‐Geek‐ 好きこそモノの上手なれ











『・・・キミ、「転移」の「G」使いでしょ?今すぐあたしをその開発部とやらに転移させて!』
「おいおい、相変わらず能天気だな?今はそういう場じゃ無いだろ?」
『何よ、ケチババア!』
「あ、それは禁句!」
「・・・あん?お前の方が私よりもずっと年上だろうがぁ!」
『でも、問題は見た目でしょ?み・た・め!』
「そんな訳の分からない格好した奴にだけは言われたくないわぁ!沼津でもどこへでも行きやがれこの小娘がぁ!!」
『いえ~い!』
「あっ・・・」
「トリオじゃなくて、カルテットだな?」
「はぁー。」










『いやった~!』
「「!?」」
「え、なんでパレ・・・」
『あっ、やっぱカズ君いた!トロピカルヤッホー☆』
「だ・・・誰?」
「・・・思い出したぁ!!「想造」のパレッタだ!!」




と、格納庫に唐突に現れた1人の女性。
彼女こそニューヨークの会談会場より「転移」されて来た、関口が昨晩コンドウから散々武勇伝を聞かされながら、今しがたスマホに届いた元紀からのメッセージを見るまで、すっかり名前を失念していたコンドウの師匠・・・「想造」のパレッタ、その人であった。




『あれ?キミなんで、あたしの本名知ってるの?カズ君が教えたの?』
「いや、コンドウの話にはなってましたけどまだパレッタさんの話にはなって無いって言うか、オレも関口さんがパレッタさんを知ってたのがびっくりって言うか・・・あ、ちなみにパレッタさんとも6年前のエリクシア事件で縁が出来てるんで。」
「あぁすまんすまん、俺の名は関口亮。向こうでチラっと聞いてると思うけど、J.G.R.C.開発部部長で、コンドウ君とは20年来のオン友をやってる。」
『へぇ~!コンちゃんのネット友達って事ね!』
「そっち繋がりなら、知ってて当然か?それで、なんでパレッタさんはこっちに来たんですか?多分、汐見さんの「転移」で来てますよね?」
『汐見・・・あ~、「転移」のおばさんの北条翔子?あたしがここに行きたいって言ったらプリプリしだしたから、ケチババア!って言ったらここに飛ばしてくれたよ?』
「・・・ゑ?
汐見さんに、ケチババア?」
「爾落人って、命知らずしかいないのか?俺の知る限り、汐見さんって「念撃」の二階堂さんか「因果」の鳳君に並ぶ、最強クラスの能力者・・・いや、女と言う生き物としての最強候補筆頭だぞ?」
「僕なんて、まだまだ井の中の蛙だったのか・・・あっ、僕は桐生江司。関口君の友達で、「G」兵器理論をさせて貰っています。ちなみに父は桐生篤之って言う「G」研究の第一人者なんですけど・・・知ってます?」
『当然よ!あたしも「G」の探求家として、ユッキー君の本を読んで色んな所に行ったし、え~っと・・・そう!70年くらい前にユッキー君にまだ「G」って呼ばれる前から、「G」について色々教えたし!思えばあの時のユッキー君って、初めて会った時のコンちゃんみたいだったなぁ~。』
「へえっ!?じ、じゃあお父さんの略歴に出て来る、叔父さんと共に「G」研究を志す切欠の一つになった、恩人の『ハロルド』さんって・・・」
『ジャンジャジャ~ン!それ、あたしでした☆』
「これぞまさに「因果」、ってヤツか?」


ーー「因果」・・・はー、朱夏ちゃんにまた会いたくなって来たな~。
でも朱夏ちゃん、オレとだけなんか微妙に距離置いてる気がするんだよなー。恩人で憧れのヒーローな凌や女能力者同士の綾さんならともかく、あの堅物を絵に描いたような八重樫さんとも親しくしてる感あるしさぁ・・・


『・・・それより、「G」兵器って事は「G」を戦いの手段にしようとしてる、って事?それなら、あたしも場合によっちゃ怒っちゃうかもよ?』




雑多な事を考え始めた一樹を余所に、パレッタは関口と桐生に対して、つい先程の嬉々とした様子とは真逆の、真剣な声色で問いを投げ掛ける。
関口と桐生もまた、この不意打ち気味な展開とパレッタから発せられる、自分達との時間と経験の圧倒的な差から来る説明の出来ないオーラに、威圧感すら感じていた。




「ち、違います!僕はお父さんが傾倒していた、崇め奉る程の敬意すら評していた「G」と言う存在に対して、人々が平和的に使える手段をただプリミティブに模索しているだけです!核兵器を越える兵器を作りたいなんて、僕は思わない・・・そんなの、まっぴらごめんですよ!」
「俺らは、オッペンハイマーになる気はさらさら無いって事さ。例えば、俺はガンヘッドは「G」を元に生まれた素晴らしいメカニックだと思うけど、22年前のギャオス事件で出て来たエアロ・ボットは素晴らしいメカニックだとは思わない。俺達はエアロ・ボットを作る気は無い。」


ーー・・・まぁ今の所は、だけど。




それに対し、関口と桐生は自身を形成していると言っても過言では無い「G」への、兵器と言う存在への率直な思いをーーもう一つの野望を秘める関口を除きーー、パレッタにぶつける。
「G」兵器への純粋な興味以外に、パレッタがここに来たもう一つの目的であった、「G」を兵器に転用する者の見定め。




ーー・・・そっか。
エアロ・ボットちゃんを作る気は、無いんだね。




その答えを知り、心の中の引っ掛かりが取れたパレッタは確かな笑みを浮かべ・・・




『・・・うんうん!キミ達、合格!』
「合格?」
『キミ達なら、間違った事に「G」を使わない、最高の「G」クリエイターになれるかも、って事!』
「・・・つまり、俺達は密かに試されていてそれに合格した、って事か。」
「よ、良かったぁ・・・」
『約1000年生きてるあたしのお墨付きなんだから、大船に乗った気でいなさいな☆』
「ありがとうございます!じゃあ、僕と関口君が開発した「G」兵器の事とか、お父さんの事とか、そもそも「G」の事とか色々話しませんか!?」
『いいねぇ~!あたしもキミ達とかここにあるメカとかに会いたくて、ここに来たんだし♪』
「・・・あっ、シリアスモードは終わりました?オレも混ざっていいっすかね?」
『いいよいいよ~!カズ君も混ざってよ☆』
「だんまりしてると思ったら・・・宮代君も中々に強かだね?」
「まぁ強かな所が無いと、世渡り上手に生きて行けないですよ?桐生さん?」


ーー・・・あの質問した時の目、伊達に爾落人を・・・クリエイターを1000年近くやってないって事か。
きっと成功も失敗も、数え切れないくらいに経験してるんだろう・・・
あの人・・・パレッタさんは、素直に尊敬出来る人間かもしれない。君の言っていた事が、今なら分かる気がするよ。コンドウ君。








『つまり、これがMOGERAの試作品になるわけね!すご~い!』
「だろ?プロトモゲラって呼んでるんだ!今はMOGERA操縦者になる予定の凱吾の訓練用として使ってデータの収集を行ってる。」
「おいおい、関口君ばかりがすごい訳じゃないぞ!僕がいなけりゃ、このロボを作る予算も稼げなかったんだからよぉ!」
「桐生さんには感謝してますって!人工知能にアンドロイド、ガンヘッドからこの道に入った俺が不得意な分野を見事カバーしてくれる!最高の友だよ!」
「だが、アレであんなぼろ儲けをするなんて、そういう発想は僕にはできんよ!」
『人工知能ならあたしも負けないわよ!昔だけど、優秀な人工知能を作ったんだから!』
「おぉ、流石は爾落人!」
『でも量産できないけどね。ま、あたしは芸術だから!同じものを二度も作るなんてことはしないんだけどね~♪』
「それはわかる!やはり、クリエイターたるもの、最終的に求めるのは最高傑作!」
「量産ができるものを作るというのも、開発者としては必要なことだが、浪漫は至高の一品を生み出すことに帰結する!」
「熱いなぁその魂!オレはハッキングして見る専門だけど、その気持ちはなんか分かりますよ。」




「サンジューロー」こと後藤銀河の言う「カルテット」による、何人たりとも介入出来ない「G」とメカについてのマニアックなトークによる、さながら隔離空間が完成したのだった。
3/15ページ
スキ