番外編 孤高の空
「なんだ!?」
アリゲラの殲滅作戦が実施される本日、ラリー含むグリーンベレーの面々は訓練を中止して基地内で待機になっていた。巨大「G」に対してグリーンベレーができる事は限られるが、上層部の建前上の措置は現場で一種のシラケを生み出してしまっている。
その待機の中、突如としてフォートブラッグに衝撃と激震が走る。大地が揺れ、基地の電源が一瞬途切れた。
退屈凌ぎの賭けで腕相撲や懸垂をしていた隊員や、それを観戦していた隊員も一瞬にして任務中の面構えになる。
「外を見ろ!」
隊員の誰かが叫んだ。アルヴィンら隊員たちが窓に押し寄せる。隊員たちはそれに視線を奪われた。
「見ろよ、あれ。」
遅れて窓にやって来たラリーに、アルヴィンが場所を譲ってそれをラリーに見させる。
「あれは…」
隊員たちが見ているのは誰がどう見ても満身創痍のアリゲラと、着地しようとするネクストだった。まだ巻き上がった砂塵で視界が優れないが、アリゲラは左翼を失っているのは確認できる。
「やっぱり本当に見れるとは…」
ラリーとアルヴィン他、彼ら一部の隊員は巨大生物型「G」の遭遇は、クレプラキスタンと南極以来3度目だった。故に、とりわけ人間に近い容姿のネクストは目を引いた。
当のネクストは地上に被害を及ばさないようにゆっくり着地しながら、遥か上空からの視線を察知した。
……宇宙から視線を感じる。
……軍の衛星だな。捕捉されているんだろう。
衛星でロックされているという事は、軍がミサイルなり何らかのアクションを仕掛けてくると予想できた。砂塵で解像度が劣るとは言え、こちらの情報を収集されているのは気分が良くない。
……早急に決着を着ける必要があるらしい。
……頼もしい言葉だ。
隊員たちの視線の中、ネクストはアリゲラを見据える。そのまま両腕を曲げて前方に突き出し、電撃のような光を腕に収束させる。
「なんだあれ?」
「必殺技の類のようですね。」
ネクストは収束し終えた光を腕に圧縮するとL字に組む。腕から縦に放たれた光の帯が、フラフラの状態で立ち上がったアリゲラを襲う。その衝撃は砂塵を一気に吹き飛ばして周囲は晴れた。
アリゲラは光の帯を胸部に喰らい、苦しみながらも堪えた。しかしその容姿は光を帯びながら崩れていき、やがて光の粒子となって砕け散った。粒子は風に流れ空に映えながら還る。
パイロットたちの空を汚していたアリゲラだが、その時だけは空の情景に貢献していると、居合わせた軍人はそう感じた。それは人々を魅了する程の美しさだった。
魅入っていた隊員たちは我に帰り、勝ち残ったネクストに視線を向ける。これから敵になりうるかもしれない「G」に、隊員たちに冷や汗が流れた。
しかしネクストは佇み、徐々に大気に溶け込むようにして消滅した。まるで幻だったかのように。
その時ラリーは、ネクストの未来が視えた。