番外編 孤高の空


戦闘後の基地の惨状は凄まじい。
未だに消火されていない区域に放置されたままの焼け焦げた遺体、重症を負ったが助けを待つしかない兵員が戦闘の惨状さを物語っている。


「…命拾いしたな。」


仲間の整備員と基地内を歩くヴィート。皆顔を煤だらけにしている。


自分たちが助かったのは運が良かったとしか言い様がなかった。
あの時は整備員が総出で戦闘機の調整を敢行し、幸いにもハンガーに光弾は直撃せずアリゲラは離脱した。彼は煽られる焦燥感の中冷静に作業していたが、隣のハンガーが爆発四散した時はさすがに冷や汗が流れた。


「手が空いてる奴は作業を手伝ってくれ! 人手が足りないんだ!」


瓦礫の撤去作業と負傷者の救助をしている衛生兵が呼び掛けている。
ヴィートは今この瞬間に草原にでも寝転がって生きている事実を実感したかったが、この状況では何もせずにはいられない。


「行こうぜ。」


ヴィートは仲間を連れて衛生兵の現場に向かった。


一方、無事な滑走路に着陸したスコットは機体のキャノピーを開放する。スコットが戦場を生き抜いたと実感した瞬間だ。
整備員が掛けた昇降用の梯子を降りたスコットを出迎えたのは、顔馴染みの上官だった。


「よく生き残ったな。」
「マクドネル少佐!」


マクドネルも生き残っていた。本作戦ではロックウェルと同じ総合戦術指令室に詰めていたが、アリゲラ来襲に伴い的確な情報を処理し前線に発信していた。前線がそれを最大限に活用できていたかは別だが。


「アリゲラの最期はサブチャンネルで聞いたな。」
「はい。しかしまだネクストがいる。戦いは終わっていないでしょう。」


スコットは神妙な面持ちでヘルメットを取る。そして裏切られたハワードと関わった過去を置いていくかのように、機体に背を向けて歩き出した。
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