‐Geek‐ 好きこそモノの上手なれ
「・・・そうして、貴女は2019年の桧垣さんに会いに行った、と。」
『そうなんだ~!そこから折角だから、って事で四神絡みの出来事があった時に飛んでから帰ったんだよね~。菜奈美ちゃんからはひみつ道具のタイムマシンじゃない!ってこってり怒られたし、2017年のギャオス事件の時は「その時」のあたしもいたから、上手く会わないように苦労したなぁ。』
「過去の自分に鉢合わせるってのは、タイムトラベルもののタブーですからね。それが自分の親とかだと余計ややこしくなるのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見れば猿でもよく分かりますし。」
『うんうん、菜奈美ちゃんはまさにあたしにとってのエメット・ブラウン博士!持つべきものは心の友よ~♪まぁ・・・エアロ・ボットって言うあたしの中の黒歴史に近いモノも見る事にもなったけど、アークちゃん誕生の瞬間もまた見れたし、この後の事を考えたら「四大元素」を自在に使う四神のアレコレを見れたのも、良い経験になったと思うよ☆』
「そうですねぇ・・・それこそドクはタイムトラベルはしない方が良い、と言う結論に至りましたし、タイムパラドックス問題を考えれば賛成ではあるんですが・・・やっぱり、過去の世界に飛んで今では失われてしまったモノや歴史が変わる1ページをその目にする事に、興味が湧かないかと言われれば嘘になる・・・!」
ーー・・・とりあえず、俺なら平安時代にでも行って村崎さんが生まれる瞬間に立ち会おうかな?
いや、折角少しは歴史の修正が出来るのなら・・・
『・・・関口君?お~い、関口君~?聞こえるか~い?』
「・・・あ、すみません。ちょっと光源氏的な妄想を・・・それは置いといて、いつ頃の未来に戻ったんです?」
『あたしがタイムトラベルした直後だから、アトリエに戻ったのはちょうど1分後くらいかな?あの時のチェリィのぱちくり顔、みんなにも見せたかったな~!で、そこからあたしは本格的に動力部造りを始めたんだけど、「時間」と「空間」の再現なんてやった事無いし、菜奈美ちゃんと世莉ちゃんに詳しく聞くと怪しまれるかもだからヘルプも出来なくて、結局二年は掛かっちゃったなぁ~。
あっ、でもその間にコンちゃんが珍しく自分から動いてくれたんだ☆いやぁ、あたしがどうしようって思ってた所を見事に何とかしてくれたし、やっぱり持つべきものは心の友だね♪』
「へぇ、コンドウ君がオフ会と特撮・アニメ絡み以外で、ねぇ・・・その武勇伝、聞かせて貰っていいですか?」
『はいさ!聞かせてあげよう、あの子の武勇伝!』
「・・・瀬上さん。いや、あえて元「G」ハンターと見込んでお願いします・・・『緋色真珠』を、自分に譲って下さいっ!!」
兵庫県・神戸メリケンパーク。
1995年に起こった、「第二次関東大震災」に並ぶ大地震災害「阪神淡路大震災」から20年目を迎えたのを機に生まれたシビック・プライドメッセージ「BE KOBE」、そのモニュメントの前でコンドウは人目も憚らずに、瀬上・菜奈美の前で見事な土下座を披露した。
「・・・おい、菜奈美。俺はお前が神戸観光に行きたいって言うからここに来て、ちょうどコンドウが来てて会いたいって言ってる、そう聞いたからとりあえず来たんだぞ?なのになんで、土下座してまでの交渉になってんだ?」
「ごめん!緋色真珠を譲ってあげて、って私だけが言っても無理かもしれないから、コンドウ君が直談判すれば心動くかなぁ・・・って思って。ほら、サプライズとかドッキリみたいな!」
「いや、サプライズでもドッキリでも無いだろ!ただの不意打ちじゃねぇか!」
「ちなみに、穂野香も『まだ緋色真珠を隠してあるなら、コンドウさんに譲って下さい!お願いします!!』って言ってたわよ。」
「・・・なるほど、そう言う事か。なんでお前がこいつの連絡先を知ってたのか、そもそもなんでこいつが俺がまだ緋色真珠を処分してない事を知ってるのか、大体見えたぞ。あんの元ファイヤーガール・・・で、一応聞いとくがなんで緋色真珠がいるんだ?」
「それは・・・禁則事項なんで詳細は言えませんが、自分では無くパレッタ師匠にとって必要になるかもしれないんです!別にコレクションしてるわけじゃないなら、貰っても大丈夫ですよね!?」
「大丈夫・・・なわけあるか!お前も緋色真珠について知ってるなら、アレが使い方次第でとんでもない代物になるかくらい分かるだろ!それに、目的も話せない奴に余計に渡せるか!」
「そこをなんとか・・・!犯罪以外ならなんでもしますので、師匠の為にもどうか一つ!お願い致します!!」
「駄目だ!と言うかいい加減、こんな場所で土下座すんのやめろ!悪目立ちするだろうが!」
「いえ、『はいorYES』と言うまで自分はやめませんよ!昔から男が無理を通すなら、土下座一択ですからね!それにこう見えても俺、師匠の為ならどんな事だってやれる度胸とか矜持くらいは持ってたりするんです・・・!!」
行き交う人々から奇特・困惑・侮蔑の目で見られ、瀬上から発せられる怒りにも近い不信のオーラをひしひしと感じながらも、視線とオーラに耐えて恥を忍び、アスファルトに頭を付ける程の土下座を止めないコンドウ。
もはや、日本国民に脈々と受け継がれる伝統芸能とも言える、究極の意思表明・・・「ゴリ押し」作法に、流石の瀬上の心も僅かに揺れ始める。
「ねぇ、コンドウ君。パレッタはもう2019年の私に会いに行ったの?」
「はい!そしてつい先日バック・トゥ・ザ・フューチャーして来ました!」
「そっか・・・あのね、私はパレッタがタイムマシンを造ったのって単に昔の日本や四神関係のイベントが見たかった、それだけじゃなくて何か別の目的があると思ってるの。」
「別の目的?」
「なんと言うか、私もはっきりと断言は出来ないけど・・・あの震災の被災者になって、「想造」が出来なくなる程のPTSDに掛かって、それを乗り越えてタイムマシンなんてモノを造った・・・でも、私の知るパレッタはそこで終わるような人じゃない、もっと凄いモノを造ろうと想像力を解き放つ・・・そう言う女よ。だから何か理由があって秘密にはしてるけど、きっと今パレッタは歴史に残るかもしれないくらいの凄いモノを造ろうとしてる、そんなパレッタの力になりたいからコンドウ君は独自に動いた・・・そうよね?」
「ご、ご想像にお任せしますっ!!」
「だから、コンドウ君に・・・パレッタに、緋色真珠を譲ってあげて。私からもお願い・・・浩介。」
菜奈美は瀬上とコンドウの間に立ち、会釈よりも深く頭を下げる。
2028年の「機関」による世界同時襲撃より12年、共に「G」に纏わる大事件に幾度も巻き込まれながら旅を続け、それ以前から何度も縁深い対面を果たして来た瀬上にとっても、他人の為に頭を下げる菜奈美の姿や、自分の事を「あんた」や「電磁バカ」ではなく本名で呼ぶのはあまり覚えの無いものであり、彼女がそれだけ本気で頼んでいるのが、瀬上には分かった。
「・・・はぁ。分かった。知ってる奴に渡すだけ、まだマシだしな?」
「えっ・・・じゃあ、緋色真珠を譲って貰えるんですか!?」
「ただ、とっておきの隠し場所に隠したから取りに行くのにやや時間が掛かるのと、一応場所バレ防止の為にラピス経由での発送になるから更に時間が掛かる、それでもいいならな?」
「いえいえ、海外発送より全然早いでしょうから何にも問題ありませんよ!
ありがとうございます!!ありがとうございます!!ありがとうございます・・・!!」
一世一代の懇願が通り、歓喜と感謝の意を示す為にコンドウはアスファルトに額を打ち付けながら頭(こうべ)を上下させる。
菜奈美もまた顔を上げ、多幸な感情に満ちた笑みを瀬上に見せた。
「おい、分かったんなら今すぐその土下座をやめろぉ!血出るだろ、血!」
「うんうん、さっすがみんなのヒーロー扱いの「G」ハンター様ね、器が違うわ♪」
「お前も大っぴらにその名前出すな!誰かに聞かれたらどうすんだ!」
「でも盗んだ物をキープして、しかも誰かにあげるのは「G」ハンター史上初でしょ?」
「ほんとにな?超危険物をキープしとけだの、やっぱり他の奴に渡せだの、俺は金庫の管理人かっての。俺はどちらかって言うと金庫破りをする側だぞ・・・だからコンドウ、パレッタにいつか緋色真珠の使い道を教えろ、って伝えとけよ?」
「はいっ!!」
「・・・ありがと。」
「・・・ったく。」