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三島芙蓉が通っていた大学はかなり大きな規模で、彼女が選考した医学部の他にも様々な学部や学科が存在した。
2年の時、友人に「面白いから」と引っ張っていかれた先が、校内でも奇人変人と名高かった桐生教授の考古学教室。
当然ながら医学にはカケラも関係が無かったので、初めて顔を出したそこで何故か教授に気に入られ、それでも2、3回しか顔を合わせる事が無かった(なにせ医学部棟と真逆の方向にあったので)。


大学を卒業し医師免許を取得して暫く経った頃、そんな相手から電話が掛かって来た。
自分の研究に纏わる調査の為に南極へ行くのだが、君も来ないか?と。
流石に突拍子もない話で最初は断ろうとした芙蓉だったが、この調査隊のスポンサーが医療大手の会社であり、繋がりが有るに越した事は無いと説得され(しかも何度も何度も)、芙蓉が諦め半分で折れたというのが実状だが。

往路だけでたっぷり3ヶ月も掛かった船旅の途中判明したのは、驚くべき事に調査隊隊員のほぼ全員が、直接的にも間接的にも大学で教授に関わりがあった、という事だろうか。
老若男女問わず、国際的に開かれた校風だったからか、日本人以外も数人混ざっていた。
因みに芙蓉が在学した際には黄は既に留学期間を終えていた為、この時2人は初めて顔を合わせた事になる。



南極で"G"が発見され、その後相当ごたごたした上、1人は意識不明で1人は行方不明のまま日本に戻り、帰国後も散々精密検査を受け、解放された頃にはその年のゴールデンウィークはとっくに終了していた。
その状況でとりあえず芙蓉に理解できたのは、桐生教授の調査はそれなりに満足のいく結果を出したらしいという事だけだった。



それから本当にスポンサー殿はメンバー全員の面倒を見てくれて(後に監視する為だったと判明するが)、芙蓉もWHOに所属する事になり、世界中の無医村や紛争地域等を飛び回っていた。


2015年の6月、南太平洋のある地域にて未知の病原菌が発見され、治療と治療法等の研究の為に派遣された先が、いにしえの伝説が伝わるインファント島だった。
感染経路や媒体を調べるべく島の奥地へと進み、一人他の人間とはぐれてしまった芙蓉が辿り着いたのは島の聖地、発見したのは原住民たちが崇め奉る神、そのものだった―――――
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