本編





「・・・紀子、大丈夫?」
「大丈夫。私もガメラも・・・レンのお陰で助かったわ。」
「じゃあ、あいつを倒そう。僕達の町を荒らした、あいつを!」




ガメラとシンクロするかの如く、憐太郎は鋭い眼差しでクモンガを睨み、勾玉と紀子の手を握る掌の力を強くする。
彼のクモンガへの静かな怒りを感じた紀子は深く頷き、強く掌を握り返した。




「・・・うん!」




するとその時、勾玉の光がこれまでに無いまでに強くなり、2人は緑の閃光の中に消えた。
それと同時にガメラの紋章が力強く輝き、紋章からほとばしる炎がガメラの全身を包み込んで行く。






「拓斗・・・ガメラ、見るからにとどめを差しそうな感じだよね?」
「あぁ!行けぇ、ガメラ!」
「そんなクモ野郎、やっつけちまえーっ!」
「負けないで、ガメラ!」
「頑張って、ガメラさん・・・」




拓斗と透太、それに少年達も今まさに全力を出そうとするガメラを応援する。
彼らの思いに答えてか、ガメラを包む炎は更に勢いを増した。




グォウウウウウ・・・



燃え盛るガメラに自らの身の危機を感じたクモンガはおずおずと後ろへ引き下がって行くが、ガメラの眼光はクモンガを捕らえて逃さない。
やがてガメラは口を開け、全ての炎を口の前に移動させ、頭部と同じ位に大きな火球を形成させる。




「ブレイ・インパクトーッ!!」




そして憐太郎の叫びと共に、ガメラは紅蓮の火球「ブレイ・インパクト」を発射した。
火球は薄い炎の筋を纏いながらクモンガに向かい、逃げる間も与えずにクモンガに直撃する。




キュキャッ・・・!




クモンガの体は憐太郎達の思いの炎に燃え尽き、跡形も無く爆発した。




「・・・勝った!」
「やったぁっ!」




ヴォウァァァァォォオン・・・!




ガメラは天を仰ぎ、勝利の咆哮を町中に響かせる。
それを終えると後ろへ振り返り、収まった光の中から出て来た憐太郎と紀子を見つめた。



「ガメラ・・・おかえりなさい。」
「レン・・・一緒に戦ってくれて、ありがとう。貴方がいなかったら、きっとあの『G』には勝てなかったわ。」
「ありがとうを言うのは、僕の方さ。君とガメラがまた戻って来てくれただけで、僕はこれ以上に嬉しい事は無いんだから・・・」



もう戻って来ないと思っていた、憐太郎と紀子とガメラのいた日々。
形こそ変わっても、そこにある事を憐太郎と紀子は心から喜びながらガメラを見上げ、ガメラはそんな2人を愛おしげに見守っていた。



「「レンー!」」



と、そこへ拓斗と透太が少年達を連れて走って来た。



「拓斗、透太!」
「もう、また2人の世界に入っちゃってさ。」
「羨ましいぜ、こんちくしょう!」
「へへっ・・・ごめんごめん。」
「君達も、無事で良かったわ。」
「助けてくれて、本当にありがとうございました。」
「あの・・・お姉さんは、ガメラさんとお友達なんですか?」
「ええ。小さい頃から、ずっとね。」
「そうなんですか・・・いいなぁ。」
「俺も羨ましいなぁ~。でもまっ、俺達にもリチャードって言う自慢の友達がいるからな。」
「それもそうだね、兄さん。」




「それにしてもガメラ、でっかくなったよなぁ。」
「うん。でもガメラの中には、僕が昔飼っていた亀の『ガメラ』がいるんだ。」
「えっ?それはどういう・・・?」
「とりあえず、ガメラはガメラって事さ。」




グォウウウウウ・・・




するとガメラは憐太郎達に向けて両手を伸ばし、巨大な掌を広げた。




「んっ?どうしたんだ、ガメラ?・・・えっ、ほんとに!」
「ガメラの言ってる事が分かるのか、レン?」
「紀子の勾玉を通して、伝わってくるんだ。ガメラ、僕達を乗せて飛んでくれるって!」
「マ、マジか!」
「君達も乗っていいって言ってるわ、ガメラ。」
「ええっ!?」
「や・・・やった!」
「よっしゃあ!ありがとな、ガメラ!」
「本当に、いいんですか?」
「きっと、ガメラの方が乗せたいのよ。ガメラは子供が大好きみたいだから。さっ、行きましょ。」
「「「はい!」」」




憐太郎と紀子が右手に、拓斗と透太と少年達が左手に乗った事を確認したガメラは足の噴射口からジェットを吹かし、足を甲羅の中にしまって宙に浮き、町の方へと飛んで行った。
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