番外編 孤高の空


眠らない者達の物語は、ここにもある。
スクランブルのサイレンが聞こえた第4ハンガー。中に居る整備員は脳が指令を出す前に身体が動く。パイロットではないがスクランブルが人体の反射に刷り込まれている証拠だろう。


『管制室より各部隊へ通達。国籍不明機と思しき飛行物体、総数1機がEE3615方面から領空内へ向けて侵攻中。第09飛行分隊にスクランブル要請。繰り返す―――』


整備員は部隊が指名される前から戦闘機の発進用意を始める。今夜はこのハンガーに機体を置く部隊が待機している為、どの部隊が指名されようと整備側は関係がないのだ。


整備員は戦闘機の装弾数とミサイル等の兵装を確認して最終メンテナンスを済ませ、周りにあった工具や機材を片付ける。


その一方で誘導員はゴーグルとヘッドフォン型の騒音遮断器具を装着すると、赤く発光する誘導棒を手にハンガーの扉を開放した。


やがて到着した2人のパイロットは戦闘機に乗り、整備員が待避する。ハワードはエンジンを始動させると待避する整備員の中にヴィートを見つけた。
ヴィートはこちらの視線に気付いたのか気付いてないのか、ハワードへサムズアップした。ハワードも礼儀としてサムズアップを返す。


それから誘導員のサインに従いつつ滑走路に向かうと、管制塔の指示通りの手順で戦闘機は離陸した。
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