‐GIANT‐
両手を振り上げ、勝利の雄叫びを上げようとするレッドキングだったが、何処からともなく唐突に起こった火炎噴射を後頭部に受け、レッドキングは再び地面に倒れる。
クオォコォコォコォ・・・
暫し後、炎と共に現れたのは人の形に似たカブトガニとしか形容しようの無く、他に体長程に長い尾が目立つ深緑色の巨大「G」・キングクラブ。
「透明」の「G」を持つこの巨大「G」は、レッドキングとキングザウルス三世の戦いを透明化しながら岩山の陰で傍観し、勝利すると踏んでいたレッドキングがキングザウルス三世を倒し消耗・油断するその隙を、虎視眈々と狙っていたのだった。
『あっ!いきなりまた巨大「G」!しかも今度はズルいヤツが来たわね・・・う~ん、あたしとしては黄緑の怪力「G」に頑張って欲しいわ!巨大「G」でもズルいヤツは好きじゃないし!』
パレッタに密かに応援されていると知らず、キングクラブの眉間から噴射される火炎攻撃を受け続けるレッドキング。
全身を焼く炎に苦しみながら、レッドキングは必死に尾を無我夢中で振るい、四回目の一振りがキングクラブの右足を捉えた。
尾に足を取られ、キングクラブが転んで体勢を崩した隙にレッドキングは立ち上がり、不意打ちへの報復にキングクラブの胴を何度も蹴り付ける。
クオォコォコォコォ・・・
が、キングクラブは再び体を透明化させ、レッドキングの蹴りを回避。
何もいない地面を蹴り、キングクラブがいなくなった事に驚き、苛立ちながらレッドキングが辺りを見渡すのを横目に、透明化したキングクラブが両手の鋏を広げながら、再度レッドキングの背後を狙う。
『またいなくなったぁ!あ、でも光の屈折を変える光学迷彩方式なら、よーく見れば・・・』
キングクラブの透明化のカラクリを暴いたパレッタが、レッドキングの周囲を凝視すると、レッドキングの背後の木々や空が僅かに歪んでいた。
間違いなく、姿を消したキングクラブだ。
『お~い!どくろ怪獣~!後ろ後ろ~!!』
パレッタがレッドキングに警告したその直後、キングクラブは鋏をレッドキングの首に向けた・・・その刹那。
パレッタからの警告を知ってか知らずか、レッドキングは自棄気味な様子で振り返って右手を振るい、偶然キングクラブの顔に右手の肘が直撃。
予想だにしない右フックの一撃にキングクラブは透明化を解いてしまい、怒り心頭のレッドキングはキングクラブに馬乗りになると、キングクラブを何度も何度も殴り付ける。
クコォォォン・・・
続けてレッドキングはぐったりとして抵抗しなくなったキングクラブの長い尾を掴み、高々と持ち上げては地面に叩き付け・・・を繰り返し、最後に森の方へとフルスイング。
木々を薙ぎ倒しながらキングクラブは森の中に倒れ込み、三度体を透明化させてレッドキングに追い打ちされないよう、一目散にバトルフィールドから逃げ去って行った。
ギィィ、ゴオオオオオォ・・・
キングクラブに邪魔された勝利の雄叫びを、今度こそ島中に響かせるレッドキング。
二体の巨大「G」を力づくで返り討ちにしてしまうその姿は、荒神島の王者に相応しいものであった。
『おぉ~!また勝っちゃった!直接見る巨大「G」同士の戦いは、やっぱスゴいわね♪しかも街中と違って、秘境の中で繰り広げられる戦いって言うのがあたし的にツボ☆今はもう、こう言う秘境って言える場所がほぼ無くなっちゃったし、500年くらい前に行ったギアナ高地か、300年前に潜った日本海溝の底がまともは秘境って言える場所かなぁ?』
バァゴオオォォォォォ・・・
・・・と、レッドキングの背後からまたしても一体の巨大「G」が現れた。
三本の山羊の角を頭頂部・揉み上げの部分に付け、背中と太股に鋭い刺を、赤混じりの黄色い体毛を頭と背中の三本の刺から生やし、左手の中指の爪のみが肥大化した、何処か愛敬を感じる顔立ちをした茶色い巨大「G」だ。
『まだまだ来ちゃうの、巨大「G」!今度のは・・・かっこいいけど、かわいい感じもある・・・かっこかわいい系だね♪』
巨大「G」に気付き、振り返ったレッドキングにとっての第三ラウンドが始まる・・・かと思いきや、レッドキングは巨大「G」に対して見て分かる程に怯え、先程までの天衣無縫さは何処へやら、体を震わせながら後ずさりする。
『あれ?怯えてる?あんなに強いのに・・・?もしかして、あっちの羊の巨大「G」の方が強いのかな?』
ギィィ、ゴオォォ・・・
結局、レッドキングは巨大「G」に一切攻撃する事の無いまま、そそくさと去って行った。
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