番外編 孤高の空
査問会を終えたハワードとスコット、マクドネルを除くAWACS搭乗員は昼食の為に食堂へ向かう。
ハワードを除く一同はボヤきながら歩いていくと程なくしてそこに到着した。
査問会で昼時は過ぎたが食堂は賑やかだ。管制官やパイロットは交代で持ち場につくため、軍隊の食堂はいつ行っても人がいる。
一同は券売機で食券を購入するとそれぞれのカウンターへ列ぶ。
「お、居た居た!」
同じカウンターに列ぶハワードとスコットを見つけたのはヴィートだ。彼も昼食はまだらしくカウンターに列ぶ。
やがて順番が来たハワードはカツカレーを、スコットとヴィートはカレーの食券をカウンターに渡してトレイを受け取る。それから適当に場所を見つけて座った。
「お前…そんなに大食いだったか?」
ハワードの大盛りのカツカレーを見たヴィートは疑問を呈する。
事実、ハワードは"彼"に寄生されてから食べる量が増えた。
ハワードはヴィート特有のカンの鋭さを厄介に思いながらも曖昧に返した。
「…あぁ。」
その後、3人は他愛もない話をしながら自分のカレーを口に掻き込んでいく。
「ヴィート、今もまだ戦闘機が最高の機械だと思っているか?」
ハワードは一昨日の夢でヴィートが言っていた台詞を思い出し、唐突に聞く。
「勿論だ。」
ヴィートはカレーを頬張りながら胸を張って言う。その際に口の中が見えたが他の2人は見えないフリをした。
「じゃあロボットは? 俺は技術で言えば戦闘機より上だと思うが。」
スコットは一般論の観点から至極真っ当な疑問をぶつける。
「誰がいつロボットは最高の機械ではないと言った?」
「は?」
「?」
ヴィートは間を溜める。
「ロボットこそ、究極の機械だ! 俺が生きてる間にアニメのような理想の巨大ロボットが開発されると信じている。俺に開発は無理だがきっと天才的なニッポン人科学者がそれを成し遂げるはずだ!」
「な、何故日本人なんだ?」
スコットが引き気味に聞く。ハワードは慣れているからか無表情のままだ。
「ロボットと言えばニッポンだろう! あのガンヘッドを開発した男だってニッポン人だ。」
「……」
「初めてガンヘッドを見た時、俺は鳥肌が立った。勿論スタンディングモードだぞ。世界で初めて実戦投入されたロボットに変形機能があったからな。ロボットと言っても定義は色々あるが、俺の考えている定義に近かったのがガンヘッドだ。戦闘装甲車両がロボットに変形…いや、乗り物がロボットに変形する発想こそロマンだ! これで戦闘機に変形するロボットが開発されたら俺は悶え死ぬぞ!」
「…ロボットを熱弁するところを悪いが、現実に戻ろうか。来週には新型のステルス爆撃機がこの基地から試験飛行する訳だが、整備側は何か意見はないか?」
ドン引きしたスコットは話題を逸らすがヴィートはロボット熱を維持したまま喋り続ける。
「新型エンジンにより航続距離がB-2より137%延びた事と、燃料の加工なしに飛行機雲を完全に消せるようになった事か。あぁ、確か爆撃機初のメーザー搭載だったな。開発コードのスーパーXⅢ、その名に恥じない性能だと今の時点ではそう思う。機体の素材だが……」
その後もヴィートは語り続け、スーパーXⅢの話を最初は黙って聞いていたハワードは席を立った。