本文
「そうやって出会って、紺碧の宿主になったの」
「説明はしょりすぎじゃね??!!!」
『【五月蝿い】』
「泣いていい?!」
白い巨大な石の姿をした御神体――モスラ(最珠羅)と対話し、尚且つソレを吸収した30歳の肉体は20歳そこそこの外見へ若返り、芙蓉は其の力を得た。
黄と違ったのは、一瞬で全てが終わった事くらいだろうか。やはり外見は成長せず、公の立場で生活していく上での苦労は黄よりあるだろうが。
芙蓉の授かった能力(G)は、やはり黄のモノと少し似ていた。
最珠羅(紺碧)と御神体を吸収した巫子の能力
命を司り全てを巡るモノ――海(水)の能力は、水が存在する場所で最大の力を発揮する力
病や怪我は勿論あらゆる穢を浄める治癒(浄化)の能力
何かを与えたい――与えられたいという生物の欲求を取り入れ己の糧とする能力
実質守護神と称されるのは大地と守りを司る婆羅護吽であって、魏怒羅は戦闘神、最珠羅は慈愛神と称されるのもこれを聞けば納得しようというものだ。
黄昏と紺碧、そして現在どうしているか預かり知れない婆羅護吽には、やらなければならない事があるらしい。
だが曰く、危急を要するものではなく、それこそ自分たちの必要性が現れるか否かは4人目――呉爾羅に掛かっているのだという。
「まぁ、俺も黄昏だけの説明じゃイマイチしっくりこなくって、それでソイツ…紺碧からも話が聞きたくて探し回ってたんだけどよ」
「じゃあ婆羅護吽は探さないの?」
「今までの経緯を考えると日本に本体なり依代か俺らみたいな"G"がいると思うんだが…
別に今すぐ探す必要は無ぇんだよな」
「"刻が来るまで"
2人共そう言ってたじゃない。
私もそう急ぐ必要は無いと思うわ」
実年齢が今年で不惑の芙蓉も、黄同様に「若作りの東洋人」ではこれ以上は済まないだろう。
目下の問題は聖獣たちではなく不老の肉体を得た人間側の社会的立場である。
2010年以降から(公にはされていないだけでその前から同種の事件はあったらしいが)続出し始めた"G"関連の騒動が起こる度、怪獣や犯罪者に該当しない能力者も爾落人も、ただそれだけだというだけで迫害じみた扱いを受けている。
それは一種、古代から近代までヨーロッパで行われていた"魔女狩り"に近いものに発展するという国も確かに存在する。
黄が滞在してから3週間が経過した頃、川(国境)を挟んだ向こう――ロリシカの方で"何か"が起こっている事を、黄昏の能力は捉えていた。
当然宿主である黄もソレを悟り、黄昏から伝えられた紺碧――自動的に芙蓉にもそれが伝わった。
「また人と人とが傷付け合っているのね…」
「…俺にとってはどうでもいい話だ」
『とても元・傭兵の台詞ではないな』
「うっせーほっとけ!!」
金髪を掻き回して川とは反対方向へズカズカと歩いていく黄。
それを溜め息を吐きつつ、作業を再会しようとした芙蓉に、今度は―――――
銃声、それを身体に受けた人間の悲鳴、流れた血で紅く染まる川に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図。
黄の脳裏に、直接それが浮かんで来た。
それは"天空"を司る黄昏が見せる、現在進行形で行われている事実。
仮にも傭兵業で似たような光景を作った事もある身なので、間違っても軽々しく非難出来る立場では無いが…
「…んのバカッ!!」
撃たれている人々――国境である川の渡河という不法出国で国を抜け出そうとしているロリシカの人々――彼らを助けようと、無謀にも川に入って行く芙蓉の姿がそこにはあった。
水が伝えて来た虐殺の光景に目を背ける事なんて、私には出来なかった。
後先の事なんて頭に浮かばなかった、ただひたすら、彼らを助けようとその一心だけで走り出していた。
例えそれが人として存在出来る期間に終止符を打つモノだとしても―――
※※※※※※※※※※※※
検問所から5㎞、難民キャンプから10㎞、それぞれ直線距離で離れた川の上流で、その光景は繰り広げられていた。
ベネズエラ側としては渡河しきれなければ難民を保護する事が出来ず、目の前で虐殺が行われても手も足も出せない有様だという。
そんな非道い状況にいつまでも耐えれる筈もなく、芙蓉は彼らを一人でも助けようと川へと入って行く。
水深は浅いが川幅がかなり広く、次々に人々が倒れて行く。
泣き叫ぶ子供の服に手が触れた時、目に入ってしまった。対岸からはっきりと自分たちへ向けられている銃口が。
とっさに子供に覆い被さり、水面下に身を沈ませようとした瞬間、銃弾がこちらへ飛んで来る。
せめて自らの身体で以って庇おうとするが、その直後
金色の光が目の前に立ち塞がっていた。
「説明はしょりすぎじゃね??!!!」
『【五月蝿い】』
「泣いていい?!」
白い巨大な石の姿をした御神体――モスラ(最珠羅)と対話し、尚且つソレを吸収した30歳の肉体は20歳そこそこの外見へ若返り、芙蓉は其の力を得た。
黄と違ったのは、一瞬で全てが終わった事くらいだろうか。やはり外見は成長せず、公の立場で生活していく上での苦労は黄よりあるだろうが。
芙蓉の授かった能力(G)は、やはり黄のモノと少し似ていた。
最珠羅(紺碧)と御神体を吸収した巫子の能力
命を司り全てを巡るモノ――海(水)の能力は、水が存在する場所で最大の力を発揮する力
病や怪我は勿論あらゆる穢を浄める治癒(浄化)の能力
何かを与えたい――与えられたいという生物の欲求を取り入れ己の糧とする能力
実質守護神と称されるのは大地と守りを司る婆羅護吽であって、魏怒羅は戦闘神、最珠羅は慈愛神と称されるのもこれを聞けば納得しようというものだ。
黄昏と紺碧、そして現在どうしているか預かり知れない婆羅護吽には、やらなければならない事があるらしい。
だが曰く、危急を要するものではなく、それこそ自分たちの必要性が現れるか否かは4人目――呉爾羅に掛かっているのだという。
「まぁ、俺も黄昏だけの説明じゃイマイチしっくりこなくって、それでソイツ…紺碧からも話が聞きたくて探し回ってたんだけどよ」
「じゃあ婆羅護吽は探さないの?」
「今までの経緯を考えると日本に本体なり依代か俺らみたいな"G"がいると思うんだが…
別に今すぐ探す必要は無ぇんだよな」
「"刻が来るまで"
2人共そう言ってたじゃない。
私もそう急ぐ必要は無いと思うわ」
実年齢が今年で不惑の芙蓉も、黄同様に「若作りの東洋人」ではこれ以上は済まないだろう。
目下の問題は聖獣たちではなく不老の肉体を得た人間側の社会的立場である。
2010年以降から(公にはされていないだけでその前から同種の事件はあったらしいが)続出し始めた"G"関連の騒動が起こる度、怪獣や犯罪者に該当しない能力者も爾落人も、ただそれだけだというだけで迫害じみた扱いを受けている。
それは一種、古代から近代までヨーロッパで行われていた"魔女狩り"に近いものに発展するという国も確かに存在する。
黄が滞在してから3週間が経過した頃、川(国境)を挟んだ向こう――ロリシカの方で"何か"が起こっている事を、黄昏の能力は捉えていた。
当然宿主である黄もソレを悟り、黄昏から伝えられた紺碧――自動的に芙蓉にもそれが伝わった。
「また人と人とが傷付け合っているのね…」
「…俺にとってはどうでもいい話だ」
『とても元・傭兵の台詞ではないな』
「うっせーほっとけ!!」
金髪を掻き回して川とは反対方向へズカズカと歩いていく黄。
それを溜め息を吐きつつ、作業を再会しようとした芙蓉に、今度は―――――
銃声、それを身体に受けた人間の悲鳴、流れた血で紅く染まる川に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図。
黄の脳裏に、直接それが浮かんで来た。
それは"天空"を司る黄昏が見せる、現在進行形で行われている事実。
仮にも傭兵業で似たような光景を作った事もある身なので、間違っても軽々しく非難出来る立場では無いが…
「…んのバカッ!!」
撃たれている人々――国境である川の渡河という不法出国で国を抜け出そうとしているロリシカの人々――彼らを助けようと、無謀にも川に入って行く芙蓉の姿がそこにはあった。
水が伝えて来た虐殺の光景に目を背ける事なんて、私には出来なかった。
後先の事なんて頭に浮かばなかった、ただひたすら、彼らを助けようとその一心だけで走り出していた。
例えそれが人として存在出来る期間に終止符を打つモノだとしても―――
※※※※※※※※※※※※
検問所から5㎞、難民キャンプから10㎞、それぞれ直線距離で離れた川の上流で、その光景は繰り広げられていた。
ベネズエラ側としては渡河しきれなければ難民を保護する事が出来ず、目の前で虐殺が行われても手も足も出せない有様だという。
そんな非道い状況にいつまでも耐えれる筈もなく、芙蓉は彼らを一人でも助けようと川へと入って行く。
水深は浅いが川幅がかなり広く、次々に人々が倒れて行く。
泣き叫ぶ子供の服に手が触れた時、目に入ってしまった。対岸からはっきりと自分たちへ向けられている銃口が。
とっさに子供に覆い被さり、水面下に身を沈ませようとした瞬間、銃弾がこちらへ飛んで来る。
せめて自らの身体で以って庇おうとするが、その直後
金色の光が目の前に立ち塞がっていた。