‐Grasper‐ 捕らえしモノ達











数日後の朝、愛媛県・岩屋寺。
寺へと繋がる266の石段前の駐車場に、初之兄妹の姿があった。




「あ~、やっぱり気に入らねぇ・・・瀬上浩介って言うか、「G」ハンターが気に入らねぇ!」
「お兄ちゃんったら、今日もそれ?」
『ダイモン事件前の穂野香様以上に、「G」ハンターに対して執着しているぞ、隼薙。』
「あったり前だ!だってよ・・・」








「は、博物館が!?」
「うわあああっ!!麒麟送子の剣がぁ!!」
「バビロニアの魔人像も無いぞい!」
「な・・・何があったんだ・・・!」
「そこのお2方、何があったか見ていませんか!?」




数日前、事件報道後の不特定多数のネットユーザー達による、俗に言う「特定班」の迅速な調査と、現場となった「待紋博物館」に由来し、いつしか「ダイモン事件」と呼ばれる事となった、ダイモンとの戦いの後。
瀬上退散後、程無くして博物館にやって来た町民及び観光客達から事態の説明を求められた隼薙達は、アネモスの存在や「G」ハンター=瀬上である事を隠しながらの説明を強いられ、隼薙は咄嗟にこう答えた。




「・・・そう!これは全部妖怪の仕業だ!」
「「「「「ええっ!?」」」」」
「妖怪のせいなのね?そうなのね?」
「でも、「G」ハンターは?」
「盗むって言ってた剣も壊れてるし・・・」
「・・・あっ!もしかして、「G」ハンターがこの剣を使って妖怪を退治してくれたんじゃない?」
「そうだ!そうに決まってる!」
「そんで、あの魔人像が妖怪の正体だったのよ!」
「だよな!それなら全部説明が付く!妖怪の正体見たり、枯れ尾花!」
「ワシは前々から、あの魔人像を見ていると嫌な気分になっとったんじゃあ・・・じゃが、妖怪が潜んどったんなら当然じゃあ!」
「い、いや、間違っては無いけど俺達も・・・」
「妖怪退治までする「G」ハンター、カッコいいな!見直したぜ!」
「あぁ、「G」ハンター様ぁ・・・♡」
「7年前に最初に現れた時から、あたしの目に狂いは無かったのね~!」
「リアル怪盗キッドだよ、「G」ハンター!」
「「「「G」ハンター、ばんざーい!!」」」
「あ、あのさぁ!俺も『風使い』としてその魔人と・・・」
「『風使い』?なにそれ?」
「・・・えっ?」








「・・・なんでよりによって全部あいつの、「G」ハンターのお陰って事になったんだぁ!俺は四国の有名人の『風使い』で、ダイモンにトドメ刺したのは俺で、倒せたのは穂野香のお陰なんだよぉ!ざけんじゃねぇぞ!」
『諦めろ、隼薙。それだけ「G」ハンターの知名度と支持率が高く、現代に於いて些細と判断された出来事が風化するのも早い、と言う事だ。』
「そもそも、見返りを求めたらそれは正義とは言わないの!瀬上さんだって、お金にならなくて危険な事ばっかりで世間からとやかく言われながら「G」ハンターを、世の為人の為に黙ってやってるんだから!それに、人知れず戦うヒーローってやっぱりカッコいいし♪」
「おいおい、嘘だと言ってくれよ穂野香ぁ・・・」
『穂野香様の言う通りだ。その悔しさを活力とし、瀬上殿からの宿題を済ませる事だ。』
「へいへい、早く『隼舞些』と『草薙』をサクッと使えるように頑張りますよ、っと・・・あっ、そういやオーストラリアのどっかの砂漠に『風魔神デガンジャ』って言う、風と電撃を操る伝説の巨大「G」がいるんだってよ。そいつに勝てたら、絶対瀬上にも勝てるな・・・!まずはそのデガンジャだ!」
「頑張ろうね、お兄ちゃん!あっ、来た来た!」




と、話し合っている内に駐車場に一台のトラックが来た。
瑠璃色のコンテナ部分が目を惹く「RuRi」のトラック・・・今の初之兄妹の仕事先だ。




『おはよう、隼薙君!穂野香ちゃん!』
「ラピス、おはよう!」
『おはよう。』
「おはようさん・・・」
『おっと、もう1人いるよっ!』
「あっ、ラズリーじゃない!」
『久しぶりだな、ラズリー殿。』
「うわ、お前いるって事は後部座席がやかましくなるのかよ・・・」
『なっ!なにさその言い方!せっかく個展の準備の息抜きにこのわたしが来てあげたのに、「はっけい」だよ!』
『「失敬」ね、ラズリー。貴女、いつ拳法を体得してたの?あ、ちなみに今日隼薙君も後部座席だから。』
「はあっ?よりによってラズリーがいる時にかよ!つうか、もしもの為の警備はいいのか?」
『今日は超久々にお得意様から依頼が来て、その人も来てるのよ。何でも・・・』
「・・・ん?『隼薙』?『穂野香』?」




すると、いつもなら隼薙が座る「特等席」と言える助手席から、1人の男が降りて来た。
何処か、疑いと困惑を感じる一言を呟きながら。




『えっとね、何か危険な石を安全な所に運びたいから、急いで運んで欲しいってさ!ちなみにね、この人って・・・』






「・・・あっ!」
「なあああああっ!?」
『なんと・・・私のソースの無い予感も、当たるものなのだな・・・』




隼薙達もまたその依頼者の姿を見て、目に見えて分かりやすく驚愕する。
そう、何故なら・・・








「・・・やっぱお前かよ。」
「せ、瀬上いぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」




隼薙にとって因縁の男・瀬上との再会が、互いに思いもしない瞬間に実現したからであった・・・






「‐Grasper‐」・終
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