本編


「では、確かに「警察に通報」と聞こえたんですね?」


荒木の同僚に聞き込みを始めた伊吹と木内。彼らは上原が勤めていたコンビニへ赴き二手に別れ1人ずつ話を聞いていた。


「はい。これ以上は聞かない方が良いと思いまして詳しくは…」
「えぇ、十分です。十分ですよ。」
「あの…荒木は疑われているんでしょうか?」
「おや、そう思う根拠がおありで?」


荒木の同僚はやや躊躇い気味に話し出す。


「ここだけの話、荒木と店長は特別な関係だったと思うんです。」
「特別な関係と言うと…恋人同士とか?」
「そういう単純な事じゃありません。何かこう…殺人の動機になりそうな…」
「殺人の動機になるような関係…か。」
「あ…それは僕の個人的な見解なんであまり気に留めないで下さい。」
「はい。お忙しい中時間を割いて頂きありがとうございました。」
「いえ。」


木内は関係者全員の聞き込みを終え、外で伊吹と合流した。会話を聞かれないよう覆面パトカー車内に移動する。


「伊吹さん、荒木と上原との会話で「警察に通報」と聞いた店員がいました。さらに2人は特別な関係かもしれないと証言しました。」
「そうか、さっき鑑識からも連絡があったが上原の家の指紋に犯罪歴はなかったらしい。さらに荒木美香を調べてみたが前科はなかった。」
「荒木美香。現行では一番怪しいですね。」
「明日もう一度会いに行くぞ。」
「何を考えているんです?」


伊吹は悪戯を思い付いた子供の様にニヤつきながら答えた。


「指紋を採りに、だ。」
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