龍神《喰ウ者》

5


「それで、どこかはわかるのか?」

 周囲は薄暗い原生林に覆われている。かなりの歳月の間、人が立ち入っていないのが窺える。
 瀬上が二人に問いかけながら、後をついていく。無論、目的地は空間の爾落人四ノ宮世莉の眠る場所だ。

「とりあえず、ガラテアの存在は近くにあるね」

 銀河が真理の佛になった時に完全に独立した存在となっているが、元々変化の爾落人ガラテア・ステラは真理の佛が受肉した神々の王の一部であり、眷属とも云える存在だった。
 銀河にはガラテアを個別に感知することができるのであろう。

「ちなみに、ここは日本のどの辺りなんだ? また沼津か?」
「いや、神奈川県厚木市に近いな? 向こうに見える渓谷が昔の丹沢あたりになる。地殻変動とか気候変動で相模湾も東京湾も形が変わっているから面影を探す方が難しいけどな?」

 銀河の説明を聞きながら、降下途中に見た景色を思い出す瀬上。大きな湖の様なところがあったが、あれは湾の海峡が狭まったかつての東京湾らしい。そして、阿蘇山の様なカルデラ湖のある山が西に見えた。あれは山系の崩れた旧富士山だったのだろう。

「ここまで様変わりすると日本に帰った気もしないな」
「こればかりは仕方ないな? 地球も生きているんだ。それでも今は氷河期が終わって温暖期に向かっている頃だから、まだ人類にとっては過ごしやすい気候だよ」

 そういえば地球の過疎化のきっかけは「G」の生態系、異界化と共に氷河期の本格的な突入によって人類が暮らしにくい星になったことであった。
 周囲の植物は殆ど瀬上の知らない種類の植物で、時折動いているものもある。「G」の植物らしい。この様子だと、生態系の動物も瀬上の知っているものは大半が絶滅し、「G」によって支配されていると予想がつく。

「襲われたりはしないよな?」
「既に周辺の「G」は僕達を警戒して離れているよ。そういう心配はないだろうね」

 流石は40世紀の地球と全面戦争をした万物の佛ということらしい。恐らく、今の人類でも命がけとなるこの異界の原生林を、近所の散歩程度の気軽さで歩いている。
 和夜が先導して進むと、道を塞ぐ木々は風化し、消滅。真っ直ぐ歩くことのできる道になる。
 そして、坂を下ると明らかな人工物が現れた。レンガで組まれた花壇と風車だ。そして、その先は開けた場所になっており、子ども達が遊ぶ声が聞こえる。
 近づくと、谷間にある平地に小さな集落が作られていた。そこを幼い子らが広場をかけて遊んでいる。
 民家は二十軒程、身を寄せ合うように作られており、主にレンガと木材を組み合わせた西洋建築になっている。
 花畑と広場、そして小振りの密集した西洋建築の民家。まるでファンタジーの村にやってきたかのような錯覚を覚える。
 そして、銀河達の姿に気づいた村の大人達が子ども達を近くに集める。当然の反応だが、彼らは突然の来訪者である銀河達を警戒しているらしい。
 瀬上は彼らを観察する。様々な人種が混ざっており、どの民族が多いという訳でもない。そして、服装は麻や皮などを中心に作られた、着脱の楽そうな被り式のシャツやワンピースなどに近い原始的な印象の構造だが、作りはしっかりとしており、刺繍などの模様もある。文化的な服装といえた。

「はじめまして。真理の佛、後藤銀河と申します。警戒はしなくて大丈夫です。安心してください」

 銀河は一歩前に出て、慣れた様子で挨拶をする。流石といった様子で、彼の言葉を受けて村人達の表情が和らいだ。
 そして、村長らしき黒人系の老人が前に出てきた。

「貴方様があの真理の佛様でいらっしゃいましたか。ガラテア様からお話は何度もうかがっております」

 日本語で老人は挨拶をし、頭を下げた。どうやらガラテアが日本の作法を伝えているらしい。

「この村は一体?」

 瀬上が問いかけると、老人は答えた。

「ここは世莉様をガラテア様とお守りする為にこの星に残った先祖様が作った村でございます。代々の口伝とガラテア様のお話によりますと、私達は北にかつてあったコロニーと呼ばれるところの民の子孫といわれております」

 それを聞いて、瀬上はここが凱吾達の子孫の村なのだと理解した。

「銀河殿!」

 村人達の後ろから女性の声がし、三人が視線を向けた。
 深緑色の長髪を束ねた薄褐色の肌の美女が目を丸くして立っていた。

「久しぶりだね。ガラテア」

 銀河は笑顔でガラテアに向かって声をかけた。








 三人はガラテアと村長に連れられ、村の一番奥にある神殿に案内された。神殿は縦穴式の洞窟構造になっているようだが、人工的に作られた縦穴に大理石を組んで壁や天井を固めている。近くに寄るとただ箱状に組まれたのではなく、模様を彫り、丁寧に作られた建築物なのだとわかる。全体の大きさもそれなりに広く、入口だけでも10メートルくらいの高さになっている。
 真っ白の大理石で作られている為、初見の印象では気づかなかったが、よくよくみると入口の左右に四体の像がないだけで、基本的な構造はエジプトのアブ・シンベル大神殿と同じであった。
 中に入ると、ラムセス二世の列柱室の代わりに見覚えのある爾落人達の像が並んでいる。銀河と瀬上らしき人物の像も並んでいた。どうやらガラテアに縁の深い者達をモチーフにしているらしい。

「この神殿はいわばレコードだ。私と世莉殿の思い出を永遠に残して置く為のな」

 ガラテアの声が響く。
 そして、アブ・シンベル大神殿で至聖所になる最奥の部屋に入る。この部屋は最新の技術の機械が置かれており、手前までのファンタジーや古代文明のような印象に対して、唐突にSFの世界となっていた。
 ガラテアは中央にある円盤状の操作盤のピカピカと点滅する箇所を触れる。その上に球体状の立体映像が表示された。

「ふむ。かなり防衛設備がやられたのだな。……銀河殿、土星宙域防衛システムをどうしたのですか?」

 どうやら太陽系内の防衛設備はすべてこの場所で確認できるらしい。火星軌道までは光より早く移動していた為、ログの到達に時差が生じたらしい。
 ガラテアが銀河をジロリと睨む。
 銀河はすぐに和夜を指差す。

「和夜が奪取しましたー」

 先生に言いつける子どものような口調でガラテアに言いつける銀河。和夜は舌打ちをする。

「まぁ、良いだろう。……ここまで彼らが戦力を集中させてきたことはなかった。銀河殿達が来たということは世莉殿の力が必要ということだな?」
「そうだ。クーガーの話では菜奈美が奴らに捕まっているらしい。助けるには四ノ宮の空間の力が不可欠だ」
「ふむ。……銀河殿、時間がないことは想像に難くないが、何が起きたのか教えてもらえますか?」
「勿論だよ。ただ、ガラテアも何でここに世莉さんといて、彼女は眠っているかも教えて欲しい」
「わかった。既に世莉殿は覚醒の準備に入った。丁度食事支度を村の者達がしていたところだったので、それを食しながらでも構わないか?」
「勿論だよ」

 銀河が頷くと、ガラテアは長老に目配せさせる。長老は頷くと、鍋と皿の乗ったカートを押してきた。
 鍋の中は豆類が煮詰められている。

「……俺、これを知ってるぞ」

 瀬上がそれを見つめて言う。何回か覚えもある。和夜がそれを覗き込む。
 ガラテアは銀河に笑顔を向けた。

「丁度、今日は昔、銀河殿から教わったレシピの日だった」
「ん? ああ、懐かしいなぁ」

 和夜が銀河とガラテアのやりとりを見て鍋に近づき、銀河に問いかけた。

「なんだ?」
「フェジョアーダ」
「………何それ?」








 食事をしながら、一同は互いの情報を簡潔に説明した。銀河と和夜がギドラや「旅団」について説明し、ガラテアは世莉の眠りについた理由を説明した。
 世莉は瀬上が行方不明になってから、菜奈美に頼まれて共に瀬上の捜索をしていた。まだクーガーも星でない時期だが、すでに彼女達とは別れた後だったらしく、しばらく瀬上というよりもクーガーを探す旅となった。その頃、世莉に少しずつ異変が見られていた。ガラテア曰く、よく塞ぎ込むことがあったらしい。ガラテアには分からなかったが、菜奈美はすぐにその理由を察した。
 瀬上を捜索する菜奈美の姿を見て、世莉も彼女の想い人のことを考えることが増えていた。しかし、数千年と覚えていられていた最愛の人の顔や声、言葉が次第に思い出せなくなってきたことに気づいたのだ。
 菜奈美は改めて時間を巻き戻して当時の彼に会ったり、彼を連れてきてはどうかと提案してみた。
 しかし、それは頑なに彼女は断った。ただ、忘れてしまう記憶の時間だけは巻き戻してもらうことにした。だが、菜奈美は告げた。巻き戻して記憶を復元することはできるが、永遠にそれをとどめる術はないと。世莉もそれを承知していた。それでもこれ以上のことは彼との約束を破ることになるからできないと、はっきりと断った。
 しかしながら、世莉の落ち込みは菜奈美にとっても、ガラテアにとっても辛いものであった。その為、偶々通りかかったこともあり、まだ知古の爾落人がいるかもしれないと過疎化が進む地球に降りた時に菜奈美とガラテアは世莉に眠りにつくことを提案した。所謂コールドスリープだが、ガラテアの変化の力と設置時に菜奈美の時間停止をかければ少なくとも忘却の速度を数千年、数万年と送られせることができる。そして、ガラテアがいれば、通常かなりの維持、管理にかかるといわれる負担と覚醒にも時間と労力を要してしまうコールドスリープを簡易に行うことができる。
 更に、タイミングよく所縁の深い極東コロニーの廃棄が決定し、宇宙へ上がりたくないという凱吾達の子孫に遭遇した為、彼らを守るという名目ができ、それに後押しされる形で世莉は彼女達の提案を呑み、眠りについたのだった。

「そうだったのか」

 瀬上は自身が電気ネズミの代わりにフィラメント役をやらされていた間に、仲間達がそれぞれ永劫といえる時間の中でどのように存在していくか、悩み、決断し、それぞれの道を選んでいたことを改めて思い知らされた。
 六万年はあまりにも長い時間だった。自分はその彼らの歩んだ道の遥か手前に佇んでいた。
 ぽん、と銀河が瀬上の肩を叩いた。気落ちしていた瀬上は顔を上げ、銀河に頷くと、確認しておきたかったことをガラテアに聞いた。

「それで、菜奈美は?」
「ナナミ殿は200年程経った頃にここを訪ねてきた。クーガー殿に会えたらしく、コウ殿の居場所がわかったと言っていた。ただ、場所が悪いらしく、無理をするよりも時間を早送りしてチャンスを伺った方がいいから、かなりの期間会いに来れなくなると言っていた。そして、ナナミ殿はそれっきりになってしまった」

 瀬上の囚われた星を特定したのだ。時差が生じている上に迂闊に近づくことのできないブラックホール近くの星だ。菜奈美といえ、すぐには行けないから、星の近くに待機して時間を早めていたのだ。
 そして、移動をしていた訳でもないから、「旅団」も見つけやすかったのだ。ギドラの現れるタイミングに合わせて百年前に菜奈美は「旅団」に囚われ、今もこの時間から切り取られた場所に捕まっている。
 全部、自分のミスのせいだった。思わず、瀬上は壁を殴っていた。

「コウ殿、責めるべきは己ではない。ここ千年程の間で地球は彼らに一方的な宣戦布告を受けた。要求は世莉殿の引き渡し。当然応じられるものでなく、次第に相手の送り込まれる戦力は大きくなってきた。私もかつての知人や太陽系に郷里としての思いが少なからずある者達の協力で地球圏の要塞化を進めた。そして、100年程前からは約10年周期で大規模な船団が襲撃を仕掛けてきた。その頃は既に全宇宙が敵といえる状況になっていた。協力してくれた者達にも危険が迫ってきていたから、今は事実上私だけがこの地球圏の正式な住人となっている。この村の者達は宇宙側に認知されておらず、宇宙法では先住民という扱いになっている」

 星間戦争は星そのものを滅ぼす恐れがあるから、統一された宇宙法で明確にルールが定められている。互いに相手の星への攻撃は生態系への影響を最小限にとどめ、星の破壊などを禁止し、攻撃対象は宇宙法の定めた星の軍に向けなくてはならず、民間人というグレーなところは触れていないが先住民は自然環境と同じ扱いとなることが決められている。
 つまり、大義名分を守ると全宇宙とガラテア一人だけが戦争をしており、他の者を巻き込んではならないとなる。もっとも、ガラテア自身は宇宙法を守る気がなく、コロニーレーザー砲を設置するなど、完全にアウトなことをしている。しかし、「教団」側は宇宙の有力国家を味方にして、実質的に宇宙全体を使って攻撃しているものの、そのすべてが「教団」の支配下でなければ、国家の民も賛成している訳ではないはずだ。ルール違反に対してルールを破れば世論が許さない。だから、グレーなところにあるスターデストロイヤーなどの戦力を投入しているのだ。
 ただ、ギドラが出現した今、相手にとっては運命の日を迎えた訳だ。今更、ルールを守るとは思えない。

「近いな。かなりの質量のある物体が月軌道にワープしようとしている。……「旅団」の母星と考えるのが妥当だな」

 和夜が天井を見上げて言った。
 それを聞いたガラテアは細笑んだ。

「ふふっ。それは好都合だ。丁度世莉殿も準備ができたらしい」

 ガラテアが立ち上がり、壁に触れると更に奥の部屋があった。
 そして部屋の中からタオルで濡れた髪を拭きながら見慣れた洋服を着た四ノ宮世莉が出てきた。

「話はある程度聞いた。もう戦えるぞ」
「お前、起きてたのか?」

 瀬上が不用意な発言をすると世莉はキリッと睨む。

「瀬上、相変わらずデリカシーのないヤツだな。流石の私だって、体を動かせるようになるにはそこそこ時間もかかる。それに……し、下着や服だって着る時間が必要だ」
「コウ殿、コールドスリープはそれなりに負担のかかるものなのだ」
「瀬上さん、今のはちょっとないぜ?」
「瀬上、最低だな!」
「てめぇら、わざと言ってるだろ!」

 口々に言われた瀬上が言い返すと、一同は示し合わせたようにニカっと笑った。





 


 すぐに状況を把握する為、一同は一度ランドモゲラーの中に転移した。

「広い」
「そういう感想になるよな」

 物珍しい様子で真っ白くだだっ広い空間を見回す世莉に瀬上は頷く。そして、やっと同じ感覚を持ってくれる相手に会えたと内心で喜ぶ。

「月の約5倍。ほぼ水星サイズのかなり小型な惑星だ」

 和夜が「旅団」の母星を壁に映し出して言った。
 つまり、スターデストロイヤーより大きいが、マザーIIによりも小さいということだ。
 そして、解析された情報が視覚的情報として表示される。核は人工的な壁に包まれており、その周囲の地殻、地表面にあたる部分はすべて人工的な構造物で覆われている。つまり、巨大な溶鉱炉によって母星は星としての核を維持しており、すべて人工物に置き換えられているらしい。改造惑星とは知っていたが、予想以上のサイボーグ惑星である。

「星のかなり深い場所にギドラと同じ力を感じる。他にも幾つかそれを感じるが、他の比ではないことを考えると、そこにいるのが教祖だろう」
「シンプルに考えれば、その近くに菜奈美もいるだろうな」
「それなら全員で直接相手の懐に転移して一気に勝負をつけた方がいいだろう」
「ん。寝起きの運動には丁度いい」
「そうだな。四ノ宮さん、頼んだぜ?」

 各々が口にし、そして視線を交わす。誰が合図をした訳でもなく、一同は頷く。
 しかし、直後頷いた和夜と銀河の体がノイズが走った映像の様に実体が乱れる。そして、二人は顔を歪めて、その場に身を屈めた。
 咄嗟にガラテアが銀河に駆け寄る。

「銀河殿!」
「ガラテア、すまない。……どうやら俺達はここまでみたいだな?」
「どういうことだ? まだタイムリミットまで時間はあるだろ?」
「タイムリミットは僕達の鎧がギドラを食い止められる時間だ。しかし、思ったよりも早かった。今のこの体は言わば分身だ。本体の方に余力がなくなってきたら維持するのは難しい」
「そういうこと。すまないけど、先に俺達はギドラの方に戻っている。必ずタイムリミットまでは耐えてみせるから、お前達もそれまでに勝負をつけてくれ!」
「くっ、心理を使われなくてもわかってるよ!」

 瀬上が銀河に答える。
 その一方で、世莉は唐突に耳に手を当てて独り言を言い出した。

「ん? ……わかった」

 彼らがそんな世莉の様子に驚く中、彼女は徐ろにその場で跪くと、床に両手を当てて目を閉じた。
 突然土下座をした世莉に更に驚く一同であったが、その床一面にクルクルと白いワンピースのスカートを回し、髪の毛をふわっと浮かすとパチンとウインクをするムツミの姿が表示され、更に驚く。

「なっ! どう言うことだ?」
『世莉さんがこの座標に来るタイミングは視えていましたからね。時間と座標が予めわかっていて、それを事前に備えることができていれば、トリッキーな手段ではありますが、音声と情報を飛ばしておくくらいの技術は持ち合わせいますよ。銀河さん達がいる間に間に合って良かったです』

 ワイプのようにムツミの映る画面が小さくなり、クーガーの映る画面が右下から現れた。

『ちょっと待ってて………よし!』

 ムツミが何かしたらしい。映像が床から移動し、空中に浮かぶと更に画面からムツミが出てきて、立体映像に変わった。クーガーも同様に立体映像になる。

『これで会話しやすいでしょ?』
「……ここのシステムを勝手に書き換えたな」
『まぁまぁ気にしない気にしない』

 実体が薄まって背景が透けてしまっている和夜に睨みつけられるが、それを手をひらひらさせてかわすムツミは、更にクーガーの視解した情報を映像化する。

『世莉の転移のお陰で今ならタイムラグなしで全ての情報のやり取りができるから、一気に説明しちゃうね! ここに強力な力を持つ爾落キール星人がいるわ。能力自体はかなり制限のあるものみたいだけど、厄介なことにこれ以上の視解は教祖の持つ神器によって阻害されてしまうわ。この神器っていうのが、ギドラの力を写した喰ウ力のある詰まるところ、「G」ね! そして、この力で阻害されて全く視解ができないのが、教祖のいる部屋の奥の空間。もう喰ウ力の結界ね。綺麗に立方体の空間が全く視えなくなっているから、むしろ目立つわね。今色々な角度で、そしてあらゆる宇宙を視解した情報を統合、分析して調べているから、分かり次第連絡するわ! だから少し世莉ちゃんに負担をかけちゃうけど、リアルタイム通信の環境だけは常に維持しておいてね! 5G通信よ! バリ五じゃないと困るから!』

 一方的に説明を終えるとムツミは本当に解析作業に着手したらしく、立体映像が消えた。
 そして、解説中全く口を挟む隙を与えられなかったクーガーが無言で残された。

『………』
「な、なぁ。クーガー?」
『別に、私は気にしてませんよ』
「あ、ああ」

 瀬上はそっとクーガーから離れた。
 解説役をまさかのムツミに奪われたクーガーはその場で不気味な程に無口でその場に佇んでいた。

「じゃ、じゃあ。俺達は相手の本陣に突入するか」
「頼んだぜ。……俺達ももう限界だな?」
「待ってるぞ」
「ん。任せろ」

 世莉が頷くと同時に銀河と和夜の姿は消滅した。タイムリミットまではまだ2時間あるが、それよりも猶予はなそうだ。
 ランドモゲラーとスターファルコンの制御をムツミ達に任せて、ガラテアと瀬上、世莉の三人は教祖のいる部屋へと転移した。
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