短編 大自在天
※宇多瀬さんの書かれた短編集「ANECDOTES」内の「守ル者 in沼津」スピンオフ作品
短編大自在天
普段なら己の能力で出来た為、他者に自分を転移してもらうという感覚は黄天にとって慣れないものだった。
力に包まれ、解放され目を開けると、そこにあるのはミステイカーの軍勢と、それに応戦する自衛隊――が見える筈だったのだが。
「コンディション悪すぎだろこれ……」
台風による強烈な暴風、そして他ならぬ雨という視界のほとんどを占める“水”によって、視界はほとんどゼロに等しい。
条件は先程とたいして変わらないが、爾落人や能力者と違って自衛隊員たちは当然普通の人間である。
攻撃の余波だけでポックリ逝きかねない。
「て訳だから、お前の力は控えるぞ」
『わかった』
黄昏の能力は普通の人間と共闘するには強すぎる。
その力の扱いに慣れればもう少しくらい手加減する事は出来ただろうが、今の黄にはまだ手に余る代物だった。
「ま、数だけの雑魚ならこれで十分か」
ぐっしょりと濡れた金髪を掻き上げ、自衛隊の指揮官を探そうとした時、
豪“雨”の中でも鮮明に見える程の強い白光がミステイカーたちの方から閃き、自衛隊が吹き飛ばされたのが見え、そちら側に慌てて駆け出した。
短編大自在天
普段なら己の能力で出来た為、他者に自分を転移してもらうという感覚は黄天にとって慣れないものだった。
力に包まれ、解放され目を開けると、そこにあるのはミステイカーの軍勢と、それに応戦する自衛隊――が見える筈だったのだが。
「コンディション悪すぎだろこれ……」
台風による強烈な暴風、そして他ならぬ雨という視界のほとんどを占める“水”によって、視界はほとんどゼロに等しい。
条件は先程とたいして変わらないが、爾落人や能力者と違って自衛隊員たちは当然普通の人間である。
攻撃の余波だけでポックリ逝きかねない。
「て訳だから、お前の力は控えるぞ」
『わかった』
黄昏の能力は普通の人間と共闘するには強すぎる。
その力の扱いに慣れればもう少しくらい手加減する事は出来ただろうが、今の黄にはまだ手に余る代物だった。
「ま、数だけの雑魚ならこれで十分か」
ぐっしょりと濡れた金髪を掻き上げ、自衛隊の指揮官を探そうとした時、
豪“雨”の中でも鮮明に見える程の強い白光がミステイカーたちの方から閃き、自衛隊が吹き飛ばされたのが見え、そちら側に慌てて駆け出した。