Date of Nativity
一章 愚者
1
本能のままとはいえ、彼は自分でも薄々感づいていた。そこらを彷徨く者共とは一線を期している。元々併せ持っていた知能が高いようで、自分がどのようにして戦うことができるか理解するのに時間はかからなかった。難癖を付けて喧嘩を売ってきた輩とは、戦いにもなった。その様と言ったら、言葉にして表すだけ無意味だ。それだけ簡単に退けることができたという事に他ならないのだが。退けるだけで済んだかどうかすら興味の対象にはならない。相手がどうなったかというのも然り。そんな事に興味を示しているほど彼も暇ではなかった。
そして、そんな彼の前にまた新たな惑星人が現れた。
「貴様が噂の結晶怪獣か。俺の名はマグマ星人。悪いな。仕事なんでな。早々に死んでもらうぜ」
戦いが新たな戦いを呼ぶとはよく言ったものだ。彼が前に戦った惑星人と同盟関係にある惑星の始末屋らしい。身体は黒く、腕と腰に銀色の装飾を纏っている。右腕の装飾の先端は身の丈ほどの槍になっていて、左腕の先端は棘付の球体を成していた。金色の鬣をなびかせ、これまた銀色の仮面から覗く眼差しが彼を見張る。
この始末屋の登場文句を聞いて彼は、同じ理由で彼に戦いを挑む惑星人やか怪獣がこれまでも、そしてこれからもやってくる。そんな予感をここで初めて感じた。
「来い! 売られた勝負を捨てるような奴ではないんだろ?」
マグマ星人の挑発はそれだけにあらず、右腕の槍から彼の顔に向かって光線を放った。それ自体の威力は何ともなく、彼の怒りを起こすにも不十分ではあった。しかし、だからと言って彼には目の前の愚者を見逃す意志など無かった。言われるがまま、彼は誘いに乗る。マグマ星人はすぐ近くの惑星に向かった。最初の勝負は航行しながらの互いの技の応酬になった。彼は全速力でマグマ星人を追った。
「な?」
勝負にならなかった。マグマ星人の何倍の速さだっただろうか。彼の速さにマグマ星人は言葉を失い、体が凍り付いた。