Date of Nativity


 序章

 それは、かつて遠い宇宙で行われた戦いの記憶。それだけが、今自分が認識できる世界の全てだった。どのようにして生まれ、どのように生きていくのか。それすら理解できずに今我はここにいる。いや、それは当然だった。なぜなら、我が生まれてから時間は全くたっていなかったのだから。

暗い宇宙の真ん中に我はいた。動物的本能でまず探すべき存在を我は求めた。だがいなかった。親もなしに誕生した我は普通の生物の本分から逸脱している。我以外の者の記憶。そんなものどこにもあるはずがない。逸脱している我ならばそれくらいの異端者的な記憶があってもいいだろう。我には何もないと、そう思う他無いと思っていた。

 だがどうだろう。我の身体は無意識のうちに何かを求めて動き出した。それはいったい何なのか。己の意識の奥から湧き出てくるこの感情。この衝動。この欲求は。元々有している本能にしてはやけに具体化している欲求ではないか。この記憶。間違いなく、終わり無き戦いを求めている者の本能に従って生きた記憶だ。そして、求めてみたくなった。我が生まれた意味。我が戦闘衝動の正体。我が成さねばならないこと。そのために我の足は向いた。本能に赴くままに。

 
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