっ、だからそう言う理由があるし、幼馴染みだし・・・」
「そういう問題じゃねえよっ!他のやつが聞いたらどんな目にあうかわかんねーぞ!」
「いや、こんな理由そもそも他の人に言えないし・・・」
「いいかい、レン。いくら『ませて』なくったって、家族や親戚でもない年上の女の子と一つ屋根の下で住んでるなんて、凄い事なんだ。大人だってびっくりするよ、これ。」
「レンは守田さんと家にいて、どきどきしたりしねえのか!?」
「そりゃ、ドキドキはするけど・・・昔もそうだったし。」
「・・・そうか!レンはきっと、幼馴染みの感覚がちょっと抜けてないんだ!だからぼくたちの気持ちがちょっと分からないんだ・・・!」
「だからってこの!うらやましすぎるぜ!あの時、あんなにあつーい告白!してたってのによ!」
「へえっ!?」
「「そうですよね!守田さん!」」
「わ、私?」
「おれたちは屋敷の外から聞いてましたよ、レンのあの告白を!」
「というか、聞こえて来たって感じですけど・・・それから屋敷から出てきた守田さんの、あの真っ赤な顔・・・それって守田さんがオッケーを出して、少なくとも守田さんはレンと違ってこの凄さを分かってるって事ですよね?」
「あ、あれは私が弱ってたからだけで・・・もう!拓斗君も透太君も何言ってるの!」




少し後ろから僕達の話を聞いてた紀子が、次のターゲットになった。
・・・なんか、照れてる紀子が可愛い。
僕と再会した時はどこか機械的で冷めてるみたいな感じがあったけど、家に来てからはそれがすっかりなくなった。
うーん・・・あんな紀子を独り占めみたいに出来てる僕って、やっぱり凄いのかな?




「レン、レンったら!いい加減拓斗君と透太君を止めて!」
「う、うん!もう、拓斗も透太もこれ以上紀子を困らせるなら怒るよ!」
「おおっ?最近怒ってるの見た事ないあのレンが怒るぜ!」
「聞こうか迷ってたけど、やっぱりうらやましいですなぁ~。」
「「よし、逃げろ~!」」




相変わらずの息ピッタリさで、拓斗と透太は走り去って行った。
まぁ、僕と出会った時から2人は友達だったしね。




「ごめん、紀子。2人が迷惑かけて。でも僕、ほんとは怒ってないからね。」
「うん。さっきのが冗談なのは私も分かってるよ。ただ、ちょっと恥ずかしい質問ばかりされたから、ついレンを呼んじゃった。それにしても拓斗君と透太君、コンビネーション抜群ね。」
「僕と会う前、引っ越す前に住んでた前の町からもう仲良しだったからね。2人の親がすごく仲良しで、引っ越しも一緒にここにって決めてたらしいし・・・あっ、もうすぐ学校だからそろそろ先に帰ってて。2人の事はまた家で話すから。」
「うん。じゃあまた家で・・・あと、夜6時25分までには帰って来てね?」
「あっ、そうだった・・・分かったよ。じゃあまた家でね!紀子!」




今はなるべく紀子がこの町にいるって誰かに見つかっちゃいけないから、名残惜しいけどここで一旦お別れ。
いいさ、また家に帰ったら会えるし。おっと、約束の時間までに帰らないと・・・
それにしても、拓斗と透太との出会い、か・・・
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