番外編 孤高の空


翌日。作戦決行日であるD-dayとされた本日、基地は今年下半期一番の騒々しさを催していた。


基地周辺の警備は強化されており、一般人は誰もいない。
元々市街地近郊に建設された基地には一部を除いて一般人は誰も近付かなかったが、これにより尚更近寄り難くなったはずだ。


そんな今日は晴天でありながらも、所々に雲が立ち込めている。有視界で監視するには多少死角があるくらいか。


ミサイル発射車輌は一足先に警護の地上部隊と共に各地へ出発。
航空戦力も足の遅いAWACS機を先頭に戦闘機は順次離陸していく。
また、先に離陸した戦闘機は旋回して僚機の離陸を待ち、合流してから編隊を組んで飛行した。


整備員や待機を命じられたパイロットはそれぞれ、ハンガーから、待舎の屋上から、離陸していく精鋭部隊を見守る。彼らからしたら見慣れた戦闘機の離陸だがその視線には期待と不安が含まれていた。
その中で、ハワードだけは違う。彼だけは憐れみだけの醒めた視線を投げていた。





同基地
総合戦術指令室


ここは、有事の際に指令室として機能する重要な施設だ。各航空機の位置情報をリアルタイムでスクリーンに表示するバッジシステムを始め、最新の情報処理システムと通信システムが設置されている。


本来ならばここの長は基地司令のロックウェルだが、本作戦は違った。
今回は海軍と空軍を同時運用するため、指揮は縄張り争いを避ける目的でJCSのロドリゲス准将が執る事になっている。


つまりは、この基地を統合司令部として機能させるのである。


「第8艦隊、配置に着きました。依然アリゲラに動きなし。」


オペレーターが情報を告げる。スクリーンには東海岸を中心に北アメリカ大陸と大西洋が表示され、軍用機や友軍の現在位置がアイコンで示されていた。


『AWACS:スカイハンター。対空監視開始。』
「HQ(司令部)了解。」
『メビウスリーダーよりHQへ。メビウス中隊、作戦空域に到着。』
「HQ了解。」


準備は調った。人間にとって敵性「G」と判断されたアリゲラを殲滅するため、人間側の精鋭は連携して行動を開始する。


「海軍、攻撃を開始しなさい。」


ロドリゲスが命令した。
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