‐GIANT‐
30世紀も終わりに近く。
地球中が「G」に満ち、「国」と言う境目が無くなった世界で、人々は各々の信じる者の元に集ってグループを形成。
まるで戦国乱世の時代が再度訪れたかの如き、群雄割拠の様相を呈していた・・・
『ついた~!!ここが、「G」のパラダイス!荒神島ね~!』
そんな世の中で、昔も今も変わらずに自由な立場を保ち続けながら、「G」とは何かを探求する為に旅をしている「想造」の爾落人・パレッタ。
今回、その答えを見つける為に彼女が訪れたのは、太平洋に浮かぶ孤島・荒神島。
約一ヶ月前、ただの無人島だったこの島に「ダークマター」と呼ばれる強大なエネルギーが宇宙より降り注ぎ、それと共に複数の巨大「G」の目撃例が多発。
巨大「G」ならば2010年の「G」発見前から世界中で報告されていたが、閉塞的な場所で幾つもの巨大「G」が目撃される例は稀であった。
しかし、世界の各勢力が未だ統一されていない事から調査隊を派遣する余裕が無く、尚且つ世界が「G」に満ちた事で巨大「G」への希少さも脅威も薄れていた事もあり、巨大「G」の大脱走でも起こらない限りは半ば放置状態となっていたこの島に、ダークマター込みで興味を持ったパレッタが訪れたのだった。
『あの木もこの花も、見た事無いのばっかり!まさにアンバランス、って感じになってて面白いわね☆二千年は旅して、ここ数百年で地球中が「G」が一杯になって来たけど、こんなまさにカオスな場所は中々無かったから、歩いてるだけでワクワクが止まんない♪』
ダークマターの影響か、有史前の時代に戻ったかのような雄大な自然が広がる荒神島の森をパレッタは当ても無く歩く。
砂浜に停泊させた、光学迷彩を搭載した小型多機能船「HEART」からの発信機があれば、鏡型転送機でいつでも船に戻れるのもあるが、当て無く歩いても何かしらの「G」に遭遇する・・・それ程この島が「G」の宝庫状態になっている事が、パレッタには分かっていたからだ。
・・・ギゴオオォォ・・・
『んっ?あの音、もしや巨大「G」の鳴き声?じゃあ早速、ごたいめ~ん!!』
森の奥から聞こえて来た、「何か」の声だけを当てパレッタは野良道をウキウキとした様子で走り、暫くして緑がまるで見当たらない程に殺風景な荒野に到着。
岩陰に隠れながら、パレッタはあるものを目撃した。
『おぉ~っ・・・!!』
ギィィ、ゴオオオオオォ・・・
荒野には二体の巨大「G」がおり、パレッタが聞いた「声」の正体である巨大「G」が咆哮を上げる。
全身蛇腹状になった、頭が小さく足が太い見事な三角形体型をした黄緑色の体が特徴的な、正しく荒々しい野獣の顔立ちをした二足の怪獣。
「剛力」の巨大「G」、レッドキングだ。
キィィィィオンッ・・・
レッドキングと対するのは、背中に一列の鰭と二本の長く立派な白い角が頭に付いた以外は、全体的に竜脚類の恐竜に似た、四足歩行の黒い怪獣・・・「障壁」の巨大「G」・キングザウルス三世。
今、二体の巨大「G」が雌雄を決しようとしていた。
『早速やってるやってる・・・!「G」のパラダイスなんだから、巨大「G」がいて当然よね・・・!』
レッドキングは足元にあった巨岩を逞しい両手で持ち上げ、キングザウルス三世へ投げ付ける。
しかし、キングザウルス三世は角から放出したエネルギーを使って全身にシャッターのようなバリアを張り、巨岩をいとも簡単に弾く。
地団駄を踏んで怒りをあからさまに表しつつ、レッドキングはまた別の巨岩を持ち上げては投げ付けるが、キングザウルス三世の障壁は巨岩を悉く弾き、投げる岩が無くなったレッドキングが慌てる間にキングザウルス三世は突進を仕掛け、レッドキングの左足を二本角で突いた。
ギィゴアアアア・・・
手痛い一撃にレッドキングは地面に倒れ、キングザウルス三世は再度突進を仕掛けて今度はレッドキングの胸を角で突く。
苦悶しながらもレッドキングはキングザウルス三世の角を掴み、胸から引き抜くと同時にジャイアントスイングの体勢でキングザウルス三世の体を軽々と投げ付け、キングザウルス三世はパレッタがいる場所と正反対の岩山に叩き付けられる。
『おわっと!?こっちに投げられたら危なかったぁ・・・それにしてもあの首長の方の巨大「G」のバリア、凄い堅さね!世莉ちゃんの結界にも匹敵するかも☆でも・・・「穴」はあるっぽいわね。』
激突の衝撃で降り注ぐ落石を、キングザウルス三世は角からのエネルギーを放射状の光線にして破壊し、迫るレッドキングには口からの赤い光線で迎撃。
再び障壁を張り、レッドキングの攻撃に備える。
一方、レッドキングは相も変わらず無策でキングザウルス三世に殴り掛かるが、障壁は破壊出来ずむしろ障壁の反発に再び苦悶しながら後退し、次に足蹴りを仕掛けるも同じ結果に終わり、キングザウルス三世の三度目の突進を何とか回避するも、キングザウルス三世は踵を返してレッドキングに四度目の突進を仕掛けた。
キィィィィオンッ・・・
後ろには先程キングザウルス三世を叩き付けた岩山があり、困窮極まったレッドキングはジャンプで突進を回避。
そのまま飛び蹴りをキングザウルス三世に仕掛けるが、レッドキングのキックは障壁に阻まれ・・・る事は無く、キングザウルス三世の二本角をへし折った。
キィィィンッ・・・
角を折られたキングザウルス三世の障壁は消え去り、先程までの猛進っぷりは何処へやら、悲鳴を上げてすっかり萎縮したキングザウルス三世は文字通り尻尾を巻いて、レッドキングから一目散に逃走。
そう、キングザウルス三世の障壁は「頭部の上部付近には張れない」「角を破壊されると障壁を張れなくなる」と言うウィークポイントがあり、レッドキングは偶然その弱点を突く事に成功したのだ。
お世辞にも知能指数は高くないレッドキングだが、それを補って余りある剛力と直感こそがレッドキング最大の強さであった。
ギィィ、ゴオオオオオォ・・・