番外編 孤高の空
気が付けば、発光体だったネクストと衝突した時と同じ光の流れにいた。
あの時と違うのは、前回よりハッキリとした姿のネクストが自分と同じ目線で向かい合っている事か。
……俺は、君に感謝しなければならない。
……何故だ。
…君に寄生してから…いや、寄生されてからだ。忘れかけていた空を飛ぶ憧れを思い出した。
あの世のバルティが自分に憧れを取り戻させる為に故意にネクストと引き合わせたのかもしれない。そんな柄にもない事を今になってハワード自身が考えてしまってもいた。
……ある時から作業的に飛んでいた俺に、本来の憧れを思い出させてくれたんだ。そして文字通り自分自身で飛べた。もう、十分だ。
……十分?
……正直、2回目の変身は君に吸収される覚悟だった。爾落人であると軍に露呈した時点で、人間である事を捨てた俺は君に吸収されても良かった。
……そうか。
……俺を、人格を殺していい。君は俺に寄生し続けて好きにするといい。
ネクストはハワードの真意を探るように思慮し、沈黙が続く。先に口を開いたのはまたハワードだった。
……俺はもう、人間ではいられない。本格的に「G」として生きなければならないし、人間としての自分に未練はない。
……仲間に別れは言わなくていいのか。
……人間としてのハワード・レイセオンは死んだ。爾落人である本当の俺を受け入れる人間は以前からいない。
……私は、君に謝罪しなければならない。
淡々とまくし立てたハワードだがネクストがそれを拒むように話の腰を折る。
……私は、以前からこの世界に存在し、様々な変化を見続けてきた。その過程で「G」同士の戦闘によって多くの命が失われてきたのを見てきたが、実体を持てなかった私は傍観するしかなかった。罪のない生物に殺戮を繰り返した「G」を制止しようにも、介入できなかった事が歯痒かった。
……それならその場にいた人間か爾落人に寄生すれば良かっただろう。
……一度、試みた。その爾落人は快諾したが相性の悪さと多大な負荷によって殺めてしまっている。以来寄生を恐れた。
……だが俺には寄生した。負荷はともかく相性は良いと確信はあったのか。
……正直、確証はなかった。君と接触したのも私と同じ寄生の「G」だったからだ。
…………
……すまない。
……君のその行動が、結果的には俺にプラスに働いた。さっきも言ったが君の寄生に感謝している。気にしなくていい。
だが理由はどうあれ君はアリゲラを殺した。なら俺も殺せるはずだ。
……私には君を守る義務がある。私と接触したのがきっかけでハワード・レイセオンが死んだのなら、それは私の責任だ。
……もういい。
このような「G」に、殺してくれと発言した自分自身が馬鹿らしくなった。同時に、このような堅物の「G」に出逢えた事を誇らしくも思えてきた。
そんな事は露知らず、死を諦めたと思ったネクストは改めてハワードに問う。
……これからどうする。
……分からない。ここで自決しないとなれば、これからは軍からの逃亡生活が待っているだけだ。
……私も君に付き合おう。
……だったら勝手にすればいい。
その言葉はハワードの同意と同義だった。