本編


都内某所。ここは朝から騒がしかった。数台のパトカーが警告灯を点灯させたまま停車し制服警官が野次馬を制止させているのだ。


警官の背後には「KEEPOUT」の黄色いテープが張り巡らされ中心のブルーシートを囲っていた。殺人現場である。


殺人現場の近くに覆面パトカーが停まり二人の男が降車した。警視庁捜査一課の刑事、木内剛史とその上司伊吹龍二だ。
二人は警官に警察手帳を見せテープの内側に入ると白い手袋をはめる。
すると先行していた刑事が伊吹に気付き報告した。


「おはようございます。ガイシャの名前は田口博37歳、職業エンジニア。死亡推定時刻は深夜2時前後30分、死因は腰部切断による大量失血のようです。」
「切断…ねぇ。」


二人は遺体の前で合掌するとブルーシートをめくり遺体を確認した。


「うっ…これは同一犯ですね。」
「これで6人目か。」


惨い死体だった。被害者である成人男性の胴が何かに切断されており、周りには大量の血痕が確認できる。


木内はもう何度目かになる同じ手口の死体に吐き気を催しつつ再びブルーシートを被せる。と、それを見計らった鑑識の人間がこちらにやって来た。


「ご苦労様です。凶器はこれまでと同じく特定できませんでした。」
「…そうか。下足痕は?」
「それらしき痕跡は発見しましたが靴ではありません。」
「…分からない。ホシは一体何を…」


謎の凶器、それにより両断された惨い死体。今まで経験した事のない通り魔事件に伊吹は底知れぬ何かを感じ始めていた。
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