‐Geek‐ 好きこそモノの上手なれ











「・・・あと、これは俺の命を賭けても本当にみんなに伝えたいやねんけど・・・アルマや、実は現「組織」代表の松田明日香はあくまで「組織」の表向きの代表でしかなくて、本当の代表は「複製」の爾落人「蛾雷夜」や。
こいつは「殺ス者」の対になる存在で、最初に伝承に登場するのはあのアトランティス文明からで、チェリィ誕生のきっかけになった反物質の研究もこいつがやってたらしいで。
んで、その目的は「創造」の「G」を生み出し、フェネクスと同様に「万物」へと至る事でな、四神もその目的の一環やった。『大洋の王』を名乗った蛾雷夜は、「万物」の失敗作の「同化」の爾落人を生み出しては『アトラス王』に仕立て上げ、アトランティス文明を支配させ続ける中で、最後の「同化」の爾落人にして最後のアトラス王・ゴゥダヴァの時代に生まれたのが四神やったって訳や。やけどゴゥダヴァはマイトレヤを愛してしまい・・・」




2046年・6月3日、大阪某所。
ありふれた住宅街に佇む一軒家・・・コンドウの実家、その自室でコンドウは1人パソコンに向かってただひたすらに、雄弁に・・・だが内心焦りながら語っていた。
2016年に初めてガメラを見た時から、30年の年月を掛けて調べ上げた、四神と言う「G」とそれに纏わる人々の・・・その中で図らずも、いや必然的とも言えた「組織」の秘密を。




「・・・蛾雷夜は『緋色真珠』を作り、四神に取り込ませる事で更なる至高の「創造」に至ろうとした。やけどそれがかえって、四神の暴走と・・・自分の野望を自分で打ち砕く原因になったって言えなくは無いやろな。
それで緋色真珠は、いち早く自意識を取り戻したアンバーが体内からどうにか排出した物と、蛾雷夜が予備として作ってた物の二つが残されて、アンバーの物は時代を経てバビロニアの奴隷の元に渡り、あの「四象」の「G」・ダイモンへと変貌させ、「錬成」の魔女ことエリクシアがダイモンから奪ってアテネに保管し・・・」




このコンドウの一大暴露大会の様子は、リアルライブ形式で「とある場所」に送信されており、全て送信先に録画されていた。
無論、これは全てコンドウの指示によるものである。






「・・・俺もただの「G」オタクからずいぶんと「G」に深々と関わって、こうして普通の人が知らない真実を知ってもうて、話してるし・・・この一秒後には、「組織」辺りに殺られるかもしれへん。
やけど、俺は「G」に関わった事を微塵も後悔してない。「G」は、ただのオタクとして一生生きて行くんやと思ってた俺に、素晴らしい経験や人との繋がり、そして「コンドウ」としての役割を与えてくれたんやから。
それに、俺は思う・・・この世に、悪が栄えた試しなんか無い。
四神は今もガイアの「G」の中で俺らを見守ってて、世界が危機に陥った時、いつか必ず四神が再び姿を現す日が来る・・・ってな。
最後に、俺を「G」の世界へ導いてくれた師匠のパレッタさん、四神に関わった全ての方々と・・・四神達、特に「僕らの守護神」のガメラ。
そして、この動画を見て下さった全ての人に・・・心より、感謝の言葉を。
ご清聴、ありがとうございました。」




一時間程して、コンドウの一大暴露大会は終わり、深々とした一礼を終えたコンドウは顔を起こすと録画終了の合図として手で×字を作り、深呼吸をして酸素を補給する。




「・・・ふーーーっ、疲れたぁ・・・こんな喋るん、Gnosisのオブザーバーで忙しかった10年くらい前以来やわぁ・・・やっぱ口下手な俺は、文字に限るな。さぁて、後は・・・」
「・・・用事は、終わりましたかな?」
「!?」




・・・と、その時。
コンドウの背後に、唐突に1人の老人が現れた。
60代程の平凡な外見に反して、何処か得体の知れない雰囲気を漂わせる男だ。




「あの、一応聞いときますけど・・・あんた、誰?」
「これから死ぬ貴方に、名乗る必要はありません。「事遅」、それだけ覚えて死ねば宜しい。」
「死ねば?冗談きついですよ、お爺さん?ボケ始まってる自覚あります?」
「ボケているのは君の方でしょう?〇〇さん?」
「・・・いやいやいや、なんで不法侵入者がこんなただの一般人の本名を知ってるんですか?」
「少なくとも、ただの一般人ではありませんね?Gnosisのオブザーバーだったと、ついさっき言っていたのでは?それに君自身が重々分かっていると思いますが、君は蛾雷夜様について色々と知り過ぎた・・・その罰を受けて貰うべく、あえて貴方の死を宣告してから抹殺する事にします。貴方がこの部屋で話し始めてからすぐにこの家に爆弾を仕掛け、爆破寸前で「事遅」させておきました。後は私の意志で、いつでも爆破出来る状態にある。」
「つまりいつでも殺せる、ってわけやな・・・じゃあもう、かしこまる必要無いな?蛾雷夜の使いっぱしりのジジイ。」
「ジジイ呼ばわりとは、やはり関西人は礼節を弁えない民度の低い連中ばかりだ・・・」
「別に関東人も民度高いわけちゃうけどな?つうか関東ローカルの癖におおっぴらに地上波放送扱いしたり、関東一帯の情報さえ言ってれば良いって思ってるバラエティみたいな傲慢さを、お前からは感じるんや!」
「・・・全く持って意味不明だが、個人の意見を集団の総意だと思わない事だね?」
「蛾雷夜みたいな独裁者こそが正しいと思い込んで、自分で何があかんのかを考えるんも止めた、ただのカカシに言われようが説得力無いわ。この事、松田明日香さんにもちゃんと伝えとってや?」
「・・・我らが蛾雷夜様及び、明日香代表への侮辱・・・俗物の分際で、これだけで万死に値するぞ・・・?」
「ってか、俺を殺す気ならとっととやれや。どうせこれ始めたらいつかヒットマンは来るやろって思ってたし、やからオカン逃がしてから始めたし・・・あ、ちなみにこのライブは回線やら電波やらを、お前らもご存知の『とある人』の協力で「転移」させながらしとるから、発信先の特定は多分無理やで?残念無念、また来週!」
「・・・分かりました。私としても君とはもう一秒たりとも話したくないので、お望み通り死んで貰いましょう。それに我らの情報が知られようとも、蛾雷夜様に敵う者などいない。所詮始まりは蛾雷夜様の複製品でしかない爾落人や人間共が、どれだけ抗おうとも無力。弱き者の言葉など無意味であり、強き者の言葉こそが法となる、それが世界の真実なのだからね・・・あと、蛾雷夜『様』と呼びなさい。俗物が。」
「・・・じゃあ、最後に一つ。コピペしか出来ひん、偉大なる創造主の蛾雷夜様に絶対に伝えとけ・・・
とっととくたばれ、クソ野郎。」





コンドウのこの言葉から、9秒後。
「事遅」の男が消え、彼の右手のスナップ音と共に、コンドウの家は爆炎に包まれ・・・後には、炭しか残らなかった。










『・・・・・・っ!!』
「心中察するぞ、「想造」・・・やはり、貴様の存在は何人足りとも許す訳にはいかないな・・・蛾雷夜。」




同刻、大阪・天王寺に建つ「日本一高いビル」だった時期もある大阪のランドマークの一つ・あべのハルカス。
普段なら見学ツアー等で無ければ入れない、300mもの高さに位置するあべのハルカス屋上のヘリポートには、大粒の涙を流すパレッタと「複製」の爾落人・加島玄奘がいた。
震えるパレッタの両手はタブレットを握っており、彼女の前には玄奘が「複製」した「転移」による僅かな空間の歪みが発生し、タブレットの一面に映っていたのは僅か数十秒前までコンドウの自室を映し、今はただのノイズに変わり果てた、コンドウの最期の光景であった。
コンドウの命を掛けたリアルライブの話先はパレッタであり、「転移」の協力者は玄奘だったのだ。




「「転移」を閉じるぞ?」
『・・・うん、お願い・・・』




玄奘は右手を翳して「転移」を止め、空間の歪みが消えると共に接続先が無くなったタブレットはリアルライブを強制終了し、それまでの暴露映像は自動的に「Zプラン」のタイトルで全て保存されていた。 




『・・・これで、コンちゃんとの繋がりは本当に無くなったんだね・・・』
「だが、記憶(メモリー)は遺された。それにお前が、我らが覚えてさえいればあの男の存在は消えぬ。あとは明後日、生き延びるだけだ。」
『・・・そうだね。コンちゃんからも頼まれたもんね・・・』




パレッタは右手を涙を拭い、タブレットの中に記録された一つの映像を再生する。
それは数日前に届いた、コンドウからのメッセージだった。








『あっ、師匠。こんにちはです。
突然なんですが、6月3日に俺の四神研究と「あいつら」についての研究成果発表をライブ配信して、そのままアーカイブ化したいと思ってますんで、0時になったらあべのハルカスの屋上に来て下さい。そこにはレン伝いで知り合った協力者の加島玄奘さんがいるんで、その人からタブレットを受け取って下さい。この人に色々「転移」して貰いながらやるんで、師匠の事は絶対バレませんので安心して下さい。
・・・まぁ、俺はもしかしたら危ないかもしれないんで、一応しばらくは俺に会いに来ないで欲しいのと、配信中に何があっても絶対助けに来ないで下さい。
あと、死亡フラグになるかもやけどちょっとしたメッセージを・・・
パレッタ師匠、貴女はレンと共に「緋色真珠」を正しい目的に使った最高の偉人にして、俺を「コンドウ」にしてくれた最大の恩人・・・だから、絶対に死なないで下さい。
ちなみにもし協力したら命だけは助けてやる、ってヒットマンに言われても俺は従わないつもりです。どうせ奴らに従った所で、散々使い倒されてボロ雑巾のように捨てられるだけですからね・・・それなら、あいつらに引火するくらい燃えてやりますよ!
でも、さっきも言いましたけど師匠は絶対死なないで下さいね?少なくとも「G」動力炉が日の目を見て、こんなスゴいモノを師匠が造ったんや、ってみんなから崇め奉られる約2000年後までは絶対に!
・・・はぁ、でもこれ言ったらまた死亡フラグになるんやろうけど・・・まだ死にたくないなぁ。やっぱ、死ぬんは怖いわぁ・・・!もしも俺が死んだらオカンとアネキと甥っ子姪っ子、『GALLERIA』に集った『ガレリアン』のみんな・・・レンとか紀子とか朱夏さん、sekiさんと怪獣FさんとデルタンダルA君、それにGnosisやご縁の出来たヒト「G」の皆さんとかは悲しませるよなぁ・・・まだまだやりたい事もあるし、あのアニメも映画も特撮もまだ見てへんし・・・ってか、死ぬなんか嫌に決まっとるわ!!このアホがぁ!!
はぁ。死んでも幽霊になるか、記憶持った状態で転生出来たらええねんけどな・・・そや、転生したら女になろうが人生やり直し出来るから、是非ともお願いするわ!こう見えてコンドウとしてちょっとは世界平和の役に立って来たし、それくらいしてくれてもバチ当たらんやろ!師匠もそう思いますよね?
まっ、世迷い言はこれくらいにして・・・明後日はお願いします、師匠。
それじゃあ・・・さよなら。』







『・・・大丈夫、全部ちゃんと終わったよ。コンちゃん。』
「それで、先程のメモリーはどうする?蒲生元紀か汐見翔子辺りに渡すか?」
『ううん、多分内容だけならGnosisの資料とか、7年前のニューヨーク会談の時にサイコロ君が貰った資料と変わらないと思う・・・だからこれはタレコミって言うよりコンちゃんからの遺言状・・・いや、「挑戦状」。だから「この動画」を、出来れば関口君が言ってたあいつらとモゲちゃんが戦う約2000年後くらいまでは、消させるわけにいかないの。』
「確かに。単なる情報元として他に渡そうとも、いずれ検閲を受け抹消される可能性は高い。では、お前が隠し持っておくのか?」
『いや、「挑戦状」は出さないと意味が無いし、コンちゃんはこの動画をどうするかはわざと言わなかった・・・つまり、あたしに全部任せてくれた。弟子の頼みは、師匠なら応えないと・・・!
あっ、そうだ・・・ねぇ、カシマシ君。一つお願いがあるんだけど・・・』
「・・・カシマシ君?」








翌日、大阪のコンドウの実家だった場所。
世間には「出しっぱなしにしていたガスに煙草の火が引火した」と言う事になり、立ち入り禁止のパーティションが張られた焼け野原、その現場が見える路地裏にパレッタと玄奘の姿があった。
パレッタの右手には「Z」と読める黒い模様の入った、全体をかつて自分が生み出した「エアロ・ボット」に使用されていた、パレッタ精製の新金属「ペダニウム」で構成された、白い楕円形のカプセル・・・「Z」カプセルがあった。




『じゃあ、お願い。カシマシ君。』
「本当に良いのか?すぐに蛾雷夜達に知られる可能性があるぞ?」
『いや、きっと大丈夫。あたしオリジナルのマテリアルのペダニウムで造ったから、大地震があっても簡単には壊せないだろうし、この「Zディスク」を見てあいつらがコンちゃんのスゴさを思い知るなら、それだけで「挑戦状」の役目は果たした事になるし。逆にもうコンちゃんに興味が無いなら、もうここには来ない筈だよ?』
「つまり『木を隠すなら森の中』、と言うわけか。コンドウの置き土産を、コンドウが死んだ地にあえて隠す・・・確かに、意表を突くと言う点ではある意味隠し場所として最適か。」
『そう言う事!だから、早くやっちゃって!』
「承知した・・・」




パレッタからZカプセルを受け取った玄奘は「転移」を使い、即座にZカプセルを焼け野原の地下に転送。
こうして、Zカプセルはコンドウの暴露映像「Zプラン」が入ったCD-ROM「Zディスク」を中に秘め、いつか必要となる日までコンドウの置き土産を保存するタイムカプセルとなったのだった。




『・・・今までありがとう、〇〇君。』




一筋の涙を流しながら、コンドウの真の名と感謝の言葉を呟き、パレッタは玄奘と共にその場から消えた。
そして、その日の夕刻。
コンドウの母の手により、「GALLERIA」上で管理人・コンドウの死、コンテンツのアーカイブ化及び、近日中の全コンテンツの更新停止と掲示板の閉鎖が告げられたのだった。
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