番外編 孤高の空


シーモア・ジョンソン空軍基地
会議室



翌日、あの夜に出動したパイロットと士官は召集された。会議室にはコの字に並べられた机と椅子に士官が座り、奥の中央には50代の男性が座っている。


彼が基地司令のアンドレイ・ロックウェルだ。指揮下に置かれている士官や兵員からはコマンダー(指揮官)と呼ばれている。


「所属、氏名、階級を。」


ロックウェルの隣に座る大佐の女性は、マクドネル達に問う。


「AWACS:ナイトレーダー、指揮管制要員。ウェッジ・マクドネル少佐。」


大佐の女性は士官の個人情報が記された書類の顔写真を見比べながら聞く。


「AWACS:ナイトレーダー、操縦士。トレバー・ガドラス大尉。」
「AWACS:ナイトレーダー、副操縦士。ダニエル・スパンクマイヤー中尉。」
「AWACS:ナイトレーダー、レーダー要員。ショーン・クロウ准尉。」
「AWACS:ナイトレーダー、バックアップ要員。ウィリアム・ロットー曹長。」
「第09飛行分隊1番機。スコット・ダグラス中尉。」
「第09飛行分隊2番機。ハワード・レイセオン少尉。」


査問会は大佐の女性を中心に進めるようだ。その証拠に彼女が質問を始める。


「ではマクドネル少佐。5日前の事をできるだけ詳しく説明を求めます。」
「はい。10月11日0115時、AWACS:ナイトレーダーと第09飛行分隊はスクランブルの要請を受け緊急発進、UNKNOWNの迎撃に向かいました。」





数時間後、全員の証言と発光体についての意見を交わした士官達はハワードらを退室させ、査問会は終了した。


先程までUNKNOWNと発光体は同一のものかが主題で話し合い、同一であると結論付けられた。さらに発光体はハワードとスコットの証言から、今後はREDと呼称されるようになっている。
ちなみにハワードは終始、生還した奇跡のパイロットを装い、自分に寄生している「G」の事を証言しなかった。


査問会が終わった会議室にはロックウェルと、彼が呼び止めたマクドネルしか残っていない。マクドネルは個人的に調べた事項をロックウェルに報告した。


「レイセオン少尉は精密検査を受けましたが、模範的な健康体でした、ただ…」
「ただ?」
「血液検査だけは拒んだようです。」


ロックウェルは思案を巡らせた。何かを思い出そうとしているようだ。


「マクドネル、君は5年前のロリシカとベネズエラの国境付近での出来事を知っているか?」


マクドネルはロックウェルの突然の話題転換に訝しがったが、ハワードとの繋がりを感じた彼は素直に答える。


「難民の渡河騒ぎに便乗してロリシカへ侵入した男が「G」の力で兵士に殺戮を働いた。男は宙を歩くように移動し銃撃も通用せず、ロリシカ領内に侵入した時には人ではない姿になっていたとか。」
「御名答。その男はアツユキ・キリュウ氏が率いる調査隊に警護として同行していた中国人だと後の捜査で判明した。」
「アツユキ・キリュウ……南極で「G」を発見した日本人考古学者ですか。」
「その中国人はGodzillaとKingGhidorahが凍結されていた棚氷の崩落に巻き込まれるも生還した。似ていると思わないか?」
「REDと戦闘機が衝突、機体は空中分解しながらも脱出できなかったパイロットは生還。つまりコマンダーはREDが「G」で、レイセオンがその中国人のような力を得たとお考えですか。」


ロックウェルは頷く。


「外見の変化や昏睡期間、中国人と相違する要素がいくつかあるが私はその説もあると考えている。」
「しばらく監視をつけますか?」
「指示しなくとも、MP(軍警察)が数ヶ月は張り付くだろう。」


マクドネルはロックウェルが読んでいたハワードの資料を回収する。


「ハワード・レイセオン、彼は変異すると思いますか?」
「分からない。だが変異しないに越した事はないだろう。後天的能力者になった可能性が高いがどちらにせよ今は手元に置いておくのが一番だ。」

13/39ページ
スキ