本編











「・・・これが、僕とガメラとの出会い。」
「・・・」
「紀子?」
「・・・えっ、う、うん。凄い話だったから、つい・・・」
「まぁ、確かにこんなの有り得ない話だよね。だけど、こうしてガメラが目の前にいる事が一番の証明さ。」
「うん、そうね。これ以上の証拠って無いよね。」
「守田さんがそんな事しないと思いますけど、ガメラに関する事は秘密にして下さい。」
「おれ達にとってレンもガメラも大事なんです。だからお願いします!」
「だ、大丈夫よ。私にとっても、レンは大切だから。絶対言わないわ。」
「「ありがとうございます!」」
「ありがとう、紀子。よかったな、ガメラ。また仲間が増えたぞ。」




自分の事が大切、と言う紀子の言葉を聞いてつい照れながら、ガメラの頭を撫でる憐太郎。
ガメラもようやく憐太郎の方を向いてくれたが、それでもガメラは紀子の事を気にしていた。










夕刻、秘密基地を出た4人は帰路に着いていた。




「いや~、今日は本当に良かったね。」
「あぁ。守田さんって言ういい最高のサプライズがあってよ。」
「そ、そんな・・・」
「守田さん、次帰って来た時はまた一緒に遊んで下さいね。」
「えっ、紀子なら明日もいるんだから、明日も来れば・・・」
「馬鹿やろう・・・」




そう言いながら拓斗は透太と共に、まるで朝の時のように憐太郎を少し遠くへ連れ出す。




「2人っきりの時間を取るほど、おれ達も野暮じゃねぇよ。」
「な、なっ・・・」
「多分、守田さんにまだ本当の気持ちを言えてないでしょ?だから明日、頑張って言うんだよ。」
「えっ、あっ・・・」




動転する憐太郎を引っ張り、2人は紀子の元に戻った。




「すみません、ちょっと失礼しました~。」
「う、うん。」
「じゃあ、ぼく達はこの道から帰ります。こっちの方が近いので。」
「そう。じゃあ、また会いましょうね。」
「はい!レン、明日は頑張れよ~!」
「え・・・じ、じゃあ、あばよ・・・」
「「あばよ!」」




やや不敵な笑みを浮かべつつ、いつものやり取りをして2人は右寄りの道へ去って行った。
2人に手を振る紀子をよそに、憐太郎は落ち着かない様子だ。




「面白い2人だったね、レン・・・って、どうしたの?」
「い、いいや。何でも無いよ。」




憐太郎と紀子もまた、再び能登沢家に向かって歩き始めた。
しかし、憐太郎の方はようやく冷静になったと思えば、今度は考え事を始めた。




――・・・いきなり拓斗と透太があんな事言うからびっくりしたけど、よくよく考えれば助かったかも。
明日は、今度こそ紀子に告白しようって決めた日だし。
だから今日は何にも考えずに楽しもうって思って2人やガメラに会わせたけど、他になんか・・・あっ、そうだ。
昔、僕と紀子がよくやってた事って・・・




何を思ったのか、少々赤面しながら憐太郎は紀子の横顔を見つめる。
そして彼は、彼女に話し掛けた。




「あっ・・・そうだ、紀子・・・」
「ん、どうしたの?」
「今日、晩ご飯が終わった僕の部屋に来て。ち、ちょっと大事な話があるんだ・・・」






「・・・うん、分かったわ。じゃあ・・・」




夕食後の能登沢家。
階段の傍では紀子が誰かとの電話を終え、携帯を閉じている所だった。
そのまま紀子は階段を上がって憐太郎の部屋に向かい、戸をノックする。




「レン、入るわよ。」




戸を開くと、憐太郎が後ろを向いて部屋に立っていた。
緊張しているからか、整列する時のように両手を背中で合わせている。




「あ・・・あのさ、紀子。」
「どうしたの?昨日からレン、時々変よ?」
「そ、それは多分、紀子が僕の知ってる時とだいぶ変わってたからだと思うよ。僕も一生懸命、昔みたいに紀子と接しようとしてるんだけど、どうも上手くいかなくて。」
「私、そんなに変わったの?」
「だ、だって昔なら何のためらいも無く君の顔を見れたけど、今はちょっと心の準備がいるくらいだよ?こう、いい意味でだけど、顔とか感じとかが凄くて・・・それに、僕よりちょっと背も高いし・・・」
「・・・そう。」
「そ、それでだけど、さ・・・」




ようやく憐太郎は振り返り、紀子の目を見る。
じっと見ていれば吸い込まれてしまいそうな、そんな魅力が紀子にはあった。
しかし、それに従っていては言葉を失ってしまう事も知っている憐太郎は何とかそうならないように心で抗い、紀子にこう告げた。




「昔みたいに・・・一緒に寝ない?」




何とか絞り出した、本心。
明日やろうとしている事は、これを軽く超える事なのか・・・と痛感しながら、憐太郎は精一杯のごまかしの笑顔で紀子の返事を待つ。




「・・・うん、いいよ。」










真夜中、憐太郎の部屋の二段ベッドに2人の姿は無く、床に敷かれた布団の中で寄り添い眠る、憐太郎と紀子の姿があった。
流石に昔と同じようにはいかないが、年頃の少年少女では到底出来ない事なのも確かであり、それは月日が経ちながらも2人がまだ「仲良し」である証明だった。




「・・・」
「う、うぅ~ん・・・」










翌朝、能登沢家の居間で3人は朝食を食べていた。
学校が休みである今日はいつもなら寝ている憐太郎だが、今日で紀子が東京に帰ってしまう以上、そうはいかずに珍しく早起きしている。




――・・・昨日はぐっすり眠れたなぁ。
ここ数日はあまり寝れなかったのに、これって久々に紀子と一緒に寝たから・・・かな?
お風呂上がりでシャンプーの香りがしたから最初はドキッとなったけど、すぐに寝てたし・・・




無意識に紀子の事を見てしまい、赤面する憐太郎。
この3日間、もはや何回憐太郎がこの状態になったか分からないが、今回は昨夜に並ぶ程の赤面度だった。




――・・・や、やっぱり今日の事考えたら、変に緊張しちゃうな・・・


「・・・?」
「どうしたんだ、憐太郎。箸が止まってるぞ?」
「な・・・なんでも無いよ。ちょっと考え事してただけ。」


――・・・よし、今日こそやるぞ・・・!






正午、憐太郎は再び紀子を自分の部屋に呼び出していた。
これから憐太郎にとって、一世一代の出来事が始まるからだ。




「レン、話って?」
「あ・・・あっ、あのさ、紀子・・・この前、君が東京に行った日に、僕が言ってた事があるって、言ったよね・・・」
「うん。」
「そ、それについて、なんだけど・・・やっぱり、は、はな・・・」
「はな?」
「は・・・話す事にしたんだ!僕は、僕は・・・君の事が・・・!」
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