GATHERING












俺は酉澤武斗(とりさわ たけと)。
名前を書くのが絶妙に難しかったり、「西澤」によく間違えられる以外はごくごくフツーの、清水に住んでる17歳の男子高校生だ。
趣味はネットサーフィンとスマホゲー。
高校での成績はだいたい中くらいで、帰宅部。
友達は放課後や休みに一緒に遊びに行く友達が4~5人くらい。
両親は共に会社員で、休みに一緒に出掛けられるくらいの関係も時間も稼ぎもアリ。
夢・・・と言うか進路は今のとこ特にナシ。
・・・と、本当に悪くは無いフツーの高校生としての日々を過ごしてる。







そんな俺にとって、最近気になってる事が一つある。
それはこの2033年の流行語大賞を取るんじゃないかって言われてるくらい、今年の夏辺りからSNSで話題沸騰中のハッシュタグ・・・「#バタフライエフェクトの出番です!」
このハッシュタグを付けて願い事をSNSに投稿すると、どこからともなく蝶の羽根が生えた妖精みたいな女が現れて、願い事を叶えてくれる・・・かもしれないらしい。
実際に目撃例や証言はかなりあって、幾つか写メも撮られてて、本人は「ゴキゲンな蝶」って名乗ってるらしいけど、ネットだとオカルト民は「モスマン」とか言うUMAが元ネタの「モスウーマン」、アニメ民は・・・えっと、名前は忘れたけどなんかのプリキュアに出て来る「キュアバタフライ」ってプリキュアに姿が似てるらしいから、「リアルキュアバタフライ」だとか「三次元あげはさん」とか呼ばれてる・・・誰なんだろ、あげはさんって。
まぁ、正体がなんであれ多分ヒト「G」なんだろう。「サンジューロー」とか「「G」ハンター」みたいな。
・・・だから、俺も「ゴキゲンな蝶」にお願いしてみた。しょーもないお願いを。






お暇なら、明日夕方4時に清水駅前コンビニに来て下さい。
#バタフライエフェクトの出番です!






ちなみに2016年生まれの俺にとって、「G」はもはや当たり前の存在だ。
「この世界にとって異質なモノ」だから「G」って隠語みたいな名前で呼んでるらしいけど、俺が物心付いた時にはもうそんなに異質じゃ無くなってたし。
この年はあの「守護神」ガメラが現れ始めた年として有名だ。でも俺が7歳の時に旧京都で「四神大戦」が起こって、それ以降ガメラは現れていない。一度で良いから、生で見たかったなぁ。
そう言えば、5年前に世界中で「G」狩りみたいな事があった時に三保にある某大学の清水キャンパスにも怪しいヤツらが来てて、あの時はガイガンとか言うサイボーグみたいな巨大「G」が退治したそうだ。
俺が生まれる前にも湘南キャンパスにダダとか言うゼブラ人間と、レギオンとか言うデカい甲虫みたいな「G」も現れたらしいし、最近某大学は「G」のメッカなんじゃないかとか、理事長がヒト「G」じゃないかとか、色々噂が立ってる場所だから別におかしくは無いんだが。
そんな世の中に生まれたからか・・・常日頃から、割と本気で思っている事がある。
変なヤツらに狙われたくは無いけど・・・俺も実はヒト「G」で、何かスゴい能力があったりしないかな?と。厨二病とか言うヤツじゃなくて、本気と書いてマジで。
「ワン・フォー・オール」じゃなくてもいいから、せめて「爆破」とか「半冷半燃」辺りの強めの能力とか・・・どうやらヒト「G」は「爾落人」であれ「能力者」であれ、ふとしたきっかけで目覚めるらしいし、能力によっては俺の平凡な人生が一変するかもしれない。
多分「ゴキゲンな蝶」も、サンジューローや「G」ハンターみたいに相当スゴい能力を持ったヒト「G」なんだろうなぁ・・・うらやま。








「さて、と・・・『ゴキゲンな蝶』は本当に来るんかな?」




次の日、高校の授業が終わって真っ直ぐに高校を出た俺は件の清水駅前のコンビニに行く。
元々行き着けのコンビニだし、だからこそここを選んだんだが・・・目当てはもう一つある。




「あっ、酉澤さん!いらっしゃいませ~♪」




このコンビニの店員、鳳朱夏(おおとり あやか)さんだ。
ハキハキとした優しい声、金髪混じりの茶髪ロングがよく似合うギャル顔、制服の上からでも分かる出てる所は出てて細い所は細い見事なモデル体型、常連の俺の名前を覚えてくれている程に気配りの取れた接客・・・正直、テレビとかニュースサイトとかから取材が来ないのがおかしいと思うくらいにイイ女。
今年の春に偶然この人に出会ってから、俺は帰宅部なのを生かしてここに毎日通い詰めてシフトを把握し、月曜と金曜のこの時間には何があっても来るようにしてる。
まぁ、たまにいない事があるんだが・・・どうも本業は海外ボランティア職員で、ボランティアが無い間にここで働いているらしく、某大学の卒業生と店長が知り合いだからそのコネで融通が聞くようだ。
正直、海外ボランティアなんてスゴいとは思うけど・・・行ったらいつもの時間に会えなくなるから、出来れば行って欲しくない。はい俺のワガママ。
・・・もしくは「恋」、なのか?




「こんにちは。」
「今日も来てくれましたね?でも、先週みたいにトイレだけ使うのは勘弁ですよ?」
「す、すみません。今手持ち少なくて・・・」
「ふふっ、冗談ですよ☆ゆっくり見て回って下さいね?」
「ありがとうございます。」
「おっ、朱夏ちゃん!お疲れ様!」
「お疲れ様です!あ、この前筋少ライブに行ったんですよね?駄目ジャンプ、しました?」
「勿論!ついでにイワンもね!」
「えっと、バカーって?」
「そうそう、それそれ・・・あっ、いらっしゃいませー!」





鳳さんと話していると、店の裏から店長が出て来た。
茶髪・日焼け肌・グラサン・ピアス、と言うチャラい外見とは裏腹に妻子持ちのちゃんとした父親で、かれこれ20年以上ここで働き続けた末にバイトからエリアリーダーにまで登り詰めた、俗に言う「叩き上げ」らしい。
話の内容は全く分からないが、誰とでも話を合わせられる鳳さんはやっぱスゴい。




「えっと・・・あっ、三ツ矢サイダー割引してる。これにしとこ・・・」




とりあえず、鳳さんからああ言われたからには冗談でも何も買わないわけにはいかないし、こう言う時は適当に割引品を買う。
しかし・・・本当にここに「ゴキゲンな蝶」は来るんだろうか?
写メの画像を見る限り、正直言ってアニメ・・・と言うかプリキュアのコスプレをしてる人、って感じの外見っぽいからここに入ったら明らかに浮くし、知ってる人に見つかったら騒ぎになるだろうし・・・そもそも、別に何かに困ってるわけじゃないから来る必要が無いし、あんなお願いにまで応えていたらキリが無いし・・・もしかして、世を忍ぶ仮の姿があるとか?
でも、だったら少なくともリクエスト主の俺は分からんな・・・後からリプして来るんだろうか?








「・・・」




そうこうしている間に、約束の4時になった・・・が、やはり現れない。
そりゃそうだよな。こんな所にリアルキュアバタフライが来たらアニメ民じゃなくても絶対話題になるし、こんな暇人より病人や子供を優先するに決まってるしなぁ・・・
けど、もし本当に来てくれたなら・・・




「・・・何をお探しですか?」
「わっ!?」




少し落ち込みつつ、僅かな可能性を信じて本棚で立ち読みしながら待とうとすると・・・背後から突然、鳳さんが話し掛けて来た。
こんなの初めて・・・と言うかフレグランスのいい香りが・・・じゃなくて!




「あっ、驚かせてすみません☆でも、立ち読みもダメですよ~?」
「は、はい・・・えっと、お探しの物と言うか、待ち人的なのはいると言うか・・・」
「誰かと待ち合わせですか?」
「うーん、と・・・実は俺、あの最近ネットで噂の『ゴキゲンな蝶』に今日の夕方4時にここに来て下さい、って頼んでみたんですけど・・・まぁ、案の定来てないみたいで。そりゃそうですよね。ヒーローなら本当に困ってる人を優先しないと・・・」
「・・・それか、実はもう近くに来てたりして。」
「えっ?」
「いえいえ、なんでも♪でも確かに・・・今まさに命の危機に陥っている人は、この世界の何処かに数え切れない程いる。それが現実です。あたしも時々ボランティアで世界の国々に行ってますけど、あたし達だけで救える命には、どうしても限りがある・・・それを嫌でも思い知らされる日々です。だからこそ、一つでも多く「救ける」為にどこまでも手を伸ばし続けて、1人でも多くの人を笑顔にしてあげたい・・・きっと『ゴキゲンな蝶』も、サンジューローさんも、あのガメラも同じ思いなんだろうって、あたしは思います。」




そう語る鳳さんの顔は、いつもの笑顔とは裏腹に真剣な眼をしていて・・・ボランティアなんかに行かないで欲しい、とか思ってしまった事と、軽い気持ちで「ゴキゲンな蝶」に頼み事をしたのを、本気で後悔した。
この人がヒト「G」かは知らないが、きっとヒト「G」じゃなくても誰かの為に頑張れたり、動けたり出来る人なんだろう・・・それこそ、「ゴキゲンな蝶」みたいに。
なのに俺は実は自分がヒト「G」だったらいいのになぁ、なんて浮わついた事を・・・




「・・・な~んて☆お客さん相手なのに、なんかまたごめんなさい。」
「いえ・・・俺も、そう思いますんで。あ、これ買ってとりあえず店出ます。外にいるかもしれませんし。」
「お買い上げは有難いですけど、立ち読みしないならゆっくり店内にいても良いですよ?外は寒いですし・・・」
「いえいえ、もうそろそろ客も増えますし・・・」
「そうですか・・・では、今日もお買い上げありがとうございます♪レジまでいらして下さいね!」




危ない、俺はあくまでも客なのに・・・
そう思った俺は名残惜しくも、会計を済ませる事にした。
本音はもっと話したかったけど、これ以上の話は鳳さんにも、今は全然いないけど他の客の邪魔にもなるし・・・何だか、こんな俺が鳳さんと話そうなんて申し訳なく感じた。
それにいい話を聞いたのに、ジュース一本だけなのも申し訳ない・・・




「「ありがとうございました~!またお越し下さいませ~!」」




のだが、鳳さんも店長もバッチリスマイルで応えてくれる。
ほんと、何でもっと話題にならないんだろう。この店。








「さて、と・・・」




店を出たものの、やっぱり「ゴキゲンな蝶」はいないか・・・あんな立派な人間が多分遅刻なんてしないだろうし、遅刻したとしても人助けをしてたんだろうし。
・・・よし、今日は大人しく帰ろう。もし後から「遅れたけど来ました」、ってリプが来たら謝ればいいし・・・






・・・ギュヴァァ・・・




そう思いながら三ツ矢サイダーを飲んでいた、その時。
コンビニ裏の細い路地から一瞬だけ何か・・・奇妙で寒気がする声が聞こえた。
逃げようかと思ったけど、怖いもの見たさで路地に入ってみると・・・




ギュヴァァァァウウウ・・・




「!?」



そこには、真っ赤な蟹に悪魔を思わせる顔と胴体が付いた、明らかにヤバいと分かる生物・・・「G」がいた。
こいつは・・・そう、デストロイア。
20年くらい前から某大学清水キャンパス周辺に現れたらしく、以降都市部を中心に時々目撃情報が入って来る「G」。確か、口から何でも溶かす破壊光線を出すんだったな・・・
正直本物のデストロイア、と言うか「G」は初めて見るし、怖いけど・・・こいつがあのコンビニにでも入ったら鳳さんが、みんなが危ない・・・!
とりあえず、音の出ない写メアプリを使って・・・よし、写メ完了。
こいつをネットに拡散して、少しでも早く退治してくれる人が来れるようにして、早く店長に知らせよう。
小市民の俺だって、これくらいは役に立てるんだ・・・




ギュヴァァァァウウウ・・・




「・・・え?」




・・・が。
ネットに写真をアップして安堵する俺の背後から、もう一匹のデストロイアが現れた。




「う、うわあああああああああっ!!
助けて!!助けてぇ!!」




情けない悲鳴を上げながら、俺は誰かに聞こえるように助けを求めつつ表に逃げようとするが、それによりさっきのデストロイアに気付かれ、口から吐く真っ白い煙のような破壊光線が俺の足元を狙い、コンクリートを抉りながら俺のバランスを崩す。




「うわっ!!はっ、はっ、はっ・・・!!」




当然俺は転び、腰を抜かして冬なのに大量の油汗を掻きながら、迫る二匹のデストロイアを怯えながら見る事しか出来なかった。
ヤバい・・・絶対殺される・・・!
でも、漫画やアニメみたいに都合良く俺の能力は目覚めてはくれない・・・!




「・・・っ!
こ、これでも・・・くらええええっ!!」




しかし、「一寸の虫にも五分の魂」とでも言うべきか・・・たとえ何の能力が無くても何か一つ、ヤツらに一矢報いたかった俺は震える手で三ツ矢サイダーをなるべく超高速で振り、デストロイアへ向けながら蓋を開けた。




ギュヴァァウ・・・



ギュヴァァァァ!




サイダーと共に勢い良く飛んだ蓋は上手く右側のデストロイアの目に当たり、面食らって俺に向かって撃とうとした破壊光線を左側のデストロイアにぶつけた。
左側のデストロイアは顔面にモロに破壊光線を喰らい、たじろぎながら後退する。




ギュヴァァァァウウウ・・・




だが、左側のデストロイアは目に蓋が当たったくらいで退いてくれるわけもなく、明らかに怒りながら俺に再び破壊光線を撃とうとする。








あぁ・・・俺、こんな所で死ぬのか・・・?
嫌だ、嫌だ、そんなの嫌だ・・・!
まだ死にたくない、平凡な人生だろうとまだ生きてたい・・・!
まだ大人にもなれてないんだぞ、俺は・・・俺の人生はまだまだ、これからなんだよぉ・・・!
死にたくない、死にたくない、死にたくない・・・!
死にたくない!!






「・・・誰か、助けて・・・!!」









「・・・温度のチカラ、サゲてこっ!」




すると、その時。
聞き覚えのある声と共にピンク色の光?蝶?が突然俺の頭上を通り、デストロイアに当たったかと思うと・・・デストロイアの隣にある水道管が突然破裂し、水流がデストロイアに直撃。
流石のデストロイアもこの冬に冷や水をぶっ掛けられるのはキツイのか、みるみる動きが鈍くなって行く。
と、言うか俺・・・助かった?




「酉澤君!大丈夫!?」




安堵する間も無く、すぐ俺に駆け寄って来たのは私服姿の鳳さんだった。
ニット服を着た鳳さんもたまらない・・・じゃなくて!




「お、鳳さん!?なんでここに!?」
「イヤな気がしたから、早引きして来てみたの。先週沼津でデストロイアを見た、って目撃情報がコンドウさんのサイトにあったから、今週辺りに清水に来るかも、って思ってたら・・・ビンゴね。それより、ケガしてない?」
「は、はい。ただ、悪あがきしたから折角買った三ツ矢サイダーが・・・」
「三ツ矢サイダーはまた割引してる時に買えばいいの!今大事なのはキミ自身、でしょ?」
「だ、大丈夫です。今の所は・・・」
「良かった。じゃあ早く逃げ・・・」




ギュヴァァァァウウウ・・・




と、話しながら起き上がる間に表から聞こえる悲鳴と共に、三匹目のデストロイアが後ろから現れた。
それと同時に、顔面に光線を食らったデストロイアも改めてこっちを狙って迫って来て・・・
これはもう、完全に挟み撃ちだ・・・!




「・・・さっきは上手く配水管があったけど、あそこには無いか・・・でも、これじゃあ多分逃げられないし・・・けど、この子だけは・・・
これはバレてもしょうがない、よね?」
「バレても?」
「・・・ねぇ、酉澤君。今から見た事全部、絶対ナイショに出来る?もし約束を守ってくれるなら、あたしが絶対にキミを守ってあげる。」




・・・えっ?
鳳さんが、俺を?
よく分からないけど、鳳さんの表情はさっき話した時よりも真剣な・・・さながら、戦う覚悟を決めたバトルモノの主人公のような顔付きだった。
なら、俺は・・・




「は、はい!絶対ナイショにします!こう見えてリテラシーを守ってネットやってる方なんで!」
「ありがと☆お姉さんとの約束、だよ?じゃあ、そんな良い子なキミにあたしの超ワンダフルなヒミツ・・・特別に見せてあげるね・・・!」




そう言うと、鳳さんはいつものような少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら、右手の小指を立てて俺に見せつけた後、今度は人差し指を立てて空を指差す。
すると、何処からかピンク色に光る蝶が飛んで来て、トンボみたいに鳳さんの人差し指に止まったかと思うと、鳳さんは蝶を顔の横に持って来て・・・




「・・・ひろがるチェンジ、バタフライ♪」




そう鳳さんが呟いた、その瞬間。
指先の蝶が放つピンク色の閃光の中に鳳さんが包まれ、服が消えてほんの一瞬だけ裸になった鳳さんは無数の光の蝶を纏って、まるで魔法少女・・・いや、まさにプリキュアのような服装に、髪はより長く黄色に変色し、背中に大きなアゲハ蝶の羽根を生やし、何故かバッチリとメイクやネイルまでも完了した、芸能人やコスプレイヤー顔負けの容貌に「変身」した。
って言うか、これって・・・!






design




「ゴキゲンな蝶」、リアルキュアバタフライ降臨じゃんか!?
ま、まさか・・・!




「・・・ってワケで、あたし・鳳朱夏こそがあの『ゴキゲンな蝶』の正体なのでした☆びっくりした?」
「え、あっ・・・はい。」
「でも、これでキミのお願いは叶えたでしょ?『お暇なら、清水駅前コンビニに来て下さい』、って言うバタフライエフェクトをね♪」
「は、はい!ありがとうございます!」
「じゃあ、次はあたしがキミとの約束を果たさないとね・・・大丈夫、あたしが絶対キミを守ってあげるから。」




ギュヴァァァァウウウ・・・




「・・・ミクロオキシゲン、異端の科学者セリザワ氏が提唱した、酸素の破壊に起因する有機物・無機物への瞬間的な分解・消失・消滅を引き起こす因子『オキシジェン・デストロイヤー』を光線状に変換したモノ・・・だよね。なら!」




「ゴキゲンな蝶」、いや朱夏さんはデストロイアを目の当たりにしても全く臆する事無く、ブツブツと何か呟くと両手をまるで蝶を描くような形で突き出し、両手から出した光でデストロイアが吐いた破壊光線を受け止めてしまった。
光・・・と言うより、蝶のような形をしたバリアのように見えるが・・・俺にはそう見えてるだけで、本当にそうなのか自信は無い。
分かる事は、あんな光線を軽々と受け止めてしまう朱夏さんがマジでスゴいって事で、デストロイアも光線を受け止められるのは初めてだったのか、驚きながら光線を吐くのを止める。




「よし、阻止成功!ところで酉澤君って高い所は大丈夫?」
「高い所?別に大丈夫ですけど・・・」
「じゃあ、ちょっと飛ぶよ!」
「えっ、飛ぶ・・・?」
「せー、のっ!」




すると、朱夏さんが俺の両手を掴んで・・・って、いきなり手繋ぎ!?
あたたかくって何だか心地イイ・・・じゃなくて!か、顔が近い・・・




「う、うおわあっ!」




次の瞬間、俺の体は朱夏さんと共に宙に浮かび・・・数秒して、コンビニの屋根の上に着地していた。
これって俺、朱夏さんと一緒に飛んだ・・・?朱夏さんの顔を見るのに夢中だったけど、多分そうだよな・・・?




「はい、避難完了!ここならひとまず安全だから、おとなしくしててね?」
「わ、分かりました。」
「それと・・・あんた達もおとなしくしてて、ねっ♡」




朱夏さんは手を離し、ついさっきまでいた路地裏から俺達を恨めしそうに見上げながら叫ぶデストロイアへ向け、突然ウィンクと共に右手で投げキッスをするや、朱夏さんが来る直前に見た光る蝶が朱夏さんの指先から現れ、デストロイア達へ向かって行く。




「酉澤君、爆発するよ!気を付けてね!」
「ばくは・・・?う、うわあああっ!」




ギュヴァァァァ!

ギュヴァァァァ!

ギュヴァァァァ!




そして朱夏さんが言う通り、路地裏で唐突に爆発が起こり、爆発に巻き込まれたデストロイア達はギャグアニメの如く宙を舞って、路地裏に落下。動かなくなった。
なんで爆発が・・・と言うかなんで、朱夏さんは爆発が起こるのが分かったんだ?




「・・・とりあえず、これで一安心かな?常連様のキミが無事で、ほんと良かった♪」
「あ、ありがとうございます・・・まさか鳳さんがヒト「G」、と言うかあの『ゴキゲンな蝶』だったなんて・・・」
「でも多分正義感からかもしれないけど、デストロイアみたいな危険な「G」を1人で追い掛けるのは、絶対ダメだからね?デストロイアは群生タイプの「G」だから、1匹見たら30匹は近くにいるかもって思わないと。」
「そんなの、そっちの方の「G」じゃないですか!?」
「そう。だから、なるべく「G」に対する正しい知識は持っとかないとダメだよ?」
「すみません、気を付けます・・・あっ、そう言えば鳳さんってどんな「G」を持ってるんですか?爆発するのが分かったり、空飛んだり、俺は見た事無いですけどプリキュアと言うか、リアルキュアバタフライと言うか、とにかく変身したみたいに服が変わったり・・・」
「うーん、衣装チェンジは厳密には違うんだけど・・・少し長くなってもいいなら話すわよ?」
「お願いします!」
「じゃあ、素直なキミにあやか先生が特別に教えてアゲる☆
・・・「因果」と「贈与」。あたしは、自分の「G」をそう呼んでる。」
「「因果」?「贈与」?」
「「因果」はあの『因果応報』の「因果」で、あたしへのハッシュタグにもある『バタフライエフェクト』・・・つまり「因果律」を自由に操作出来る「G」なの。あたしがこうなって欲しい、って思った「結果」を、「原因」より先に作り出す・・・要は『風が吹く前に桶屋を儲けさせる』みたいな感じかな?デストロイアの光線を防いだのはあの光線、『ミクロオキシゲン』はあたしとキミには当たらない、って「因果」を紡いだからで、あたしが飛べるのは「蝶のように舞う」って「因果」を常にあたし自身に紡いでいるから。
でも「因果」はあくまでも『事象』だから、他人をターゲットには出来ないんだけど、それが出来るようになるのが「贈与」の「G」、あの光る蝶ね。あたしが紡ぎたい「因果」を相手に「贈与」する事で、間接的に誰かをターゲットに出来るの。キミを助けた時に水道管が壊れたのも、今さっき路地裏で粉塵爆発が起こったのも、あたしがデストロイアに「因果」を「贈与」したからってワケ。」
「ふ、粉塵爆発!?でも粉塵爆発って基本室内じゃないと起こらないはず・・・と言うか、つまり「因果」って何でも思い通りに出来る力って事じゃないですか!?そんなの、チート以外の何物でも・・・」
「ううん、何でも思い通りに出来るワケじゃないよ。例えばキミを助けた時は水道管があったから、水道管が壊れる形でデストロイアの『温度をサゲて』足止めが出来たけど、表から来た方には間近に水道管は無かったから足止めは無理だったし、身の丈以上の「因果」を紡ぐのは基本的に無理なんだ・・・『世界平和』とか、『悪人がこの世から1人もいなくなる』、とか。だからあたしはボランティア活動や『ゴキゲンな蝶』として動いて、この手を少しでも伸ばして・・・1人でも多く『救け』られるようにしてるの。」
「そうなんですか・・・」
「それと、この姿『メタモルフォーゼモード』はあたしが「因果」の力をフルに使うと決めた時になってるんだけど、実はコレ最近『モスラ』ってスゴい「G」から「創造」の力の一欠片を貰って、その力で空中の元素をいじくって服を作り替えてるだけだから、言ってしまえば高度なコスプレみたいなもんなんだけど・・・『リアルキュアバタフライ』呼びもあながち間違いじゃない、かな?ぶっちゃけこの姿はキュアバタフライをオマージュした姿だし、あたしにとってバタフライさん・・・聖あげはさんは、あたしがこうしたい、こんなオトナになりたい、って思うキッカケになった永遠の推し、憧れなんだ!」




そう語る朱夏さんの目は、何処か子供のように純粋で、キラキラとしていて・・・この人が本当に心の底からキュアバタフライが、あげはさんが大好きなのかが、プリキュアを知らない俺でも伝わった。
子供の頃にヒーローやヒロインが好きだったからこの仕事をしてる、って人をたまに見掛けるけど、朱夏さんもまさにその1人で、それを本気で叶えたパターンなんだろう。




「なんだなんだぁ、ホントにまたデストロイアが・・・あっ!あれ『ゴキゲンな蝶』だ!さっきのお客さんも!」
「なんか、あの蝶みたいな人が助けたらしいわよ?」
「流石はネットで噂のヒロイン、いやヒーローだぁ!」
「ネットで画像見た事あるけど、モノホンはやっぱ美人でカッコ良い~!上手くセクシーさとキュートさを両立してるのがポイントなのよ・・・あぁ、ああ言う女になりたい!」
「ほんとにキュアバタフライに似てるなぁ・・・まぁキュアスカイとかじゃなくてあえてバタフライ、って所は俺はなんか好感が持てる。」
「あれが「ゴキゲンな蝶」・・・きらめく風に乗って会いに来てくれたのかな?」
「りあるきゅあばたふらい、かっこい~!!」
「こっち向いて~!!」
「三次元あげはさ~ん!写メ、いいですか~?」




外に出てきた店長が朱夏さんとも知らずに「ゴキゲンな蝶」に気付き、他の人々も続々と朱夏さんを噂し、称え、囃し立てる。
なんか・・・こう言うの、俺も憧れるなぁ。ヒーローになりたい、と言うか誰かの為に頑張って、自然にありがとうって言われる人・・・朱夏さんみたいな人になってみたい、そう思った。




「あちゃ~、もう気付かれちゃったか。しかも店長まで・・・特定班に身バレされるのは嫌だし、誰かに見せびらかす為にやってるワケじゃないから、あんまり写メはネットに上げて欲しくないんだけど・・・とりあえず、キミを降ろしたら帰るわね。デストロイアならあとは警察が何とかしてくれるだろうし。」
「は、はい・・・」




ギュゥグヴァァァァゥゥゥ・・・




・・・と、その時。
鳥肌が立つ程におぞましい声と共に辺りが揺れ、路地裏を突き破って巨大なデストロイアが現れた。
背中に鋭い一対の鎌みたいなのが増えた、何十mもある巨大「G」クラスになった、絶対にヤバいと分かる奴が・・・!




「で、でかいのが出たぁ!?」
「に、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
「きゃあああああっ!!」
「わああああああああ!!」




「『集合体』!?成る程、そう言う事ね・・・!」
「そう言う事?どう言う事ですか!?」
「デストロイアには他の「G」と違う特殊な生態があってね、仲間同士で融合して体積を倍加させる・・・つまりは巨大化出来る能力があるの。他の群れがいないかと思ったら、既に融合してたってワケか・・・」
「そ、そんなのどうするんですか!?もうコレ、警察でどうにか・・・」




そう話す間に、最初からターゲットに決めていたのか巨大デストロイアは逃げ惑う人々には目も暮れず、真っ直ぐに足元のコンビニ・・・いや、朱夏さんに両鎌を振り下ろす。
これ・・・俺もまたヤバい!?




「あ~っ!!俺の店がぁ!!」
「・・・だよね。あたし達だけ逃げたら、店長やみんなが困っちゃうよね・・・!酉澤君!あたしの後ろに!」
「へっ!?は、はい!」




言われるがまま、俺は朱夏さんの後ろに逃げ・・・




「・・・ふっ!!」




朱夏さんは両手を出して再びバリア・・・と言うより「因果」の壁を張り、巨大デストロイアの鎌を受け止める。
まさか、俺だけじゃなくてこのコンビニを守った・・・?




「鳳さん!?」
「「ゴキゲンな蝶」が、俺の店を・・・!?」
「ううっ・・・攻撃は防げても、反動までは全部防ぎきれない・・・か・・・!」




だが、全身で踏ん張りながら鎌を受け止める朱夏さんはとても苦しそうで、膝が折れ曲がりそうになる程の衝撃を受けてもなお、朱夏さんは防御を止めない。
これはコンビニだけじゃない、絶対俺も守ってるからだ・・・
俺が、足手まといになってるんだ・・・!




「お、俺なんかに構わず反撃して下さい!と言うか逃げて下さい!このままじゃ貴女が危ないですよ!やろうと思えば「因果」で何だって出来るんだから、俺なんか気にせず・・・」
「・・・『俺なんか』?そんなコト・・・絶対、言っちゃダメ!!」
「!!」
「あたし、思うんだ・・・キミみたいな実は良い子が、この世界をいつかちょっとでもワンダフルにしていくって・・・!キミみたいな存在が、みんなにとって必要なんだって!だから、俺『なんか』なんて・・・絶対、言わないで!!」




そんな・・・違うんだ。
俺は、平凡な日々を変えたいから「G」に目覚めないかな、なんて浮わついた事を思ってたヤツなのに・・・!
貴女みたいな立派な夢も目標も無い、良い子なんかじゃないヤツなのに・・・!




「それに・・・約束、したでしょ!キミは絶対・・・あたしが守るって!
だって、あたしは『最強の能力者』で・・・あたしが憧れたキュアバタフライは、みんなを守るプリキュアで・・・まだまだあたしは銀河さんや、凌さんや、世莉や翔子さん、それにガメラみたいにはなれてないけど・・・『ゴキゲンな蝶』として、キミだけは、絶対守ってみせる!!」




なのに・・・こんな俺を、必死に守ろうとしてくれてる・・・!
やっぱり都合良く能力に目覚めない今の俺には、こんな事しか出来ないけど・・・!




「・・・がんばって!!負けないで!!」
「ありがと、ね♪不思議だね、こう言う時の声援・・・エールって、ほんとに力が湧いて・・・超アガるっ!!
こうなったら、明日筋肉痛になっちゃうかもだけど・・・!」




すると、朱夏さんの背中の羽根が消え・・・




「火事場の・・・馬鹿ヂカラッ!!」





ギュグヴァァゥゥッ・・・




巨大デストロイアの鎌を一発で押し飛ばし、続けての飛び蹴りが巨大デストロイアを怯ませた。
まさか、「因果」で本当に「火事場の馬鹿力」を引き出したのか?だから羽根が消えて・・・あ、また生えた。
とにかく・・・こんなの、カッコ良すぎるって!!




「は~い、オニさんこっちら♪手の鳴る方へっ☆」




再び朱夏さんは飛び、今度は巨大デストロイアの眼前でまるで子供と遊んでいるかのような態度で手を叩きながら、巨大デストロイアを挑発。
挑発に乗った巨大デストロイアは口から赤紫色に変わった破壊光線を朱夏さんへ吐くが、さっきみたいに朱夏さんはバリア的な「因果」で光線を防ぎながら、今度は巨大デストロイアの周りをぐるぐると周る。




「ほらほら~、悔しかったらあたしを捕まえてみなさいっ♪」




ギュゥグヴァァァァゥゥゥ・・・




完全に怒った巨大デストロイアは一瞬で全身を粒子状に変え、一対の翼を生やしたカブトガニのような姿に変わった。
デストロイアって飛べた・・・つうか、飛行モードとかあったのか!?
当然、巨大デストロイアは朱夏さんを追ってコンビニを離れて・・・待てよ、朱夏さんは1人でアイツを引き付ける気なんじゃ!?コンビニと、俺を守る為に・・・!
こんなの、朱夏さんがマジのマジで危ない!!




「あ、朱夏さんっ!!」




つい、俺は店長がいるのも忘れて叫んだ。
ちゃっかり、「朱夏」さんと。
だって、いても立っていられなくなって・・・




「・・・後で迎えに行くから、良い子にしててね♪」




けど、朱夏さんは俺にウィンクとスマイルを見せながら、そう返して・・・巨大デストロイアを連れて、清水港の方へと飛び去って行った。









「・・・よし、この辺りなら大丈夫ね。本当は『浄化』してあげたい所だけど、デストロイアは基本的に破壊衝動しか持たない完全生命体、らしいから・・・なら、バタフライさんみたいにやるっきゃない!」





 

そこからの事は、後に「GALLERIA」と言う非公式最大手の「G」の情報サイトで調べた、自称漁師からの僅かな目撃情報でしか分からない。
しかし、その目撃情報によると駿河湾の沖の方で朱夏さんは巨大デストロイアの顔面へ振り向き様にキックを浴びせた後、空高く舞い上がり・・・




「・・・ひろがる、バタフライプレス!!」




ギュグヴァァゥゥッ・・・!




巨大な蝶のオブジェクト・・・のようなモノを使い、巨大デストロイアを駿河湾に叩き付けたとの事だ。
しばらくして、全身がペッタンコになった巨大デストロイアが三保の海岸で発見・回収されたから、間違いは無いんだろう。
「G」が蔓延る今この世でもとても信じられない、とコメントしていた人もいたが・・・俺は信じる。
だってあの「ゴキゲンな蝶」が、朱夏さんがやった事なんだし・・・








「・・・お待たせ♪迎えに来たよ☆」




朱夏さんはちゃんと俺を・・・俺との約束を、守ってくれたんだから。




「はいっ、着地完了!」
「ありがとうございます。それで俺、ちょっと聞き・・・」
「ありがとー!!『ゴキゲンな蝶』さん!俺の店を守ってくれて!もしかして、ここの常連だったりする!?」
「えっと、そんな所かな?でも、みんなが無事で良かった♪それじゃあ、あたしはここでさよならしまーす!でもあんまりネットに写真はアゲないでね?じゃっ、バイバ~イ!」




・・・それと、俺は今日ここに「ゴキゲンな蝶」を呼び出した理由は単に会ってみたかったのもあるが、実は「なんでこんな事をしてるんですか?」と聞いてみたかったのもあった。はい興味本位。
けど、今はもう聞く必要は無くなった。
理由は言わなくても分かるでしょ?




「・・・はい!さようなら・・・!」




・・・あの日、俺はこうして「ゴキゲンな蝶」と出会った。









それから、土日を挟んでの俺の男子高校生ライフがまた始まった。
けど、今までに比べて多少変わった事があった。






「ねぇ、酉澤君?先週あの『ゴキゲンな蝶』に会ったんだよね?話聞かせて!」
「やっぱ、本物はキレイだった?」
「ほんとに三次元あげはさんだったのか、詳しく・・・」
「私もお願いしたのに、まだ叶えてくれないのよ~!なんでどっちもどっちな内容の 酉澤は叶えて貰ったのよ~!」
「『この高校に来て下さい』、なんてムリムリ!あそこのコンビニの路地裏だから良かったのよ!だから酉澤君、またお願いしてみてよ?」




まずは、「「ゴキゲンな蝶」に会った男」としてクラスの話題の男子になった事だ。
どうやら朱夏さん・・・いや「ゴキゲンな蝶」は女子人気も高いらしく、男子だけじゃなくあんまり話した事の無い女子まで俺に話し掛けて来るようになった。
バレた理由は簡単、ネットにあの人と一緒にコンビニの屋根にいる俺の写真が上がっていたから。
この土日で俺に沢山リプやネットニュースサイトからの取材依頼が来たし、特定班ってマジ怖い。と言うか朱夏さんもネットにあんまり写真アゲんな、って言ってたよな?
みんなも、ネットリテラシーはちゃんと守ろう!
・・・まぁ、いきなり話題の人になれた事自体は意外と悪い気分じゃない。
これがほんとの「バタフライエフェクト」、なのか?








「二年A組の酉澤です。今日から宜しくお願いします!」




二つ目は、俺が帰宅部を辞めてボランティア部に入った事。
あからさまに朱夏さんの影響を受けているのは、自分でも分かっている・・・が、俺も朱夏さんみたいな「誰かの為に」動ける人になりたくなって、それならいっそ肖(あやか)ってみようと思い、今まで存在自体知らなかったボランティア部に入ってみた。
・・・朱夏に肖る、って自分でもしょーもないダジャレみたいな話だと思うけど。




「ようこそ、酉澤君!私達は君を歓迎するよ!宜しく!」
「正直、部員数がギリギリだから今更の新入部員も助かるんだよねー。」
「コラ、そんなん言っちゃアカンやろ!」
「ねぇねぇ、酉澤君って「G」に興味ある?『サンジューロー』とか『戦場のナイチンゲール』とか『怪獣使い』とか、世界を股に掛けて人を助けてるヒト「G」が色々いるんだけど、最近はやっぱり・・・」
「『ゴキゲンな蝶』、ですよね?実は俺・・・」




・・・少なくとも、即戦力にはなったらしい。
ちょっとずつでも、小さな事からコツコツと始めてみよう。
朱夏さんの言う、「この世界をちょっとでもワンダフルに出来る」人になれるように。








「はぁ、終わった・・・さぁて、まだいるかな・・・?」




それと・・・これはボランティア部に加入したからなんだが、あのコンビニで朱夏さんに会えるチャンスが無くなったかもしれない事。
少なくとも、コンビニに通い詰めるようになってから夕方まで高校にいた事なんて無かったから、もう帰ってるかもしれない・・・
偶然ながらあの人のワンダフルな秘密を知る仲になれたけど、所詮はコンビニの店員と客でしか無いからなぁ・・・
俺の最高のルーティンが犠牲になったのは本当に残念なんだが、これも朱夏さんみたいな人になる為だし・・・




「いらっしゃいませー!」
「あの、鳳さんってまだいますか?」
「朱夏ちゃんなら、もうシフト終わって帰っちゃいましたよ?」
「あっ、そうですか・・・じゃあ、これ買って帰ります。」
「お買い上げ、ありがとうございまーす!あ、ちなみに先週のデストロイアが出た路地裏には行きました?」
「いえ・・・」
「じゃあ、ちょっくら行ってみてはどうでしょ?一応俺も貴方も当事者ですから、ねっ?」
「?」




わけが分からないまま、朱夏さんがいないからってタダ帰りはマズイと思った俺はとりあえずレジの前の割引コーナーにあったポッキーを買い、コンビニを出る。




「ありがとうございましたー!
・・・これで良いんだよね?」








先週、デストロイアが現れた清水駅前コンビニの路地裏・・・だった跡地。
警察だか政府の人だか「J.G.R.C.」だかの調査は終わったが、当然まだ立ち入り禁止になっている。
一応は「ゴキゲンな蝶」と出会った、思い出の場所ではあるが・・・正直言うと、忌まわしい部分もまた無くは無い場所。
あの店長としても似たような場所のはずなんだけど、なんでわざわざ行くのをオススメして来たんだろ・・・








「・・・あっ、酉澤君!待ってたよ♪」




・・・そこで、俺は再び出会った。




「あや・・・お、鳳さん!?」
「朱夏、でいいよ?キミとあたしはもう、ただの店員とお客様じゃないんだし☆」
「え、えっと・・・朱夏、さん。もう仕事終わって帰ったんじゃ・・・」
「うん。だから店長にキミが来たら、あたしの事は言わずにここへ来るようにさりげなく言っといて、って頼んでたの♪びっくりした?」
「そりゃ、びっくりもしますよ・・・と言うか、まさか俺が来るのをずっと待ってたんですか?来ないかもしれなかったのに・・・」
「ううん、あたしはきっとキミは来るって思ってた。だってキミがあたし目的でずっと店に通い詰めてたの、とっくにバレバレだよ~?」
「うっ・・・」
「でも今日はいつもの時間になっても来なかったから、何かあったのかもしくは帰宅部を辞めて部活を始めたのかな?って思って、ココで待つ事にしたの。キミは絶対ココに来る、そう信じてたから。」
「そ、そうなんですか・・・それで、そこまで俺を待ってたのって・・・?」
「だって、あの日キミが最後に言いかけてたコト、まだ聞いてないし!それにさっきも言ったけど、あたしとキミはもうただの店員とお客様の関係じゃない、ワンダフルなヒミツの関係、でしょ?
・・・だから、今日からキミはあたしのお友達!って事でいいよね☆」




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「ゴキゲンな蝶」、または「最強の能力者」。
そして俺の最高のヒーロー、鳳朱夏さんに。

















「わたしは聖あげは!18歳!
血液型はB、誕生石はペリドット、ラッキーカラーはベイビーピンク、最近のブームは『イングリッシュティーラテ・ウィズ・ホワイトチョコレート・アド・エクストラホイップ』!
・・・はい、そっちのターン♪」




「・・・あの日、わたしはましろんに教わったよ。優しいっていうのは、強いって事なんだって・・・
『わたしなんか』?
そんな事言うな!!
そんな事誰にも言わせるな!!
ましろんには優しさって言う、誰にも負けない力があるんだよ!」






『へ、へぇ・・・外野の割にはやるじゃないか!?』
「・・・その『外野』って言うの、やめてくれる?
プリキュアや保育園のみんなは、わたしの大切な人達なの。だから、わたしは外野なんかじゃない!!」
『が、外野じゃなければ何だというんだ!?』
「保育士!!
そして『最強の保育士』も、『最強のヒーロー』も、目指す所は一緒・・・
それは、大切な人達を守る事!!」
『だからどうした!プリキュアですらない無力な君に何が出来る!?』
「だったら・・・だったらわたしは・・・!!」




『この輝きは・・・!』
『「はいっ!」』
『まっ、まさかぁ・・・!?』
「たけるくん、これで先生も最強になるよ!」
「・・・あげはせんせいは、もう最強だよ!」
「・・・ありがとう!」




「最強の保育士の力!見せてあげる!!」




「スカイミラージュ!
トーンコネクト!
ひろがるチェンジ・・・バタフライ!」




「アゲてひろがるワンダホー!
キュア、バタフライ♪」




「あげはせんせいが・・・プリキュア・・・!
キュアバタフライ、がんばれ~っ!!」
「りょーかい♪」




『なぁっ!?』
「アゲアゲなわたしには効かないよ!」




「ひろがる!バタフライプレス!!」
『スミキッタァ・・・』




『いっ、いい気になるなよぉ!?僕が更に本気を出せば・・・』
「いつでも相手になるよ。
でも・・・もしまた、わたしの大切な人達に手を出したら・・・許さない!!」




「いやった~!!キュアバタフライ、かっこいい~!!」
「うふふっ♪先生のコトは、みんなにはヒミツね?」
「うん!ぼく、大切なひとをまもる『最強』になるよ!!」
「うんっ!」








「・・・やばい、プリキュアって男が見ても面白いのか・・・と言うか何かヒロアカっぽいから見やすいんだよなぁ、『ひろプリ』って。でも確かにキュアバタフライ、あげはさんに朱夏さんが憧れるのも分かる。バタフライの万能さは控え目に言ってチートだし、あげはさんは本当によく出来たお姉さんだし・・・」




・・・そして、朱夏さんに勧められて初めて見たプリキュア、キュアバタフライこと聖あげはさんが登場する「ひろがるスカイ!プリキュア」を見て、俺がプリキュアにハマったのは言うまでもない。








これにて、本当におわり!
でも「GATHERING」はこれからはじまりはじまり、だよ♪

#バタフライエフェクトの出番です!
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