‐Geek‐ 好きこそモノの上手なれ
「・・・緋色真珠?確か四神に使う予定だった、四大元素の増幅装置ですよね?」
『ご名答!で、無限機関の重大な問題だったパワーソース問題、それをコンちゃんは解決してくれたの!いくら動かす為の理論や手段があったって、動かすエネルギーそのものが無かったら意味無いし、四大元素は安全に制御さえすれば無限に近いパワーを引き出せる事は、四神が証明してるしね♪』
「そうですね。つまり『こいつ』は、擬似的な機械仕掛けの四神の心臓のようなもの、って訳ですか・・・MOGERAの心臓部として組み込む事を考えれば、ある意味ぴったりだ。あっ、それとなるべく『こいつ』について把握しときたいんで、どう言う仕組みなのか詳しく。」
『え~っとね・・・基本的にはタイムマシン(仮)をベースにして、その中にはパワーソースとして緋色真珠を入れて、菜奈美ちゃんの「時間」と世莉ちゃんの「空間」を再現した勾玉みたいな形の機構を別々に造って組み込んで、四神と勾玉の関係性を再現する感じで緋色真珠を使用状態にして、発生した四大元素を「時間」機構でループさせて四大元素を無限に抽出・増幅させて、「空間」機構でオーバーフローしないように制御しつつ、四大元素を安定したエネルギーに使えるように重力子に変換して・・・』
そこから、パレッタによる「G」動力炉の解説は一時間程続き、関口は格納庫にあった設計図の裏に解説内容をメモし、常人にとっては理解しようとも思えない難解な仕組みを、関口は自己流の理論を組み立てて把握して行った。
「・・・つまり、「G」とはグラビティ・・・万有引力の事も意味しているが、そのエルゴ領域中のシュバルツシルト半径を構成するのは「時空」、もしくは「太極」・・・陽と陰が合わさり、森羅万象となる事と似る・・・「時空」が「時間」と「空間」に分かれた桧垣さんと四ノ宮さんと同じ理屈で、南極で桧垣さんと四ノ宮さんが一つになり、一時的に「時空」となったあのイリスを、擬似的にだが再現してみせている・・・ってわけですか。」
ーー・・・しかも加えて、同封のメモで言う『隠し味』としてパレッタさんの「想造」と、恐らく鳳君の協力を得てのバタフライエフェクト発生システムの内蔵・・・
『あたしのよくばりセット』どころじゃ済まないだろ、これ?実質の「時空」と「万物」と「真理」入りのミックスジュースなんて、劇薬すら生ぬるいブツだぞ?
俺が何十年も掛けて密かにやろうとしている事を、たかだか二年で簡易的にだがやってのけてしまう・・・やっぱり、あんたも「爾落人」なんだな?パレッタさん。
「そして、この闇鍋を貴女は約二年掛け・・・」
『・・・で、できたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
2042年。
パレッタの絶叫と共に、「「G」動力炉」は遂に完成した。
外見は変わらずガンヘッドのエンジン部だが、今まで空っぽだった動力部には黄白色の心臓にも見えるハートマークを彷彿とさせる形状の永久機関が組み込まれており、内部には重力子発生装置とエネルギー制御装置を兼ねた黒金色の球体が、更にその中に「時間」発生機構である深蒼色の、「空間」発生機構である薄紫色の大きな勾玉が太極図を成すように配置され、その中央にはコンドウから受け取った緋色真珠が鎮座し、緋色真珠の上では光るベイビーピンクカラーのアゲハ蝶が羽ばたいていた。
『やった・・・やったよ、関口君!!やったよ、あたしっ!!3年掛かっちゃったけど、まだ3年あるから大丈夫だよね?
そうそう、頼まれ事って言えば弦義君と「あの日のあたし」との約束も果たしとかないとね・・・』
パレッタの右手には、「G」動力炉と平行して想造していた、龍が巻き付いているかのようなレリーフを施された青色の鞘・・・関口とのWin-Winな対価として彼から与えられた「「G」無効化装甲」を元に、「通貫」の蘭戸弦義の愛刀「羅無蛇」に収まるべく生まれた「無吸」の「蓋」・・・名を「不動」が握られており、不動には過去の自分へと向けた一通の手紙が、輪ゴムで巻かれていた。
『「G」を無効化するから、普通なら「時間」の「G」を使ってもタイムスリップは出来ないかもしれないけど・・・だからこそ、「原因」より先に「結果」を作り出す「因果」があれば、どうにか出来るはず!
・・・よしっ!じゃあ・・・「G」動力炉、起動!!』
そしてパレッタが動力炉の下部にある、「!」マークが描かれた赤色のボタンを押すと、動力部球体内の勾玉が円弧(アーク)を描いて回転を始め、緋色真珠が輝き・・・静かに、だが重厚な物音と共に「G」動力炉が稼働し始めた。
『よしよしよし・・・!ちゃんと動いた!あとは「ン・マ・フリエ」をビーコンにして、不動ちゃんを2029年12月31日AM8時8分のあたしの元に送るだけ・・・大丈夫!あややちゃんを、バタフライエフェクトを信じて・・・
なんとか、なれーーー!!』
不動を挟む形で両手を合わせての祈りを済ませた後、パレッタは左手に持った杖を翳しながら、不動を「G」動力炉へ向けて投げ付ける。
すると、「G」動力炉の表面に突如として時空の歪みが発生し、歪みから発せられた電撃が杖に当たると共に、電撃に引き寄せられるように不動は歪みの中へと吸い込まれて行き、時空の歪みもすぐに消え失せた。
『っ・・・と!ほんとになんとかなった!「G」動力炉の試運転、大成功!!やったね、あややちゃん☆あっ、喜んでる場合じゃない!早くスイッチオフオフ・・・!』
時間を越えた宅配の成功を喜ぶ間も無く、慌ててパレッタは「G」動力炉の下部の「!」ボタンを押し、動力炉を停止させる。
このボタンは「G」兵器の動力炉として使用していなくとも、単体で稼働させる為の手動ボタンであり、当然ながら稼働させ続けるとオーバーフローを起こし、如何なる事態を引き起こすか分からない都合、主に試運転と不動の過去への発送を目的に設置されたものである。
『ふー、危ない危ない・・・これだけスゴい「G」があったら、それだけで「G」を引き寄せちゃうもんね・・・巨大「G」にこのアトリエを壊されちゃうのだけは勘弁だよ~。
さて、と!あとはこの子を関口君に送るだけ・・・あっ、でもその前に協力してくれたチェリィとコンちゃんとあややちゃんには見せてあげてもオッケー、だよね?じゃあ、早速関口君に・・・』
「いやぁ、改めてすんませんねぇ。俺もヤボ用が終わったら日本には帰ろうかと思ったんですが、ワケあってアメリカで色々作る事にしたんで・・・」
『ほんとだよー!関口君探したり、「この子」送ったりするの、地味に苦労したんだから~!まっ、ここでも持つべきものは友!発送はラピスちゃん達がやってくれたし、メカニコングの開発チームにイヴァー君がいてくれたのもちょうど良かったし!』
「まさか、イヴァンコフとも知り合い・・・と言うか先祖からの仲だったとは意表を突かれましたよ。」
『だよね~。140年くらい前にあたしが顧問やってた、LU(ロンドン・ユニヴァーシティ)オカ研メンバーのダイコー君、その子孫のイヴァー君が関口君と一緒にいるなんてね~♪』
「イヴァンコフとは『機動戦士、もしくは鉄の城をこの手で作りたい』、と言う思いに共感した仲ですが・・・こうしてパレッタさんとまた繋がっていたとは、世界は狭いと言うか。」
『イッツ・ア・スモールワールド、だからね☆あたしも早く「あの子」の活躍が見たいから、チョチョイとモゲちゃんのボディを完成させてよね?』
「うーん、天下無敵のスーパーロボットにしたいんで手抜きは絶対したくないのと、ここにいる以上は他にも色々やる事がある都合で、チョチョイとは行きませんが・・・2046年までに必ず完成はさせますよ。」
『じゃあ、また約束だよ?あっ、もし「あの子」で困った事があったら連絡してね?』
「はい。改めて、色々とありがとうございました。それじゃあ、俺はそろそろ寝ないと明日に響くんで、お暇します。おやすみなさい。」
『おやすみなさ~い!』
パレッタとの電話を切った関口は、白衣の内ポケットから煙草とライターを取り出し、全館禁煙の都合で吸えなかった煙草を吸いに行く為にドックから出て、外の夜風を浴びながらライターで煙草に火を付け、体中を紫煙で満たす。
「・・・さぁて、パレッタさんのお陰で不安要素が一つ消えたどころか、だいぶ早めに『アレ』が手に入った以上、俺がやる事は決まってる。MOGERAのボディの完成と、そのパイロットの捜索・・・
ったく、どこふらついてんだよあのシスコン息子はよ!」
2年前の「ヤボ用」から行方を眩ました、いつかの「仮想敵」との戦いで必ず立ち上がるMOGERA、そのパイロットになる予定である男・蒲生凱吾の姿を脳裏に浮かべながら、アメリカの何処かにいる彼への文句を夜空へ吐き捨てる関口。
そのまま一服を終え、吸い殻を灰皿代わりの缶の中へと始末した関口はドックに戻り、パレッタとの電話中にずっと彼の目線の先にあった、彼女からの依頼物・・・「「G」動力炉」を眺める。
関口の野望は、これでまた一つ次の段階へと進んだのだった。
「・・・俺、もしかして順調にマッドサイエンティストになってたりする?」
「そうだな?」
「!?」
すると、その時。
あまりに唐突に関口の背後に、2人の人影が現れた。
1人は黒を基調にした紫色の長髪に、常世離れした雰囲気とサディスティックなオーラを放つ、青眼の美女。
もう1人は、薄汚れた白衣を着た白髭と皺が目立ついかにもマッドサイエンティスト、と形容出来る外見の老人。
だが、関口は双方に何故か見覚えがあった。
「・・・村崎、さん?なんか色々おっきいけど・・・」
『あら、開口一番にセクハラ発言?訴えてやろうかしら?それに、そんな名前で呼ばれるのは初めてね?何だかむず痒いんだけど?』
「そうだろうな。お前さんの前世、と言うより元ネタの一つだからな?」
『やだ、前前前世って事?こんな冴えない男と「誰そ彼時」に運命的に再会しても、ちっとも映えないわよ?』
「そう言うな、わしにとっては昔のわしなんだ・・・」
「昔の、わし・・・まさか、そっちはやっぱ未来の俺だってのか!?バケモンみたいになった!そして隣にいるのは・・・「時空」の爾落人!?」
「ナイスミドルと呼べ!未来の自分だぞ!まぁその察しの良さ、流石は記憶通りだな?なら、説明はいらんな・・・これから、『未来からのメッセージ』をお前に教えてやる。その「G」動力炉を搭載し、MOGERAはいつ大地に立つのか。後藤銀河はいつ「万物」と戦い、どうなるのか。お前はいかにして、ナイスミドルなマッドサイエンティストになって行くのかをな?」
「・・・俺、ドクじゃなくてビフだったってワケ?」
それから1年後、2043年1月。
パレッタの元に、関口から驚愕の報告が入った・・・
『あの~、ちょっと言いにくいんですが・・・「G」動力炉、パイロットと一緒に約2000年後へ送っちゃいましたぁ!』
『・・・ゑ?』