番外編 孤高の空
アリゲラが墜落した沿岸地帯。先程のイージス艦を含む艦隊の砲撃により、辺りは爆煙が絶えない。
アリゲラを襲う砲撃は威力は期待できないが、着弾の勢いでアリゲラのバランスが崩され中々飛び立てずにいた。
『ロッカー小隊。座標確認、目標を捕捉した。』
『45sec後、対地攻撃開始せよ。』
『ロッカー小隊了解。』
ロッカー小隊は隊列を組んで地表のアリゲラに接近する。
『ロッカー1、FOX2!』
『ロッカー2、FOX2!』
戦闘機からフルメタルミサイルが発つ。通常のミサイルとは違う鋭角的なシルエットのそれは、アリゲラ目掛けて勢いを殺さずに直進、さらに加速して向かう。
砲撃が止んだと同時にフルメタルミサイルはアリゲラに着弾した。しかし体表に突き刺さるばかりで貫通は果たせない。アリゲラ自身は爆破とは違うダメージに驚いてはいたがびくともしない。
『HQ、フルメタルミサイルは効果が認められない。』
『続けてD-03弾を撃ちなさい。』
『ユンカース1、了解。』
続いて爆撃機の兵器庫から発射されたD-03弾。
D-03弾はある程度飛行すると弾頭と推進部が分離し、弾頭がアリゲラの体表に接地。固定すると先端のドリル部分が回転しながらジェット推進で体表を削る。
しかししばらく回転した後、ドリルがひしゃげて大破、爆薬に誘爆してその役目を終えた。
『D-03、ダメージを認められず!』
『艦隊、砲撃を再開しなさい。』
再び艦隊の砲撃が始まりアリゲラは地上に釘付けになる。同時期に地上部隊も集結して攻撃を開始した。
アリゲラは離陸できない苛立ちが蓄積していく中、何かを感じて振り向いた。
その方向の先にいる何か。以前邂逅したそれは自分と同じ飛翔の「G」。
飛翔の「G」はこの世に自分だけでいい。本能がそれを始末しろと言っていた。
目的を見出だしたアリゲラは何かをチャージする素振りを見せ、それを一気に胸部から解放して波動として放出した。
波動はアリゲラを中心地に半球状に広がり、艦隊や爆撃機、地上部隊を呑み込んだ。
直後に各部隊に異変が起こった。
「なんだ!?」
護衛艦のブリッジ。先程まで機敏に機能していた管制システムは、電力供給を失ってダウンした。艦長は急いで艦線電話で機関室に問い合わせたが、繋がらない。同時に通信員が報告した。
「送電停止! 火器管制システムダウン!」
「HQと回線が繋がりません!」
甲板では電力供給を断たれた単装速射砲の砲身が下がる。この護衛艦と同じ現象が、他の艦にも連鎖的に発生していた。
また、周辺を飛行していた爆撃機、戦闘機は計器と電子部品の異常により墜落。
地上部隊も火器管制システムとエンジンが異常をきたし、車輌の身動きが取れなくなった。
全部隊共通の異常として通信網は麻痺、混乱の極みだった。部隊間の混乱のさなか、冷静な1人の軍人が呟く。
「EMP…」
敵部隊を無力化したアリゲラは、悠然と離陸すると基地のある方向に進路を向けた。
その場にいた軍人はHQや友軍に状況を報せる事も出来ず、ただ険しい表情で見つめるしかなかった。