本編
「うぉー!いけぇー!」
「すごい・・・私達の町が、こんなにも小さいわ・・・」
「お母さんとお父さんも、何処かにいるのかなぁ・・・?」
「・・・あっ、おれ達の学校だぜ!透太!」
「ぼく達の秘密基地に、いつものお菓子屋さん・・・あれ、ぼくの家!」
そして、つがる市上空。
少年少女達はガメラの大きな掌に乗り、空の旅を楽しんでいた。
いつもなら見る事の無い、空中から見た住み慣れた町を一望しながら、彼らは口々に喜びを叫ぶ。
「・・・え、えっとさ、紀子・・・」
そんな中、2人っきりでガメラの右手に乗る憐太郎が急に顔を赤らめ、動揺し始めた。
異変に気づいた紀子は、すかさず憐太郎に話し掛ける。
「どうしたの、レン?」
「い、いやさ・・・ちゃんと紀子から、僕の告白の返事を聞いてないな、って思って・・・」
一度目ははぐらかされ、二度目は言う前に邪魔が入ってしまった、憐太郎の思いの返事。
彼の言葉を聞くや、紀子の顔も薄く赤みを帯び、少し下を向く。
「わ、分かってはいるけどさ・・・けど、紀子の口からちゃんと聞きたくて・・・」
「・・・駄目。」
「えっ?」
「その・・・拓斗君に透太君、それにあの子達もいるし・・・だから、駄目。」
「ええっ、そんな!」
「言葉にしなくても、私の気持ちは分かっているんでしょ?だから・・・もうちょっと、後で返事してもいい?」
恥ずかしそうにちらちらと憐太郎を見ながら、紀子は憐太郎の三度目の質問を保留にした。
お互い、宿屋での一幕はどうも勢いがあったからと伺える。
「・・・ちぇっ。」
またも返事が聞けず、少々いじけた様子の憐太郎をもう一度だけちらりと見た紀子は、自分にしか聞こえないくらい小さな声で、こう呟いた。
「・・・好きよ、レン。世界中の誰よりも。」
グォウウウウウ・・・
掌にある少年少女の思いを見守りながら、ガメラは悠然と空を飛んで行く。
「G」としてでは無く、四神の玄武としてでも無く。
かつて憐太郎と紀子と共にいた、掛けがえの無い彼らの友達の「ガメラ」として、今ガメラは存在しているのだ。
こうして再誕した、2人の守護神・ガメラ。
やがて、誰もがガメラの事を「守護神」と称える日が来るが、それはまた先の話・・・
ヴォウァァァァォォオン・・・!
第一章・終