Date of Nativity


 終章

 彼は展開型の結晶を数発放った。光よりも早く飛んで行ったそれは彼の万全の戦いの準備だ。惑星上では、彼は常にエネルギーを結晶から吸収しなければ技の多用ができない。それを思い知らされたという意味では、あの愚か者の始末屋に感謝しなければならない部分もあると彼は認めた。
 今のところになるが、彼は満足した戦いにはめぐり合う事は無かった。そんなものだ。結局、そういう役割の下で生まれたのであればそれも然り。彼自身、戦いそのものは求めてやまない者だったから。だから殺した。

 破壊神。そんな言葉も聞いたことがあった。他者からすれば、今の彼はそう思わせるだけの風貌がある。彼の衝動と言葉の意味が合致しているのに気が付いた彼ならば、二つ名を問われた際、そう答えるだけの機知くらいは持っているだろう。もっとも、二つ名を物問う輩がいるのかが甚だ疑問でもある。
 そうして、自分が何であるかを思案していき、自分を固めていくのだ。
 そう。二つ名についた考えて考える前に彼には重大な問題があった。
 彼には名前がない。当たり前だ。皇帝に会うまで自分が行方不明だったのだから。
 その結論も彼には用意があった。簡単だ。ゴジラを倒して考える。
 地球をどうするのか。地球から出た後もどうするのか。簡単だ。ゴジラを倒して考える。
 どうあがいても、彼が前に進むにはもうゴジラを倒さなければならなくなってしまったのだ。それもまた彼らしいと言えば彼らしかった。戦闘衝動の申し子……やはり破壊神というほうがしっくりくる。戦わずして前には進めない。
 然り。
 彼の行く手はもう誰にも止めることはできない。生きる道筋を阻みたくばその者を凌駕せよ。さもなくば待っているのは虚無か死のみ。
 彼の起源たるゴジラに彼の故郷で勝ってこそ、起源の蹂躙が果たされる。
 さぁもうすぐ、もう蒼い星は近い。この長い旅路の中継地。
 恒星の惑星圏に入った。
 阻みたくば阻んでみるがいい。
 構わない。全て敵なのだから。
 そして。
 やってきた彼の敵。彼に敗北をもたらす敵が来た。
 螺旋を持つ白銀の使者がやってきた。
 蒼い惑星の使者の到来を以って、彼の戦いが、ようやく始まった。


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