本編





「凄い・・・本当のガメラって、こんな姿だったのね・・・」
「・・・かっこいい。なんてかっこいいんだよ、ガメラ。僕が知らない間に、こんなにかっこよくなっちゃうなんて!」
「それはきっと、レンのお陰よ。レンが力をくれたから、ガメラは本当の姿になれたのよ。」
「うん・・・ありがとう、紀子。」




キャキャァッ・・・




しかし、彼らに再会を喜んでいる間は無かった。
ガメラによって弾き飛ばされたクモンガが体勢を立て直し、今度はガメラに敵意を向けていたからだ。




「あっ、『G』が!」
「ガメラ!あいつを倒すんだ!」




グァヴウゥゥゥヴァァン・・・




ガメラは再びクモンガの方向に向き、クモンガを睨む。
昨日での戦いの時では食い止めるのが限界だったが、完全体になった今は逆にクモンガを圧倒するオーラを放っており、クモンガも一瞬たじろぐ。




「紀子・・・今でもガメラが傷付いたら、君も傷付くよね?」
「うん・・・」
「だから・・・僕とガメラは、絶対に君を傷付けなんてさせない。」
「大丈夫。レンとガメラがいてくれれば、私はどんな事でも耐えられる。」




ヴォウァァァァォォオン・・・




「じゃあ・・・行こう!」
「うん!」




ガメラが吼えたと同時に、クモンガが口から毒針を発射する。
狙うはガメラの喉笛だが、それをガメラは頭を甲羅の中にしまう事で回避し、すかさず頭を出して口から光線のような火炎を噴射した。
昨日の時とは比べ物にならない程の威力になった火炎噴射はクモンガの体を焼き、高温に弱いクモンガを苦しめる。




キュキャッ・・・




苦み紛れにクモンガは毒針を乱射し、それを避ける為にガメラは火炎噴出を止める。
首を引っ込め、手で掴み、全ての毒針をガメラは受けないように行動するが、それはこの体が自分だけのもので無いと、分かっているからだった。




「あいつ、さっきから毒針ばっかり!これじゃ、攻撃出来ないよ!」
「ガメラ・・・私が傷付かないように・・・」




キャキャァッ・・・




しかし、クモンガはガメラが再び体勢を整えるのを待ってはくれなかった。
ガメラが下を向いた隙にクモンガは高く跳躍し、一気にガメラに迫る。




「あっ!」
「危ない!」




爪を突き立て、クモンガがガメラに取り付こうとしたその瞬間、ガメラの両肘から突然、刃の様に鋭く尖った骨が突出した。
ガメラは大きく右手を振りかぶり、そのまま肘打ちの如く骨の刃「エルボー・クロー」でクモンガの体を切り裂いた。
形成逆転の一撃を回避出来なかったクモンガは右足を一本失い、地面に倒れ込んで悶え苦しむ。




「やった!一発逆転だ!」
「あれは、言うならガメラの暗器ね。あんな武器まであったなんて・・・」




さながらボクサーが相手のブローをかわして、すかさずカウンターパンチを放ったかのようなこの逆転劇に、ついつい憐太郎は飛び上がって歓喜する。
紀子も動作でこそ見せていないものの、そっと胸をなで下ろし、ガメラの一撃に感心していた。




グォウウウウウ・・・




やがてクモンガは動かなくなり、ガメラは慎重にクモンガに近づく。
警戒を解いていない証として、肘のクローはしまってはいないが。




・・・キャァ・・・!




ガメラの顔がクモンガに向いた、その刹那。
クモンガの口から一本の毒針が発射された。
奇襲攻撃を察知していたガメラは左手の肘を翻し、クローで毒針を横へ弾く。
が、これこそがクモンガの狙いであった。




キャキャァッ・・・




クモンガは毒針を放って間も無く、今度は糸を発射した。
二段構えの奇襲攻撃に対処が追いつかなかったガメラは糸を回避出来ず、粘着の糸を顔に受けてしまった。




グォアアアウゥゥ・・・




「うっ・・・!」
「ガメラ!紀子!」




目に、口にまとわり付くクモンガの糸にガメラは後退しながら苦しむ。
当然ガメラの影響は紀子の体にも現れ、紀子は目をつぶって頭を抱える。
ちょうど、ガメラが糸を受けている部分だ。




「・・・前が、見えない・・・!顔中に嫌な感じがする・・・!」
「あいつ・・・さっきからずるい攻撃ばっかり!負けるな!ガメラ!」




ガメラをマンションの近くまで退き下げたクモンガは起き上がると、今度はガメラの両肘に狙いを定めて糸を吐いた。
近距離戦の必殺技、エルボー・クローを封じようと言う作戦だ。




「あっ、ガメラ!」
「ちくしょう!負けんな、ガメラ!」




ガメラはこの状況をどうにかしたくとも、膜のように絡み付いた糸で視界を奪われたこの状態では、回避しようもなかった。




「っ!次は、両手・・・このままじゃ、武器が使えない・・・!」




ガメラと苦しみをも共有し、右手で左手を掴みながらも紀子は霞んでまともに見えない筈の目で、ガメラを見つめ続ける。
そんな紀子の左手に、そっと温かい感触が現れた。




「・・・レン?」
「大丈夫だよ、紀子。僕がいる・・・僕が君の、ガメラの力になる!」




紀子の左手には、憐太郎の右手が添えられていた。
彼女の左手を包み込むその手には、心から紀子とガメラを気遣う彼の強い思いが込められていた。




「・・・温かい。ねぇ、ガメラ。貴方も同じ所に感じてるでしょ?レンの、熱い思いを・・・!」




と、その時ガメラの左手に炎がたぎった。
まるで憐太郎の思いが具現化したようなその炎は手に絡み付いた糸を瞬時に焼き尽くし、糸を伝ってクモンガにも炎が移る。
慌ててクモンガは糸を止めたが、既にクモンガの口は中まで焼け、激しく煙が出るその口はもう、糸や毒針を使う事は出来なくなった。




「よっしゃあ!」
「これで、形成逆転だ!」




ガメラの左手の炎はまるで意志を持つかのように移動し、顔に付いた糸も全て焼き払う。
更に炎はそのままガメラの全身を包み、胸の紋章が光ると同時にガメラの体内へ取り込まれて行った。




ヴォウァァァァォォオン・・・




クローを肘に仕舞い、ガメラは瀕死のクモンガを睨み付ける。
クモンガを完全に怯ませるガメラの姿は、先程よりも力が増しているようにも見えた。
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